きもちいいなにかをかんじた。
おまたあたりからわきあがる。
きがつくと、“あたい”はそこにいた。
「んむ、これは珍しい・・・」
「あらあら・・・今回は真っ白な娘ができちゃいましたね♪」
男女の声が家屋内に響き渡る。
男性は上下とも白い和服を纏い、黒髪に温厚そうな顔をしている。
女性は赤い袴と上の白い服は所々に金の刺繍がされている。彼女の長い髪は山吹色に輝き、頭のてっぺんから狐のような獣耳がピンと立っていた。また、彼女のお尻辺りから狐の尻尾が9本も生えていて、髪の色と同じく輝いている。
「この娘は巫女候補の娘に憑けるには惜しいかも♪」
「んむ・・・候補の娘はもうすでに決まった二人だけだからな。今すぐでなくても後で探せばいいだろう」
二人の目の前にいる存在。それは狐の魔物娘が大量の魔力で生み出した精霊とも言える魔物の一種。
“狐火”
無論、生み出した本人はこの“九尾の稲荷”である。彼女は溜まりまくった魔力を使い、新たな命を創り上げたのだ。その結果、白色に輝く炎の娘が誕生。幼い体つきに母親譲りの狐耳と9つの尾を形作っている。
「・・・・・・?」
初めて見る親達の姿に不思議がる炎の少女。そんな彼女の頭を母親が右手で優しく撫でた。
「いい娘ね。私があなたの母親である“神柳 布知菜”(かみやなぎ ふちな)よ」
「こっちは父親の“神柳 蒲公”(かみやなぎ ほこう)だ。お父さんでもいいぞ」
「・・・・・・」
少女はそれを聞いて、しゃべろうと口を開ける。パクパクと口を開くが、声は全く出なかった。
(でない・・・お父ちゃん・・・)
「大丈夫、生まれたてだから魔力が安定してないだけよ。その内しゃべれるようになるわ。今この娘、お父ちゃんと思い浮かべたわよ」
「んむ? この娘の心が読めるのかい?」
「母である私には読めるわ」
(お母ちゃん・・・)
少女は母親を呼ぶ言葉を呟く。そのことに母親である稲荷がにっこりと笑う。
「んむ・・・次は名前を決めなければ・・・」
「もう決めてあるわよ。この娘の名は・・・“白花”(びゃっか)よ」
(びゃっか・・・あたいの・・・なまえ・・・)
「真っ白なあなたにピッタリな名前よ」
「そりゃあ、他の娘達に比べたらいい名前だが・・・」
父親が複雑そうな顔しながら、両手でパンパンと二回叩いた。すると、それに反応するかのように、少女の後ろにある襖がゆっくりと開く。それに気付いた少女の後ろから、白い服に水色の袴を纏った10歳ぐらいの少年が入ってきた。
「んむ、太平(たいへい)」
「はい」
「すでに二人も世話させているところ悪いが、この娘“白花”の世話も頼む」
「分かりました」
そう返事をした少年は、白火の少女に手招きする。
「おいで・・・お姉さん達にも会わせてあげるよ」
(お姉ちゃん?)
白火の少女以外に、すでに二人も同じ存在の少女達が居た。こちらの方は青白い炎の身体を持った二人。名前は“東”(とお)と“西”(さい)だ。どちらも活発的な性格で、違いとしては、東は5尾、西は8尾の尻尾を持っている。
「わたしがお姉ちゃんです♪」
「西が二番目のお姉ちゃんです♪」
「尻尾が少ない方が上になるね。稲荷からしてみればおかしいけど・・・生まれた順はそうなるから・・・」
二人をそう紹介する少年。
少年の名は“神柳 太平”(かみやなぎ たいへい)
蒲公と布知菜の養子であり、二人が営むこの神社の後継者として迎え入れられた。現在は見習いであるが、いずれは神社を継ぐ神主になると少女に告げる。
「それじゃあ、僕達がいる神社と町を教えようか」
(じんじゃ?・・・まち・・・)
少年や姉達に連れられ、少女も屋内から外に出た。
「此処が僕達のお家でもある“神柳神社”だ」
(かみやなぎ・・・じんじゃ・・・おいえ?)
「この神社は狐の神様である稲荷を奉る場所。今は母である布知菜様がその稲荷の役職をしているんだよ」
(お母ちゃんが・・・かみさま?)
初めて知ることばかりで戸惑う少女。そんな彼女を少年は手を差し伸べた。
「こっちへ」
(?)
少女には肉体が無いので直に触れないが、引っ張られるような素振りをして少年に案内される。二人は鳥居を潜った途端、その場所から見える町を眺めた。
「解らないことだらけだと思うけど、知ればもっと楽しくなるよ?」
「・・・コクッ」
「ふふ・・・これが僕達の住む町“鼓草”向こうに見える青いのが海・・・それから・・・」
「今日は町を見回りに行くよ」
「「は〜い♪」」
「・・・コクッ」
少女が生まれてから1ヶ月後。
彼女はある程度教養を学び、少年や姉の狐火達と過ごす日々を送っていた。少年の提案で町へ
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