ある晴れた日の青空に、二つの影が上空を飛行していた。一つは人以上に大き過ぎる巨体が逆関節の足を折り畳んで、頭部の辺りの左右のジェットエンジンで飛んでいる。もう一つは縦長のものに二つの人影が跨っていた。
『兄上とハイキング〜♪』
『こら、首を振らな、ぃてっ!』
「楽しそう・・・」
「とてもいい雰囲気だと思われます」
飛行する巨体はエスタ専用の青い機体の『NYCYUS』で、搭乗しているのはエスタ本人と司令官のレシィである。その右隣にいるのがスカイチェイサーを操縦するレートと、その後ろに跨るレックス。
「この先の山にあるの?」
「レシィ様の情報が正しければ、この先だそうです」
彼らが向かう先には、森林地帯にそびえる巨大な山が存在していた。
<数時間前 戦艦クリプト 司令室>
レシィはドラグーン隊の目の前であることを話す。イーグルは彼女が口にした言葉を繰り返し尋ねた。
「封印された遺跡?」
「そうじゃ。未だかつて誰も入ったことの無い、古代の遺跡だと言われる封印の扉の場所を見つけたのじゃ!」
「要はその探索に人手が欲しいんだね?」
「その通りじゃ、兄上」
「先読み、はえよ」
エスタの瞬時の答えに呆れるラキ。いつものようにレシィは光学マップへ位置を示す。今回指定した位置は以前、村人たちを避難させた場所からさらに南側の森林地帯である。
「ある情報の入手で、誰も開けることのできなかった扉が存在すると聞いたのじゃ」
「・・・誰も開けたことのない扉を見に行くだけか?」
「無論、その扉を開けて中身を拝見するのじゃ!」
「・・・誰がどうやって?」
ブレードは不機嫌そうな口調で質問したが、レシィは気にせず胸を張って答えた。
「ワシの魔術でどんな扉だろうと開けてやるのじゃ!」
「随分自信があるようだね?」
「だから、兄上」
「はい?」
「一緒に付いて来て欲しいのじゃ♪」
結局、彼女の頼みでエスタ、レックス、レートが同行することとなった。
木々によって包まれた大きな山。その麓の辺りに自然とは不釣り合いのものが存在していた。それはまるで、鉄に似た重そうな素材を使ったような無機質で出来た巨大な黄白色の扉。10mもあるアーチ状の扉で真ん中に縦筋の隙間があり、内部が確認できないほど固く閉ざされていた。
「ほえ〜」
「ようやく来たのじゃ!」
レートは呆然と扉を見上げ、レシィは張り切って扉を見つめる。一方、機体から降りたエスタとレックスは真剣な眼差しで扉を見つめていた。
「レックス」
「スキャン開始・・・」
レックスの瞳孔が怪しく光り、彼の視界で映し出されるデータ表示が次々と出現していく。しばらくして、彼は左隣に居たエスタへある報告をした。
「この扉の動力はまだ生きています。恐らく内部の動力炉から電源を取り入れている可能性があります」
「やっぱりね」
「兄上?」
「へ?エスタ?」
突然の発言でレシィとレートは、ポカンとした顔で彼らを見つめた。ここであることに気付いたレシィが、二人にそのことを尋ねる。
「兄上、もしかして・・・これを知っておったのか?」
「いや、知らないけど・・・僕たちの知ってる技術とよく似た構造の扉みたいだね」
「山中に施設らしきものが埋まっているようですが、動力がまだ生きているようです」
「これ、施設なの?ねえ、施設なの!?」
「レート、落ち着いてください」
喚くレートを抑えるレックス。それを気にせず、エスタは扉の右横にある草で覆われた壁へ歩き向かう。彼が手で草を掻き分けると、壁に端末らしき装置が付いていた。ひび割れたモニターの下にあるキーボードを操作し始める少年。それを見ていた他の3人も彼に近寄って様子を伺う。
「ドクター」
「手伝わなくていいよ。割と簡単な解除作業だし」
「おお、流石、研究員」
「流石、兄上!」
「こんなの朝飯前だ・・・よっ!」
『コードロック解除 貨物ドアオープン』
ゴォォォォォォォン
モニターにオープンの表示が映し出され、巨大な扉が重苦しい音を立てて左右へと開いていく。4人が内部の様子を見ようと覗き込むが、灯り一つ見当たらない程の暗闇で確認できなかった。
「真っ暗なのじゃ」
「仕方ない、レックス」
「了解。レート、今度は私が操縦します」
「へ?」
エスタは軽い指示をして『NYCYUS』に乗り込む。遅れてレシィも乗り込み、レックスはチェイサーに跨って操縦し始めた。続けてレートもレックスの後ろに跨る。それぞれの機体の前面部分からライトが照射され、前方の闇に包まれた通路を照らしだす。
『幸いG.A.Wでも入れる通路みたいだから、このまま進むよ』
「了解、後方を警戒しながら進みます」
「魔物とか、異形者とか出ないよね?」
『どちらが来てもワシの敵で
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