異形剣の王

 3人の目の前に突如出現した大型の異形。地面から上半身だけ出し、振り下ろせば巨大な凶器となる刃物腕が4本。その異形の黄色に輝く目は彼らを捕らえていた。ラキが青ざめた表情でしゃべる。

「どうするよ、クラスGでこっちはまともな装備ないのに!」
「ですが、退路が無い状況です。現状で交戦するしかありません」
「私も背を向けて終えるような無様な死に方はごめんだ。騎士道に反する」
「ええい!レート!近くにいるか!?レート!」
「通信範囲内に居ないようです」
「結局、時間稼ぎかよ!」

 異形は前側の左腕をゆっくりと上げた。それを見た3人は瞬時に散開する。

ズドォォォォォォォォォォン!!
「おわっ!」
「くっ!」
「!」

 彼らの居た場所に巨大な刃の切っ先が振り下ろされ、地面に大穴を開ける。相手に向かって前方に走るラキ。両手の『L.B.H』の銃口を異形の頭部に向かって乱射するが、表面が軽く削れる程度にしかならなかった。

「ちっ!ならっ!」

 小さいダメージにしかならないと判断した彼は、腰から灰色のスプレー缶のような手の平サイズの物を取り出す。片手でピンを抜くと異形に向って投げつけた。

チュドォォォォン!!

 投げつけたそれは異形の頭に当たる直前で爆発を起こす。彼が投げたのは破砕手榴弾と言われる携帯手投げ爆弾。

「やったか!?」

 ラキが期待しながら見ていると、煙の中から微量な亀裂しか入っていない異形の頭部が現れる。

「あ〜」
「破砕手榴弾では2ケタ以上の個数が必要かと・・・」
「あるのか?」
「そんなに持ってねえよ!って、あぶね!」

 ニールの質問を答えるラキに、異形は尖がった鼻づらで押しつぶそうと地面に頭突きをかます。慌てて後方へ振り向いて走るラキ。なんとか、ぎりぎり当たらずに逃げ切るも異形の起こした震動でふらつき倒れた。

「おうふっ!」

 顔面を強打し悶えるラキに異形が右腕を振り上げる。それを見たニールは剣の切っ先に紫に輝く光を収束させ、異形の右腕に向かって剣をスイングした。

「はあぁぁぁぁ!!」

 収束した光は振り飛ばされて、持ち上がった異形の右腕に命中。瞬時に爆発を起こし、狙いをラキから逸らす。見事に異形の刃の切っ先がラキから外れて地面に突き刺さった。

ズゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!
「ん?のおおお!?」
「ぼさっとするな!」
「してましたぁぁ!」

 自身の置かれた状況に気付き、後方へ下がるラキ。レックスは両手のプラズマバスターで応戦するも、有効なダメージが与えられないようだ。

「腕部及び身体全体がかなり強固な外殻の模様!」
「見れば解る!なら貫くべき場所は!?」

 ニールは当たり前のことだと言わんばかりに怒鳴るが、レックスは淡々と問いに答えた。

「現在、有効箇所を捜索中!」
「ニール、もう少し粘らねえと無理だ!」
「そのようだな!」

 3人が応戦しながら様子を伺っていると、異形の喉元が蠢きだした。それは何かを吐き出そうとする仕草で、異形は地面に向かって何かを吐き出す。粘液まみれで出てきたそれは見慣れた姿の異形であった。

「げっ!?」
「あれは!?」
「リッパー通常体を確認!さらに来ます!」

 レックスの警告通り、異形はさらに2体の小物を吐き出す。吐き出された異形たちは丸めた身体を解いて、それぞれ1体ずつ彼らの方へ走り向かう。しかし、これまでに同じ個体を倒してきた彼らの前では、単なる障害にしかならなかった。

「邪魔すな!」「邪魔だ!」「邪魔です!」

 一撃で仕留められ煙を上げて溶ける小物たち。巨大な異形は続けて腕による攻撃を繰り返す。難なくかわしていく3人。

「あ〜うざって〜!レックス!まだか!?」
「・・・・・・確認、刃物腕と上腕の間である関節部分に薄い膜を発見!外殻ほどの厚さは無い模様!」
「前と同じって訳か!」
「前と同じ?」
「前足を失くしてフルボッコにするのさ!」
「なるほど・・・」

 ラキの提案に納得するニール。なおも攻撃を避けながら反撃手順を話し合う3人。

「レックス!ロケット弾は!?」
「装填数含めて3発です!」
「同時に前方の両腕を壊さねえとな・・・」
「それなら奴の右腕は私にまかせろ!」
「ニール!やれるのか!?」
「大きめの魔力で吹き飛ばす!ただ、こちらも3回が限界だ!」
「ニール様、私と同時に!ラキ、相手の陽動を!」
「承知した!」
「行くぜええ!」

 ラキは正面に、レックスは異形の左腕に、ニールは右腕へと走り向かう。ラキを注視した異形は巨大な刃物腕を当てようと連続で振り下ろした。だが、的が小さく素早いため難なく避けられる。

 異形がラキに気を取られている隙に、レックスはロケット砲を左腕の関節を狙い、ニールは剣に紫色の光を収束させた。

「ニール様!」

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