<都市アイビス 西エリア 正面入り口付近>
街の出入り口では多数の兵士たちが集まり、その中心でニールが指揮をとっていた。彼女たちは侵攻してくる部隊以外に、別の侵入者が出ると予測して街の防衛に出回る。
(レシィ司令官の言う通り、広範囲で兵たちを回したが・・・大丈夫だろうか?)
彼女は先刻のミサイルが発射されたのを見て、ドラグーン隊の作戦が開始されたのだと悟った。遠くの先では、最近聞き慣れた銃撃音が鳴り響いてくる。ニールは隣にいたミノタウロスのベネラに声を掛けた。
「・・・・・・ベネラ」
「はい?」
「向こうの様子を見に行ってくる。その間、ここの指揮は任せたぞ」
「ええっ!? ちょっと、ニール隊長!」
慌てる副隊長の静止を聞かず、彼女は素早く近くの馬に乗り、戦場へ向かう。
(やはり、居ても立っても居られない。あの二人のように、私も魔物娘の性には逆らえないか・・・)
<都市アイビス付近 西側 砂漠地帯>
最早、彼らにとってそれは化け物としか言いようが無かった。遠距離から連続で火を放たれ、剣の切っ先すら通さない光の盾と巨大な剣の刃を持つ巨体。300もいた精鋭の騎士たちは半数以上が叩きのめされ、残った騎士たちは戦意喪失で後退し始める。
『もう終わりか? ちょろいなぁ』
「・・・士気が衰えたか」
(・・・これだけ痛めつければ、しばらくは・・・ん!?)
下がる騎士たちの間から、輝く純白の光弾が複数飛来してきた。それにいち早く気付いたブレードは、すぐに光学盾を展開して防ぐ。光弾は全てブレードの機体を狙って飛び、全てシールドに当たると消滅した。
『ブレード!?』
『おい! 何だ今の!?』
「・・・予想はしていたが・・・やはり居たか」
彼は前面のモニター画面を凝視する。そこには、騎士たちの奥で不気味に笑う人影が映っていた。金色の長髪、赤服に赤いロングコートを着た男。その手には純白に輝く光を纏う長剣が握られている。
『あいつは・・・』
『げっ!? キチガイ勇者!』
「・・・ふん」
教会の勇者という地位を持つ戦士。不消の陽熱“シャグ”と呼ばれる男。以前、都市アイビスを襲撃し、魔物を凌ぐ程の戦闘能力を持つ剣士である。
「邪魔だ。どけっ、貴様ら」
赤き勇者は輝く光剣を振り回して、道行く先の騎士たちを吹き飛ばしていく。彼はブレードの機体から10m離れた地点で立ち止まると、相手に光剣を突き付けた。
「その中に居るのは解っている! 出てこい、ブレード!」
『・・・』
彼の要求の言葉を聞いて、ブレードは無言で機体の前面部分を開き、コックピットから飛び降りる。その様子を見ていたイーグル達だけでなく、トトギス軍の指揮官や騎士たちも驚いた。
『なっ!? ブレード!』
『おまっ、何してんの!?』
「ば、馬鹿な!? あれに人が乗っていただと!?」
「ゴーレムの類じゃないのか!?」
「何故、人が!?」
周りからの声を気にせず、二人は互いに向き合い、鋭く見つめ続けた。
「久しぶりだな、ブレード」
「・・・何しに来た?」
「決まってるだろう? てめえを倒しに来たんだよ!」
「・・・悪いが子どもの遊びに付き合っている暇はない。余所で遊べ」
ドォォォォォン!!
ブレードの言葉が終わると同時に、彼の左側の砂地が何かの衝撃で吹き飛ぶ。微動だにしない彼に対して、シャグは光剣を振り下ろしていた。
「貴様の・・・そのふざけた態度は俺の癪に障る!」
「・・・なら、俺からも言わせて貰う。貴様の自己満足など知ったことか」
「うるせぇ!!」
ブレードの言うことが気に入らないシャグは、自身の右側の腰へ引いた光剣を大きく振って、強烈な横薙ぎで切り裂こうとする。
バチィィィィィィ!!
「!?」
「・・・そっちが黙れ!!」
ブレードはL.B.Hの光学シールドで横薙ぎを受け止め、右腕で相手の顔面へストレートパンチを繰り出した。
「ぶぅ!?」
「・・・ふっ!」
クリーンヒットしてよろめくシャグに、彼は続けて相手の腰目掛けて、左足の前蹴りを当てる。蹴り飛ばされた勇者はすぐに受け身を取って、再び斬り掛かった。ブレードもRAY.EDGEを両手に持って迎え撃つ。
純白の斬撃と青い双刃が弾き合い、激しい閃光が辺りに撒き散らされる。周りで見ていたイーグル達とトトギス軍の騎士たちは呆然となって観戦していた。
『向こうもなかなかの腕だな』
『あいつの剣って、魔法だよな? RAY.EDGEと互角って・・・』
「何だ、あいつ!?」
「不消の陽熱と互角で闘ってるぞ!」
「あの化け物と対等だと!?」
一方のトトギス軍の指揮官は一途の希望である勇者に期待していた。
(もし、奴が勝利したら・・・我々に勝機が回ってくる! 頼む、勝ってくれ!)
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