ある山の麓で多数の人影が集まっていた。
無精ひげを生やし、武士の甲冑を疎らに身に着けた男達。彼らは刀や槍などを手にして、その刃をある者に向けていた。
その者は、彼らと対立するように立っている。見た目は12歳程度の痩せた少年のようで、粗末な着物を纏っていた。しかし、少年の目は蛇のように鋭く、その場に居た男達を震え上がらせている。
「た、たかが童一人じゃねえか!」
「おめえら、何ビビッてやがる!?」
「餓鬼は餓鬼だろう! やっちまえ!!」
男達の内3人が少年へ向かって襲い掛かった。斬り掛かる彼らに対し、少年は何かを呟く。すると、突然3人の一歩手前の地面から金剛杖のような木の棒が飛び出し、男達の腹に突き当たった。軽く後方へ突き飛ばされた彼らは内臓を潰されたのかのように、腹を抱えて呻き声を上げる。
「・・・」
「なっ、なんなんだ!? てめえは!?」
「貴様らがあの村を略奪しようとするからだ」
「そ、それは・・・」
口ごもる男を見て、少年はさらに怒気の交じった言葉を続ける。
「生きるためか? それは理に適っていることだ。だが、貴様らはどれだけ命を奪い尽くした? それでどれだけ生き延びられた? 全てがお前たちで成り立っていると思ったか?」
「「「っ!?」」」
「今まで生き延びられたのなら十分満足できたはず・・・なら、此処で朽ち果てても悔いは無かろう・・・」
少年が掌を下に向けながら両手を拡げた。それに合わせて地面から複数の何かが這い出てくる。それは白く、痩せたように細い身体を持つ者。武士の防具も装着されたそれは、手にした刀や槍を構えた。
「「「ひぃぃぃ!?」」」
「う、うあああ!!」
「ば、化け物だぁぁぁ!!」
男達がそれらを見て叫ぶ。ある者は腰を抜かし、またある者は武器を左右に振り回して後ろへ下がった。彼らが目にした者。それは武士の鎧を纏う“骸骨”である。それらはまるで亡霊のような存在だった。
「に、にげ・・・」
「逃さん」
逃亡すら予想していた少年は、彼らを取り囲むように新たな亡霊武者たちを出現させる。逃げ道を失った男達は残る勇気を振り絞って武器を構えた。そんな彼らへ少年は無表情で骸骨たちに指示を飛ばす。
「やれ」
その言葉を合図に亡霊武者たちは男達へ襲い掛かった。恐怖に駆られながらも男達は己が持つ武器で迎え撃つ。しかし、向かって来たそれは防具どころか、骸骨自体に触れることすら出来なかった。
「なっ!? あぐっ!」
「えっ? がぁ!?」
「当たらな・・・」
ザシュ!
攻撃を当てられず戸惑う男達の隙をついて、亡霊武者たちが反撃を行う。それらは男達の腹を刺し貫き、首を切り落とした。あっという間に半数以上が亡骸となる。残った男達は迫り来る亡霊武者たちに怯えることしか出来なかった。
「な、なんでだ!?」
「た、助けてくれ!!」
「死にたくない! やめてくれええ!!」
「頼む、もう村を襲ったりしねえ! この通りだ!!」
「・・・」
土下座する男の頼みを聞いた少年は何も言わなかった。そうしている間に亡霊武者たちは武器を振り上げて、残った男達を無慈悲に葬った。男達を骸の仲間入りにさせた骸骨達は、薄らと霧の如く消滅する。ただ一人立っていた少年は一呼吸して、ある方向へ言葉を飛ばした。
「いつまで隠れているつもりだ?」
「・・・・・・気付いていたか」
彼の見つめる先にある木の影から一人の女性が現れる。まるで花魁のような綺麗な着物を着た美女。彼女は人とは思えぬほどの妖美さと覇気を撒き散らす。
「ようやく見つけたぞ」
「やはり雑兵如きでは相手にならぬか・・・」
「臆病な輩を集めて何が出来る?」
「ふふふ・・・」
女は笑みを浮かべて、背後から紫色の触手を複数出現させた。
「今度こそ・・・我の手で滅してやる!!」
「ふっ・・・」
迫り来る触手を気にせず、少年は右腕を女の方へ向ける。その手には青い光球が輝き、細長い物体を形作る。長い銃のようなそれは手元の部分に火の付いた縄があり、火元は右側に付いている鉄製部分の穴に向けられていた。
「滅ぼされるのは貴様の方だ」
バアアアアアン!!
「ん・・・」
「やっと起きたか」
太陽が真上に昇る時間帯。黒鎧を纏う女性の呼び掛ける声で目を覚ます青年。視界に入って来たのは目の前を移動する風景。さらに移動する乗り物に乗っているようで、地面を走る際の振動と何かの駆動音を身体で感じ取る。彼は左側に居る女性騎士へ話し掛けた。
「もうすぐ着くのか?」
「ああ、あれから一時間も経っていない。信じがたい速さだ」
「そういう乗り物だからな・・・後ろは騒がしいな」
「子どもにとっては最高の眺めだろう。私も少々楽しませて貰っている」
「町に着くなら起
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4 5 6..
21]
[7]
TOP[0]
投票 [*]
感想