第一話 しっかり困惑!留学生!

校舎内

もう莉王は鳴きそうでした

注意、『鳴き』そうですからね、お間違いなく

「ふしゃー!かかかっ!」

あ、鳴いた

視界に入るありとあらゆるものを警戒し、威嚇する

掲示板、階段、コンセント

とりあえず、片っ端から警戒です

でも、捕まる時はあっという間

ひょい、と何かに抱え上げられ、一気に天井付近まで持ち上げられた

「みゅー!」

可愛い悲鳴を残して、莉王は拘束された

「あら、ちっちゃいのね」

耳元で囁かれ、悪寒が走る

「みゅ、みゅー!」

じたばた、と暴れるが、二重三重の…いや

六本の昆虫の脚での拘束は解けない

アラクネ、腰から下は蜘蛛の腹、つまり二つの腹を持つ種族だ

多眼であり、メインの目の上に複数の眼がまたある

「先生、留学生を放してあげてください」

また変な言葉

迎えに来てくれた人…マンドラゴラのピニャーリがたしなめる

「非常勤講師は暇なのよ、遊び相手が欲しいわ」

「生徒を糸巻きにするのが遊びですか?」

「あら、お腹は定期的に糸を出さないとパンパンになっちゃうのよ、おっぱいと同じでね」

「はいはい、既婚者子持ちの遠回しな嫌味はいいですから、その子は放してください、人間と魔物のかすがいとなってくれる大切な留学生です、恐いイメージを持たれてはいけません」

「…私、恐いかしら」

「いえ、別に私はそうは思いませんが、人間は先生と似た姿の生物を恐怖することがあると聞きます」

「そ、じゃあ、ごめんなさい、ぼうや」

するする、と床が近づき、下ろされた

「みゅー……」

相当驚いたので、意気消沈

よその家に来た猫みたいです

バイバイ、と手を振ってくれたので、莉王も返しておきましたが、恐る恐るでした

「では、行きましょう」

「みゅ」

ピニャーリの先導の下、てけてけ歩いていたのですが

「なんだいピニャーリさん、そのちんまいのが留学生かい?」

この数十分間で既に驚かなくなった変な言語が真横から聞こえた

しかし、そこは廊下の壁のはずですが

「ドガンバルさん、お疲れ様です」

ピニャーリは壁に向かって会釈した

これには困惑していると、にゅう、と壁の一部が何かの顔らしきものになった

目鼻口があるが、石材?土?の壁だからか、そのどれもがゴツゴツしている印象を受ける

「…みゅ」

睨む、というほどではないが、やはり気になるので凝視する

「やあ、小さな留学生くん、こんにちは」

おや、日本語

「みゅみゅ!」

「あれ、日本語じゃなかったかな、じゃあ、ミュミュミュミュ、ミュミュー」

あ、わかんなくなった

「いえ、日本語でいいのですよ、ドガンバルさん」

ピニャーリが教えてくれたが、莉王がちゃんと日本語で、いや、人の言語で答えなかったのが悪いですね

「そうかい?いやあ、せっかく日本語を覚えたのに、無駄になっちゃったかと思ったよ」

ゴーレム、石や土が生命を持ったとされる魔物である

本作では、建物の一部であったり、場合によっては建物丸ごと一体のゴーレムであることがある、とします

知能は高く、移動しにくい代わりに、書物で勉強することが多いのが特徴

「なにはともあれ、ようこそ、ディヴィエラ学園へ」

「みゅ!」

したっ!と右手を元気に挙げてご挨拶

用務員だというドガンバルさんに別れを告げ(大袈裟)、莉王は

どでかい扉の前へ

今までの廊下の規模も、触れはしなかったがなかなか広く、天井は5メートルくらいはあった

教室や部屋の入り口も大きかったが、ここはその倍くらいの大きさ

開けるのすら一苦労しそうな重厚な扉のお部屋です

「………………」

言葉を失った

「ここが学園長室です、無礼を怒るような方ではありませんが、お行儀よくお願いします」

「みゅ」

さて、莉王だってもう半分覚悟しています

今さら何が出てきたって文句は言いません、驚きもしません

ただ、割りとガチで怖いではなく恐い存在だったらどうしよう、と思ってもいます

ピニャーリが扉のそばにあるボタンを押すと、ガコン、と扉の蝶番が開いた

自動ドアか

ピニャーリが先行し、一言

「学園長、留学生の日村莉王様がいらっしゃいました」

何を言ってるかわからないが、エサの時間です、とか言われてないだろうか

「うん、入ってきてください」

さて、第三者の声があった

ピニャーリの手が中を示したので、入室を許可されたらしい

「みゅ、失礼します」

あ、この回初めて、まともな日本語を言いました

部屋の中は扉の大きさにマッチしており、とても広い

奥行きなんか見えないくらいだ

しかし、学園長のものらしき机は割りと近くにポツンとある

座っているのは…人、男性だ

「やあ、日村莉王君、こんにちは」

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