城の正面入り口手前。
そこへ舞い降りたレンジェはシンヤとレグアを降ろし、彼らとともに内部の様子を伺う。
「やけに静かですね」
「衛兵がいるはずなのに・・・何処へ行った?」
「恐らく町へまともな人間を取り込みに行ったのだろう。内部には少数だが、陰の気配がする。気を抜くな」
レグアを先頭にレンジェとシンヤがその後ろへ付いて行く。
彼女達は城の中央ホールへと辿り着く。そこはかなり広く、目の前には大きな赤い階段があり、天井には蝋燭が無数にある巨大なシャンデリアが飾られていた。
「広いですね」
「天使が居る場所は?」
「この階段で上がって、それから・・・」
「レグア!!」
「「「!」」」
突如、響いてきた呼び声に3人は辺りを警戒した。すると、階段の上にある左の奥から黒い祭服を来た男性が現れる。彼は階段の上から見下ろすように、帰って来た少年へ声を上げた。
「貴様は何をやっとる!? この町に、いや、この城に! 魔王の娘であるリリムを連れ込むとはどういうことだ!?」
「アザミュウマ卿! 今はそれどころではな・・・」
「今はなんだと!? 魔物に加担するとは、どうりで勝てぬはずよ!」
「違う! そういう訳じゃな・・・」
「もうよい! その魔物共々、この私が直々に手を下してやる!」
そう言って彼は両手からバチバチと火花を散らし、黄色に輝く雷球を飛ばしてくる。レグアはすぐに剣を抜いて、その雷球を真っ二つに切り裂いた。二つに分かれた雷球は彼らの左右へ行き、床に当たって爆発する。
「お、おのれええ!」
「アザミュウマ卿! 何故、魔法が使えるのですか!?」
「これか? ある力を授かったおかげで・・・」
「誰にだぁぁぁ!?」
シンヤが凄い剣幕で怒鳴った。その形相に枢機卿も一瞬臆するが、再度偉そうな態度で答える。
「ふん、異教徒か? これはある女からい・・・」
「何を口にした!?」
「なっ! 何故、それを知っている!?」
「答えろ! 奴から何を受け取った!?」
「・・・む、紫色の球だ! それを飲み込んだら魔法が使えるようになった!」
「・・・」
その答えにシンヤは愕然としていた。質問の言葉に枢機卿も動揺し始める。
「シンヤさん?」
「シンヤ、何を・・・」
「おい! 一体なん・・・」
「愚か者ぉぉぉぉ!! それは“落とし子の卵”だ!! 中から喰い破られるぞ!!」
「「「!?」」」
驚愕の発言をした直後、枢機卿が胸を押さえて苦しみ出した。彼は目を血走らせ、口から泡を吹く。
「ぐ、がっ!? む・・・ねが! ぐるじい!!」
「アザミュウマ卿!?」
「っ!?」
「見るな!!」
シンヤに抱き寄せられたレンジェは、彼の胸元によって視界を遮られてしまう。その間、彼女の耳元には不快すぎる音が響き続けた。
「があああ!! あががが、ブシュウ!! ごがっ!! あ゛ぶぼっ!!」
肉が引き裂かれていき、それに伴って男の苦痛の声が漏れる。肉の中から這い出るような音が響き、次第に男の声が聞こえなくなった。
「そ、そんな・・・ア、アザミュウマ卿・・・」
「くっ・・・」
「・・・」
やがて不快な肉の音が無くなり、シンヤの手がレンジェから離れる。
「はっ!?」
次に彼女が見たものは、さっきの枢機卿と入れ替わるように立っていた化け物だった。紫色の触手で形成された身体は2m近くあり、手には大き目の鉤爪が出ている。猫背で顔に当たる部分は巨大な目玉がギョロつかせていた。怪物の足元には肉片と骨が散らばっている。
「そんな!? ひ、酷過ぎます!」
「術を使うことで成長し、宿主を喰らい尽くす陰の仔だ」
「よくも! 化け物がぁぁぁ!!」
「むおおおおおおおお!!」
怪物は雄叫びを上げて、彼女達に飛び掛かった。3人が散り散りに別れて避ける。彼らの居た場所が怪物の落ちてきた衝撃でめり込んだ。すかさず、怪物はその目玉の視線を右側に居るレンジェへ向ける。
「むおおお!!」
彼女に狙いを定めて走り向かう怪物。レンジェは魔刀を取り出して構えた。大振りの鉤爪を避けていく彼女は、隙をついて化け物の左手を切り落とす。
「おううううううう!?」
「うあああああああああ!!」
レグアは勢いをつけて怪物の背後から襲い、右腕を根元から切り落とした。さらに彼の背後からシンヤが両手で青白い光を持って飛び上がる。
「レンジェ! 小僧! 横に飛べ!」
青年の指示で自身の左側へ飛び避ける二人。彼は光で巨大な棒状の物体を創り上げた。それは灰色をした柱のような棒で、青年の手元近くに張り紙みたいな黒と黄色の縦の縞模様が付いている。彼はその巨大な柱で怪物を叩きつけた。
ドゴオオオオオオオオオオオオオン!!
断末魔を上げることなく、怪物は血を吹き出しな
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