森林地帯を歩き進む5つの人影。
リリムのレンジェを先頭に、彼女の左側にシンヤと夢乃、右側にリトラとマニウスが歩いている。日はすでに正午を過ぎた辺り、彼女達は休憩を入れながらスリップス領へと向かっていた。
「そんなことが・・・」
「その・・・君は妖という輩を探すために、あの町へ?」
「ああ、放っておけば多くの犠牲が出るだろう」
「現に、私の屋敷に居た魔物の大半が操られました」
「あの短時間でセシウ殿やメイドを傀儡にした恐ろしい奴です」
レンジェ達はリトラとマニウスにスリップス領への潜入目的を説明する。
「それで・・・自分たちはどうやって目標を探せばいいのだ?」
「隠れることが得意だからな、早々は見つからん。直に探すしかないが、距離的に短ければ陰の気を感じ取れる」
「シンヤ君、他に探す方法はないのかい?」
「奴が動けばすぐに分かるが、その時はかなり厄介なことになる」
(そうですね。あの時は不利な状況に追いやられていましたから・・・)
レンジェがそう思うのも無理はない。妖が行動していた時、すでに彼女達は危機的状況へ陥れられていたからだ。それは彼女だけでなく、シンヤ自身も避けたいことである。
「町への潜入時に、私は自身の人化と皆さんの魔力の隠匿をします」
「自分も人化の術は知っているので、それで本当の姿を隠します」
「某も」
「僕はそのままの姿で、魔力の隠匿だけはお願いします」
「そういえば、会ってから気になっていたが・・・マニウス、君も人外なのか?」
シンヤは彼の何かが気になり、さりげなく質問した。
「僕はインキュバスになった人間です。魔物と交わると、魔物に適した身体になります。見た目は変わらず、精に秀でた魔人みたいな存在。よくお解りになりましたね?」
「常人より異質で魔物に近い力の波動を感じた」
「僕みたいな存在は魔物の伴侶として当然ですから・・・・・・一部例外もあります」
「例外?」
彼の言ったことに首を傾げるシンヤ。ふとここでリトラが話に加わり始める。
「自分も元は男だった」
「・・・どうみても女の魔物だが・・・どういうことだ?」
「リトラは男だった時、サキュバスに犯されたことがあります。その際、突然変異でサキュバス化し、女性へと変貌したそうです」
「リトラさん・・・それはまさか・・・」
「アルプ・・・サキュバスの一種で、非常に稀な個体だと聞いてます」
「男が性別転換して魔物化するのか・・・面妖な・・・」
「でも・・・今は幸せだと感じてる。自分を支えてくれる人がいるから・・・」
そう言って彼女は隣に居たマニウスへ寄り添った。その表情は恋する乙女のような赤らみの帯びた顔である。微笑ましい二人の様子に、レンジェ達も笑みが零れた。
「素敵な殿方を見つけたのですね♪」
「ぼ、僕が彼女を見つけました! 僕が助けなければ彼女はずっと一人でした。だから、この先は僕がリトラを支え続けます!」
「某もそんな伴侶が欲しいなぁ・・・」
「若造、花嫁を泣かすような真似はするなよ」
「わ、分かってます!」
しばらく歩き続けた彼女達はある場所で立ち止まる。どうやらそこから目的地は近いらしく、一行は潜入準備を始めた。
「では、魔術で身なりを整えてから行きましょう」
「姫様、魔力の隠匿をお願いします」
「そうだな・・・万物の式神でそれらしい服装をしてみるか」
「僕はそのままの服装で、魔力はお願いします」
「自分も人化を・・・・・・っ!?」
ある方向へ振り向いたリトラに、シンヤが不審に思って尋ねる。
「どうした?」
「・・・来る・・・・・・一人だけ」
「えっ、人でしょうか?」
(・・・この感覚・・・・・・・・・あいつか)
彼女達が見つめる先。スリップス領のある方向から、木々の間を通り抜けてやって来る1つの人影が見えてきた。やがてそれは彼女達から少し離れた場所で立ち止まる。
それは以前、シャインローズを襲撃した勇者レグア・ランバートだった。
「護衛のサキュバス2人とインキュバス・・・予想以上に仲間がいたのか」
「久しいな小僧。少しは出来るようになったか?」
「あなたのその挑発的な態度は一々癪に障ります」
少年勇者は鞘から光剣を抜いて構えた。レンジェ達も自身の得物を取り出そうと構える。その中でシンヤは何も出さずに彼女達の前へ出た。
「シンヤさん?」
「そのくらい冷静に対応できんのか? 力任せは己自身を傷付けるだけだぞ」
「うるさい! 今度は・・・僕があなたを叩きのめす!」
レグアがシンヤに向かって走り出す。シンヤは右手に青い光で鉄パイプを創り上げた。彼はその武器で大きく振りかぶって来た勇者の剣を受け止める。
ガキィィィィィィン!!
「まだ、僕を舐めているつもりか!?」
「お前にはこれぐらいが
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4 5 6 7]
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録