前編

 私はある計画を練っていた。

 主神に仕える信者として、魔物を滅ぼす方法を・・・。



 私はこの町“シャクナゲ”の司教“グンバイ・ホワイト”

 反魔物領で教団に従事する信者だ。この町では主神の教えを人々へ説き、魔物への排他的な思想になるよう指導している。しかし、人々がそれを理解しても、魔物の驚異に晒されることは変わらない。

 何とかそれを変えられないか、日夜そのことについて試行錯誤する毎日を送っていた。そんなときに思い付いたのが、教団の中でも当たり前で特に重視されていること。


“勇者の存在”


 一騎当千をも可能とする強者の人間。魔物を倒し、人々に希望を与える存在。剣技や魔法に優れた者が持つ称号。その存在を知らしめたレスカティエ教国は多数の勇者を産出したと言われている。

 だが、勇者を作り上げる工程はかなり過酷だとも言われている。


 まず、魔に対する抵抗力。これが無ければ、女はすぐに魔物化し、男は発情したサルへと変貌する。

 次に、その者が持つ能力。魔物は身体能力や魔力が高いため、それらを圧倒する程の力や術が必要となる。

 後は、人々を導くカリスマ性。これは兵士達の士気を高めるために必要な能力だが、私からすればあまり必要ないだろう。


 大抵は集めた兵士達の中で厳しく選抜された者や、王族や貴族で飛び抜けて優秀な者が勇者となる。たまに田舎から出てきた者や孤児の中で選ばれた者がいるらしい。

 そんな勇者達だが、彼らは完璧とは言えない。勇者が多数居たにも関わらず、あのレスカティエ教国は落とされた。また、報告書を確認すると、あちこちで勇者が行方不明となっている。しかも女勇者の場合、魔物化したという報告がほとんどだ。

 一途の希望でもあるそれは、所詮人間を強化させたものだ。人は感情を持ち、それに従って行動する。そこを突かれたらどんな人間だろうと脆く崩れ去るだろう。



 では・・・感情が元からなければ?



 そんな軽く思い付いたことが、私のこの先の人生を大きく変えることになるとは思いもしなかった。










 20歳を超えた私は、ある人物と出会うこととなる。

 シスターであるクラナ・フラスター。長い金髪で緑色の瞳が似合うとても綺麗な女性。

 彼女は書類によると、魔への抵抗力が高いらしい。それ以外は普通の女性となんら変わりはない。そんな彼女と知り合い、私は胸に抱いていた野望が蠢いた。

 この女を利用すれば・・・。



 私は内面を悟られぬよう紳士な態度で彼女に近付いた。向こうは警戒心もなく、純粋な心で対応してくれた。たとえ彼女がミスを犯しても、それを全面的に私が請け負った。内心では腹を立てていたが、それを表面に出すわけにはいかない。

 やがて、彼女から好意を寄せるようになり、私も彼女に対して好意を寄せる“演技”をした。その甲斐あって、私は彼女と結婚した。此処まではまだ序の口。此処から先が慎重に行動しなければならないのだ。



 まずは妻との性行為で、子どもを作らなければならなかった。できれば“女の子”が目標。男の子だと魔物から狙われやすいと考えていたからだ。

 運よく数週間で妻は孕んだ。生まれてくる赤子が女児であること期待した。





 生まれた赤子は待望の女の子だった。妻も喜びに満ち溢れていたが、私はある準備をしていた。

 これからすることは恐らく妻は反対するだろう。

 そうなると私の計画に邪魔な存在となる。

 今からすることは・・・。










 流石に赤子を育てるのは苦労した。こういう時こそ、母親などに育てさせるのが得策だが、それらが“いない”以上、私が育てるしかない。何よりこのときに教育させなければ意味がないのだ。


 まずは一人で歩けるまでは普通に育てた。

 一人で立ち、自ら動き回れるようになったら・・・。

 制限を付けての生活をさせた。

 食事、トイレ、睡眠、しゃべることすら、必要あるときにだけさせ・・・。

 必要のないときはさせなかった。

 無論、我慢できなかったときは、手痛い罰を与える。

 基本、私の許可なしに行動することは許さない。

 そうすることで私の指示通りに動く存在へとなるはず・・・。




















 20年後・・・。

 40歳を超えた私は枢機卿となり、教団からこの町を治める領主を任された。

 何故、そこまでの高い地位を得たのか。

 それは・・・私の娘であり、勇者である“クリネ・ホワイト”がいるからである。



 亡き妻と同じ金色の長髪と緑色の瞳を持つ美貌。

 豊満な胸にプロポーションの良い身体。

 頭以外は動きやすい純白の装甲を纏っている。

 右手には、特別に加工された鋼鉄の斧
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