<戦艦クリプト 研究開発室>
ラキとユリがカプセルに入れられ、それを端末で操作し始めるエスタ。隣で見守っていたレシィのもとへ、レックスが近寄って行く。ある程度作業が終わったところで、エスタは背伸びしながらレックスに話し掛けた。
「レックス、今日も街へ行ったら?」
「よろしいのですか?」
「おぬしもコカトリスのオナゴと一緒に楽しんだらどうじゃ?」
「ですが、私は機械なので・・・」
「レックス」
突如、エスタは口にした言葉を力強くして、椅子を回して彼を見つめた。
「これは命令。街で自由に行動してきて」
「・・・・・・かしこまりました」
彼は無表情で了承し、部屋から退室する。その後ろ姿を見ていたレシィが少年に尋ねた。
「ああまでして、言う必要があるのか?」
「一様、僕の指示に従うようプログラムされているからね。でも・・・」
「でも?」
「最近、妙な行動が目立つ・・・無断で君を招いたり、何も言わず、未調査の卵を調理するなど・・・」
「確かに・・・でも、それは・・・」
「僕の作ったプログラムで行動していない。あれは自分自身で行動している」
「?」
中央広場から北東に位置する少し大きめの建物。『キャリアーフェザー』という看板が書かれた運送会社。そこは様々な物を城や街の店舗、民家へ配達している。会社内ではあらゆる荷物が複数並べられて、数人の人間や魔物が仕分けと配達の準備をしていた。
「え、え―と・・・これはこっちで、あとこれは・・・」
「ワッコ!それ南部地区のだから、こっちに頂戴!」
「あ、は、はい!どうぞ!」
ブラックハーピーの一人に指示されて、彼女は手にしていた小包を手渡す。コカトリスと言われる飛行できないが足の速い種族のワッコ。彼女はここの配達員の一人で、主に都市の北部地区の居住区を担当している。そんな彼女に、宝箱から上半身を出しているツインテールの少女が呼び掛けた。
「ワッコ!今日運ぶ荷物が届いたよ!」
「あ、す、すみません!シトス部長!」
「向こうの仕入れが遅くなったせいで、今ようやくこっちの箱に届いたの。今から出すわ」
彼女はそう言って箱の中から次々と小包を取り出して、目の前の床に置いて行く。この少女はミミックと言われる魔物で、箱の中は魔力で作られた別の空間が存在し、箱から箱へとあらゆるものを移動させることができる。
「これで全部よ。結構あるけど・・・大丈夫?」
「だ、大丈夫です!」
ワッコはそう言って、40個以上ある小包を白い袋に入れた。それから、奥の事務机で座っている男性に声を掛けに行く。彼はここの社長で、ジパングと言われる東の大陸出身の人間であり、先程のミミックのシトスの伴侶でもある。
「は、箱木社長!わ、私のリストを・・・」
「ん?ちょっと待ってね・・・え―と、これだ。はい」
「では、い、行ってきます!」
リストを受け取ったワッコは背中に袋を担いで外へと向かった。それを見ていた社長は不安そうな顔をして、羽ペンの先をインクに浸す。そんな彼を見ていたシトスが箱の中に入り、彼の後ろにあった箱から飛び出して抱きついた。
「旬吉〜何見とれているのよ〜?」
「いや、ワッコの様子が変だったから・・・」
「へ?そうだっけ?」
「少し、お腹が重そうな感じだったな」
「そういえば・・・あの子、未婚だったよね?」
小走りで移動していたワッコは、突然止まってお腹を押さえる。彼女は自身の異変に気付いており、それが何なのか把握していた。
「今日の、は、配達が終わるまで・・・我慢しないと・・・」
<都市アイビス 北エリア>
他人に悟られぬよう、笑顔で配達し続けるコカトリスの少女。しかし、未だに残っている沢山の荷物の過重と、お腹の異物感で足取りがおぼつかなくなる。
(ちょっと・・・きついかも・・・)
「あっ」
おぼつかない足で小石にけつまずき、少女はバランスを崩して前のめりに倒れそうになる。その時、彼女の左側から男性の腕が伸びてきて、彼女の身体を抱え止めた。
「えっ?」
「大丈夫ですか?ワッコ様」
「あ・・・」
彼女を支え止めたのは、ドラグーン隊の人型兵器レックスだった。彼は少女の身体を支えながら体勢を戻す。
「ご気分がすぐれないようですね?」
「だ、大丈夫です・・・ちょっと、疲れて・・・」
少女は何ともない振る舞いをするが、彼は無言で彼女が持っていた袋を片手で持ち上げる。驚いた少女は彼の顔を見つめた。
「!」
「私がこの袋を運びましょう」
「え、ええ?で、で、でも・・・」
「大丈夫です。これでも人間よりは早く移動もできます。それと、足の速いワッコ様を視界から見失ったとしても、レーダーで探知できますので、ご心配なさらず」
「レックスさん・・・あ、ありがとうございます
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