手渡された危機

 森林地帯にある山岳付近の上空で、一つの影が凄い速さで飛んでいた。その姿は両手に黒い翼を持ち、鳥のような足の女性。彼女は何かから逃げているのか、必死に羽ばたき続ける。

「はぁ! はぁ! はぁ!」
「KIIIIIIIIIIIIIIII!!」
「!」

 金切り声のような叫びとともに、彼女よりさらに上空から何かが襲い掛かる。それは2m近くもある蛇の身体で、二枚のコウモリのような翼で飛んでいた。そして、巨大な牙だらけの口を大きく開けて、黒鳥の女性に噛みつこうと向かっていく。

「KIAAAAAAAAA!!」
「ひぃ!」
バシュウウウウ!!
「!?」

 突如、蛇の異形が彼女に噛みつく寸前で青白い光線が出現し、それは異形の頭を跡形もなく消し飛ばした。羽付き胴体だけとなった異形は煙を上げながら地上へと落下していく。その様子を呆然と見ていた黒鳥の女性は、光が飛んできた方向から別の何かが飛んで来ることに気付いた。それは鉄の馬のような乗り物に乗った黒服の男性で、右手には見たこともない長身の武器が握られている。

「怪我はないか?」
「え、ええ。あなたは?」
「たまたま通りがかった戦闘部隊の隊長だ。他に奴らはいないな?」
「え? は、はい・・・私を追っかけてきたのはあれだけです」
「そうか。では、気を付けて行け」
「あっ、ちょっと・・・」

 彼女が呼び止めるも、黒服の男性はあっという間にその場から飛び去っていった。彼は耳に付けられた通信機に話し掛ける。

「ドクター、最後のクアトルを排除した。計25匹」
『流石、イーグル。その辺りの反応は消えたみたいだよ』
「了解した。周囲を見回った後、艦に帰投する」



 同時刻、同じ森林地帯の平原。背の低い草むらの地面へ、サメ面の異形が煙を上げて倒れた。

「このリッパーとやら、確かに数が多ければ厄介だが・・・」
「弱いじゃん! あの時はウザかったけど」

 ショートソードを構えるリザードマンのリオ。両刃の大剣を構えるアマゾネスのケイ。彼女達は襲い掛かってくるリッパー達を連携で斬り伏せていく。

「「「「GAAAA!!」」」」
「・・・ふっ!」

 一方、彼女達と少し離れた別の場所では、多数のリッパーを相手にする傷だらけの戦士ブレードがいた。彼は両手に持った青い光学刃で次々と異形を切り刻んでいく。

「GAAA!?」
「GUOOO!?」
「GIIIII!?」
「・・・ん?」

 異形のほとんどを切り倒した後、彼は最後の一体が変化しているのを目にする。それは両腕の刃を赤く発光させて、こちらに向かって刃腕を振り下ろしてきた。

「GAAAAAAA!!」
「・・・!?」
ドォォォン! ジュウウウウウウ・・・

 ブレードが咄嗟に右へ避けると、振り下ろされた赤い刃が地面に突き刺さり、煙とともに焼けた臭いが周りに漂う。彼は避けた瞬間、刃腕から異常な熱気を肌で感じ取った。

(・・・発熱した刃か!?)
「師匠!」
「あんた!」
「GAAAAA!!」
「・・・だが・・・」

 再び襲い掛かる異形に、ブレードは相手の股座をスライディングで潜り抜ける。その直後、彼は手にしていた光学刃を一本相手に目掛けて放り投げた。投げ付けられた光学刃は、異形の左脇腹に突き刺さる。

「GUOO!?」
「・・・それがどうした!」

 彼は刺した光学刃を再度手に取り、そのまま異形の腹を横に切り裂いた。胴を切り裂かれた異形は上半身だけ地面へと落ちていく。致命傷を与えたであろうと確信し、彼は異形に背を向けて立ち去ろうとした。

「・・・ふん」
ガシッ、ジュウウウウウウ・・・
「・・・?」
「GA・・・GAA、HAAA・・・」
「・・・」

 後ろから聞こえた苦痛らしき声に、彼は振り向いて先程の異形を見下す。上半身だけになりながらも、ブレードに刃を突き付けようと這いずる異形。その時、彼はあることに気付く。

「・・・!」
(・・・目が赤い?)

 彼はその異形の状態に驚いた。それまで見てきた異形者のどれもが、“黄色に輝く発光眼”をしていたからだ。だが、目の前の異形は確かに“赤い発光眼”でこちらを睨み続けている。

「GA、HUUUUUU・・・」
「・・・」
「GAAAA!!」

 異形は残る力で赤熱の刃をブレードに突き刺そうとした。その寸前、彼はすでに手にしていたL.B.Hの光弾で異形の頭を撃ち抜く。止めを刺された異形は目の輝きを失い、煙を上げて溶けていく。それを呆然として見つめるブレードに、リオとケイが駆け寄ってきた。

「師匠! 大丈夫ですか!?」
「あんた! 怪我は!?」
「・・・」
「し、師匠?」
「ど、どうしたんだよ?」
(・・・何か違う)









 辺りに漂う熱気によって、意識を失っていた男の視界がぼんやりと映り出す。目の
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