癒し舐める長き者

 此処はある親魔物領の街で、通りのど真ん中。

 今、私の周りには剣を持った男たちが取り囲んでいる。

「このアマ〜叩きのめしてやる!」

 モヒカンの男がイラついて剣を振り回して威嚇してきた。なんて無駄のある動きだ。

「あらあら、おいたはいけませんよ〜」

 私の隣にいるピンク色のプリンセスローブを着た女性がおっとりとした口調で注意を促す。

「うりゃあああ!!」
「あら、そうきます?」
「え?んぎぎぎぎぎ!?」

 突然、斬り掛かった男が、隣の女性のスカートから生えた触手によって拘束された。そう、彼女はローパーのレリゼ。私の親友でもあるが、少し変わった感覚の持ち主でもある。

 次々、レリゼに襲い掛かった男たちは触手で拘束されて、気絶するまで締め上げられていく。

「やろおおおおお!」
「アンタ、馬鹿じゃない?」

 今度は私に向かってきた男がいたので、自身の尻尾で蠅のように地面へ叩き潰した。まともに喰らった男は痙攣しながら白目を剥いている。

「うわっ、ひっどい顔・・・」
「私の好みでもありませんね」

 思わず愚痴ると、残った一人が逃げ出した。

「あっ、待ちなさい!」
「あら、私を置いてかないで〜」
「レリゼはこいつらを縛っていて!私はアイツを追うわ!」
「そんな〜」

 不満の声を出す親友を置いて、私はすぐさま素早い蛇行で男を追いかけた。もう少しで追いつこうとした時、そいつは近くで歩いていた人間の少女を捕まえてナイフを突きつける。

「近寄んな!近寄れば、こいつを刺すぞ!」
「ひっ!」

 悲鳴を上げる少女の声を聞いて、私のフラストレーションが一気に高まった。

「アンタ、そんなことして無事に助かるとでも思っているの?」
「へ?」
「その子に手を出せば、無事に済むと思ってんの!?」
「ひっ!?」
「無駄よ」

 悲鳴を上げる男の目を見つめながら、自身の目に魔力を籠めて飛ばす。すると、男の身体は動かなくなり、声も出せなくなる。私はお構いなしに近づいて、少女を抱え上げた。

「もうこのおじさんは動けないから、大丈夫よ」
「あ、ありがとう・・・蛇のお姉ちゃん」

 救い出した少女は感謝しながら、私の胸に抱きつく。

 私の名はマミ。メドゥーサと言われる蛇の魔物だ。二つに縛った髪の先は複数の蛇となり、腰から下は巨大な蛇の尻尾となっている。そして、先程の男を金縛りにさせたのも、種族としての特技“石化の視線”生きてるものなら視線を合わせるだけで、運動神経を麻痺させる私の得意な技。





 ここはこの街の警備や依頼された討伐などを行う者たちの自警団本部。私はここに所属するメンバーの一人である。主に治安活動や盗賊などの輩の制圧が日課となっていた。

「よう!お疲れ、マミ、レリゼ」
「お疲れ、おやっさん」
「お疲れ様です〜」

 この中年の男性は、自警団のリーダーの一人で元は鍛冶屋だったのだが、今ではサイクロプスの女性と結婚。それでも鍛え上げられた筋力はミノタウロス並みだと言われている。どんな化け物よ・・・。

「相変わらず・・・レリゼは派手なローブを着てるな。がははははは!」
「本当に飽きないわね、あなた」
「だって、いつか来る王子様のために用意してるんですもの♪」

 それは玉の輿を狙ってるんじゃなくて?まぁ、深く追求したら、ややこしそうなので聞かないことにする。服もただの生地ではない。ウエディングドレスなどを作ってくれる一流のアラクネ職人の逸品である。それならプリンセスローブじゃなくてウエディングドレスの方が手っ取り早く結婚できるじゃない。

「そうだ、お前さんたちに報告しなきゃいけないことがある」
「何?」
「お見合いですか!?」

 あなた、何期待してるの?そんな彼女を無視して、おやっさんはある洋紙を取り出す。そこには重要依頼書と書かれていて、私たちを含めた自警団のメンバーの名前が複数書かれていた。

「明日、この付近に誘い込んだ奴隷商人の一行がやってくる。隣町の自警団、遠方のギルドの傭兵たちと共同で制圧する」
「いよいよ来たのね・・・」
「あらあら、どれだけお腹を膨らませたお人でしょうかね?」

 この奴隷商人たちについては、私も噂で聞いたことがある。数々の村や旅人、行商人の団体などから略奪を繰り返し、そこから得た物や奴隷にした人たちで稼いできたらしい。非道的なことをし続けるこの者たちは、遂に賞金が賭けられることとなった。

 奴らは腕のある傭兵などを雇うなどして、防衛力も身に付けている。そのため、奴らにスパイとして間者の傭兵を雇わせて、力を徐々に奪うことにした。今回、奴らは安全地帯の反魔物領へと移動中であったが、それも細工してこちらの用意した罠に誘い込んだのだ。

「奴らの中で一番腕のある奴がいたが、ついさっき暗
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