潮風が漂う街中、一人の男性と三人の女性が歩いていた。黒服を着た傷だらけの男は左手をズボンのポケットに入れて、目だけ動かして街を見回る。右隣に居る黒鎧の女性は彼に合わせて並び歩き、褐色肌の女性と鱗と尻尾がある女性は男性の後ろへ着いて行く。
「・・・海か・・・」
「そちらにもあったのだろう?」
「・・・行ったが、戦闘や訓練以外で訪れたことはない」
ブレードの素っ気ない答えに、ニールは何も言い返せなかった。後方の二人は嫉妬じみた視線を前方に浴びせ続けている。
「「・・・」」
「・・・」
「お前たち、その視線を止めろ。みっともない」
「「う〜」」
ニールは後方を向いて、彼女たちに注意した。しばらく歩いていると、4人の目の前に数隻の巨大な船が停泊する港が見えてくる。
「・・・大した船だな」
「この港町を統治する海賊たちの船だからな。海上戦で彼らに敵う輩はそういないだろう」
「・・・海賊が仕切る街か・・・」
エスタ達が謎の遺跡へ調査しに行っている頃、ブレード達はある街へやって来た。そこは都市アイビスから東へと向かった先、大陸の端にある海に接した港町である。彼らが訪れた理由は情報収集だが、それ以外の理由もあった。その理由はイーグルからまたも言い渡された“休養”である。
「・・・どれだけ俺を休ませるつもりだ」
「いいじゃないか。今回は私がまとめて、この街を案内しよう」
「くっ、悔しいがここはニィに任せるしか・・・」
「リーダーぶりやがって・・・」
「・・・あと二人はどうした?」
ブレードが何気に尋ねると、4人全員が立ち止まり、ニールは自分たちの周りを見渡した。ここで彼女はある人物たちがいないことに気付く。
「あの二人! 何処に!?」
「ああ、あの青年とアリスの少女なら、買い出しに行くと言って・・・」
「アタイらの知らない間に抜けてったぞ」
「・・・」
リオとケイの言葉に、ニールは開いた口が塞がらなかった。微動だにせず眺めていたブレードが一言呟く。
「・・・もっと早く言え」
街からちょっと離れた場所。穏やかに波が打ちつける岬へ、黒い服で青い鉢巻バンダナを付けた青年と、黒い長髪で悪魔のような翼と尻尾を持つ少女が立っていた。
「んふふふふ・・・海、海だ、海だぁぁぁぁぁ!」
「お、お兄ちゃん?」
「異世界に流れ着いて二週間。まさか、ここで趣味を堪能できる機会が来ようとは・・・」
ブレードと同じ理由で港町にやって来たラキは、手にした釣竿をワンタッチで伸ばす。彼の左側には、アリスのユリが不思議そうに見つめていた。二人は買い物をし終えて、荷物を『キャリアーフェザー』のミミックの少女に手渡し、その後、街から出ていたのだ。
「この釣竿は一般のとは違う! 竿自体の材質に強化プラスチックDXを使い、糸もエスタ特製のハイパワースケイルラインで最大五百キロまで耐えられる!」
「あの、おに・・・」
「しかも! 遠隔操作でルアーが動く仕組みになってるので、より食いつきやすいときた! どうです、これ!?」
青年が釣竿に付いているスイッチを押すと、左手に持っている小魚に扮した疑似餌の尻尾が左右に動き出す。
ピコピコピコピコ・・・
「か、かわいい・・・」
「これなら絶対大物が釣れること間違いなし! いざ、マグロ並みの獲物を!」
「あっ、ちょっと、お兄ちゃん!?」
ラキは両手で釣竿を持ち、竿を後ろへ引き倒し構える。力を溜めた後、彼は一気に前方へと振り下ろした。
「そぉりゃあああああ!」
シュルルルルルルルル・・・ポチャン
遠く離れた位置に沈むのを確認し、彼はスイッチを操作して魚をおびき寄せる。少女の方は何かに焦り、青年へ話し掛けた。
「お兄ちゃん!」
「ん? どうした、ユリ」
「あのね、実は・・・」
ピィィン!
「おっ! フィィィィィシュ!」
少女が話している途中で釣竿に引きが入り、ラキは興奮してリールを巻き始める。
「来た、来た、来たぞ! この手応え! カツオか!? ハマチか!? それとも・・・マグロ!?」
「まずいよ! お兄ちゃん!」
「心配するな! どんな大物だろうと、必ず釣り上げて見せる!」
「そうじゃなくて・・・」
「よし、近いな! 一気に・・・」
ラキは全身に力を入れて踏ん張り、釣竿を引き上げた。
「どぉぉりゃあああああああ!!」
ザパァァァァァァァァァァァァァァァン!!
「・・・デカいな」
一方、ブレード達はある一隻の船の前で立ち尽くしていた。それはドラグーン隊の戦艦よりも小さかったが、それでも普通の船より一際大きく、他の船より目立っている。そして、掲げている旗には、ドクロの周りに8本の足のような三角が均等に描かれていた。
「確かに普通の船より・・・」
「大きい・・・」
「す
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