舞い降りた夜光

 地平線の向こうから姿を現す太陽。その光は眠りについていた街とその傍らに佇む巨大船を照らし出す。



 無機質な個室のベットに横たわる男性が目を覚まし、片手で頭を抱えながら上半身を起こす。すでに置時計の針は午前9時を超えていた。

(・・・痛い・・・酒飲みは久々だったからな・・・・・・)
「・・・二日酔いの薬が必要だ」

 頭を抑えるブレードは、脱ぎ捨ててあった黒いシャツを着て、室内から出ていく。向かう先はドクターエスタの居る研究室だった。そんな彼の目の前に朝食のトレーを手にしたレックスがやって来る。

「おはようございます、ブレード」
「・・・ああ、おはよう、レックス」
「顔色が悪いですね?」
「・・・あまり飲まないアルコールを飲んだからな」
「そのようですね。昨日は夜中までパーティーが続きましたから・・・」

 前日の防衛戦の後、戦闘の後片付けを終えて、ドラグーン隊は城へ招かれた。彼らは街の危機を防いだ英雄として称えられ、豪華な晩餐を頂くことになったのだ。部隊で唯一の成年であるブレードと隊長のイーグルは高級なワインを飲むことになり、その他の隊員は普段食べたことのない豪華な食事を頂いた。

「これをどうぞ」
「・・・?」

 レックスがトレーに乗せてあったカプセル錠をブレードに手渡す。彼はそれが何の薬なのか瞬時に判別した。丁度彼が服用したかった二日酔い用の薬である。

「隊長も二日酔いらしく、念のため、もう一人分を用意しました」
「・・・察しがいいな」

 彼は早速洗面所の水で飲もうと考え、自室に戻ろうとした。

(・・・ん?)

 彼は開けっ放しにしていた自室の扉の奥から話し声が響いてくることに気付く。最初は警戒していた彼だが、はっきりと声が聞こえた時点でため息を吐いた。少し呆れた表情で何気なくドアを開けると、そこには見知った顔が二人も居た。

「「あっ・・・」」
「・・・何してる」
「あっ! いやっ・・・その・・・」
「これはだな!・・・あ、あんたが居なかったから心配で・・・なあ? リオ!」
「わ、私に振るな! ケイ!」
(・・・答えになっとらん)

 慌てふためくリザードマンとアマゾネス。そんな彼女達を無視して彼はその場から立ち去り、彼女達もそれを見て追いかけた。

「あっ!? 師匠!」
「あんた!? 待って!」
「・・・」
「何だよ・・・さわが、じっ!?」

 二人の騒ぎ声に気付いた寝起きのラキがドアを開けて顔を覗かせる。その際、通り過ぎるケイの大剣の柄が彼の顔に直撃した。こめかみに硬い物を当てられたラキは目を回しながらその場に倒れる。

「師匠〜!」
「あんた〜!」
「☆〜☆〜☆〜・・・ガクッ」



<都市アイビス 教会内部>

 ベットで寝ていたインプのサリナがゆっくりと起き上がった。隣のベットには幼いゴブリンの少女ミーニがぐっすりと眠っている。少女を起こさないよう静かに立ち上がり、彼女は部屋から出ていった。

「すぅ〜ぴ〜」
「すぅ〜ぴ〜」

 孤児院内の祭壇のある室内。並べてある長椅子に二人の少年が横に寝そべっていた。黒肌の同じ容姿を持つジェミニたち。ラートとレートは昨夜のパーティーで孤児院の子ども達と一緒に食事をし、先に疲れて寝てしまった子ども達を教会まで運ぶことになる。運び終えた二人はその疲労により、その場の椅子で寝ることにしたのだ。

「寝顔も一緒ね・・・」

 サリナはハートの先端を持つ悪魔の尻尾でラートの頬をつつく。すると、ラートだけでなく、対称に寝ているレートまでビクリと反応した。

(そっか。感覚や思念を共有できるから・・・)
「サリナ、おはようございます」
「え? ああ、おはよう、ウィリエル」

 サリナが声の響いてきた後ろを振り向くと、そこには純白の翼と輝く天輪を持つ天使ウィリエルが立っていた。彼女は双子の様子を見て微笑みながらサリナに話し掛ける。

「かなり疲れているようですね」
「昨日は色々ありましたから・・・」
「ええ、おかげで街の平穏も守られました。彼らという存在が居たおかげで・・・」
「ウィリエル・・・」

 少ししんみりした表情をする天使に、インプの少女は慌てて別の話を挙げた。

「そ、そういえば! 今日は“あの日”でしょう?」
「あっ・・・そうでしたね」
「ウィリエルもあの隊長さんと一緒に見に行ってはどうですか?」
「え? でも、孤児院の・・・」
「私やアイカ達が居ますから、出かけても大丈夫ですよ」
「そうですか?・・・では、お願いします」

 天使の少女は半ば不安になるも教会の玄関へと向かう。彼女が出ていくと同時に別のドアからダークプリーストのアイカが入って来た。彼女は双子の寝顔を見て心酔してしまう。

「あら、美味しそ・・・」
「ミーニの家族に手を出さないでね」
「あら
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