砂鉄集めの百足

 晴れた青空の上空を高速で飛行する影が二つ。ドラグーン隊のレックスとラートがスカイチェイサーに乗って遥か上空を飛んでいた。

「目標を発見。ラート、停止してください」
「おっけい!」

 二人はかなり上空で高度を保ちながらチェイサーを留まらせる。ラートは携帯望遠鏡を取り出し、レックスと一緒に向かっていた先の方向へ目を向けた。

「・・・・・・うわっ、いっぱい」
「かなりの数ですね」

 レックスの視界に映ったのは、隊列を成して進軍する兵士たち。それは彼の視界の表示にあるカウント数がすぐに3ケタを超えるほどの数である。やがて、カウントされた数字は4ケタまで表示されていった。

「3250名ですね」
「そんなに居るの!?」

 驚きの声を上げるラートを余所に、レックスは進軍する兵士たちを遠くから眺める。

「ある程度の詳細も取れましたので、帰還しましょう」
「あいよ〜」

 二人は向きを変えてその場から飛び去った。



<同時刻 戦艦クリプト 司令室>

 戦艦の駆動音が響く室内。レックスとラート以外の隊員と、都市アイビスから領主レギーナ、司令官レシィ、防衛隊長ニールが立っていた。彼らは中央のテーブルを囲むようにして、レートに視線を向ける。

「相手の数は3250もいるらしいよ」

 レートの言葉に、皆が真剣な表情で考え込んだ。

「非常にまずいな・・・」

先に口を開いたのは領主レギーナだった。続けてレシィとニールもしゃべり出す。

「我が防衛部隊は千人くらい」
「どう見ても分が悪いのぉ・・・」

 明らかに不利な状況と判断したイーグルは、あることをニールに尋ねた。

「別の場所から援軍を呼び寄せられないか?」
「残念だが、多くを呼び寄せられない。出来たとしてもギルドの傭兵が数百人程度だ」
「それにじゃ、この様子じゃと、三日後にやって来るじゃろう。それまでに人手を集めるのも無理がある」
「現状で対応するしかないのか・・・厄介な」

 彼の言ったことに、レギーナは拳を握りしめる。

「それでも・・・それでも、我が街を滅ぼさせたりはしない」
「同感じゃ」
「今まで守り通してきた街だ。例え剣が折れようと、朽ち果てるまで守って見せる」

 彼女含めてレシィとニールも力強く宣言した。それを聞いたドラグーン隊は呟くように口を開く。

「まぁ、本来先に手を出したのは俺とブレードだったし・・・」
「・・・手助けの際に邪魔だからぶっ飛ばした。それだけだ」
「宗教怖いねぇ〜ラート」
『怖いねぇ〜』
「ここまで深く関わった以上、見過ごすわけにはいかない。異論は? ドクター」
「聞かなくても解るでしょ?」

 彼らの言葉に領主レギーナは頭を下げてしまう。

「すまない。いくら手を借りたいとは言え、無関係である貴公らに・・・」
「レギーナ殿、頭を上げてくれ。我々は人命の守護を目的として活動している。種族等は関係ない。我々も出来る限り、あなた達や街を防衛しよう」
「本当にすまない・・・」
「ぬしら・・・」

 イーグルの答えにレギーナは頭を上げ、レシィも何かを言いたげそうに見回した。エスタは少しため息を吐いて腕を組む。

「でも、どうしようかなぁ・・・イーグル、相手は人間だよ?」
「それは解っている。穏便に済ませたいところだが・・・」
「CXULUBを使って追い返したら?」
「・・・ラキ、光学主砲を人に向けるつもりか?」
「このバカ者が、余計に脅威を植え付けるだけだ」
「それは却下だね」
「人でなし」
『最低野郎』
「酷い!」

 ラキ以外の隊員が、彼の考えに非難を浴びせる。その光景に思わずレギーナ達は笑ってしまう。イーグルはいい策は無いか考え込んだ。

(G.A.Wを出してもいいが、大勢だと死傷が出る可能性はある・・・だからと言って、暴動鎮圧用の兵器は小物程度しかない)
「兄上?」
「思考錯誤してるから、話し掛けないで欲しい」
「わ、解ったのじゃ」

 エスタも厄介な難題に頭を抱え込む。そんな中、ラキとレートは気楽に話し続けていた。

「3千人かぁ・・・G.A.Wでも乗らねえとキツイぜ」
「スパイスボールじゃあ、足りなさ過ぎ。やっぱり、威嚇射撃で蹴散らす?」
「向こうも兵士だ。威嚇だってばれるぞ?」
「じゃあ、どうしろってんだよ?」
「それを考えろよ!」
「うるさいよ! ラート!」
『帰ったら二人でリンチ決定!』
「このS極とN極が!」
「なんだと!?」『なんだと!?』

 相変わらずの光景に、エスタはやれやれと首を振る。

(S極とN極って・・・・・・・・・・・・あっ!)
「それだぁ!」

 白衣の少年の叫び声に全員が驚いた。彼はレシィに近寄り、耳元で囁き始める。イーグルは不思議そうに二人を見つめた。

「何を思いついたのだ?」
「・・・どうせロクで
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