<場所不明 森林地帯>
1人の青いバンダナを付けた黒服の男が、草木を掻き分けて進み歩く。とても人が通るような道でもない場所を歩いていた。
「はぁ・・・すっごい、山道だな」
しばらく進んでいると、平らで背の低い草しか生えていない広い場所に辿り着く。それを見た彼はあるモノに気付いた。所々に青色の水溜りが点々と置いてある。どう見ても不自然な光景に彼は警戒した。
「あれって・・・まさか・・・」
彼は近くの大木に隠れて、手頃な小石を1つ拾う。そして、隠れながら一番近い水溜りに向かって、小石を投げ当てた。
ボヨン
「・・・・・・?」
小石の当たった水溜りがいきなり蠢き、それは女性の形へと変わり始める。そう、水溜りの正体はスライム。しかも、この平原にある水溜り全部がそうらしい。黒服の彼は隠れながら見つめていると、先程起きたスライムは水溜りへと形を変えていった。
「何このファンタジーな自然トラップ・・・」
魔物自身の地雷を見抜いた彼は、この平原を避けるために右へと迂回し始める。目的のある場所はこの先らしいが、危険を避けるにはこうするしかないようだ。
(よし、いいぞ。このまま何事もなく・・・)
念のため、足もとを確認しながら彼は忍び足で歩く。ようやく平原を超えた辺りで後ろを振り返り、スライム達が起きていないか確認した。
(ばれて・・・ないな。よし!行く・・・)
ガサッ ドサッ!
歩き始めようと振り返って前を向いた瞬間、後方の左横に何かが落ちる音がした。彼はゆっくり頭だけ左横に回す。
「・・・」
「♪」
そこにはさっき見たスライムを赤くさせた粘液の女性が立っていた。
「こ、こんにちは・・・」
「こんにちは♪」
「では・・・」
「待ち・・・」
「ませええええん!」
彼女の言葉を聞かずに走り出す黒服の男。無論、赤い粘液の女性も追いかけるが、引きずるように動くため、追いつかなかった。
「ええい!あの幼女め!馬鹿隊長め!あのメガネめ!特攻野郎め!なんで俺がこんな目に!」
<数時間前 コウノ城 レシィの研究室>
コウノ城にある一室。此処はフラスコや試験管などの器具、書物や得体の知れない材料で溢れかえっている。そんな室内にレシィとドラグーン隊のイーグル、エスタ、ラキが話し合っていた。
「「「一夜消薬?(イチヤショウヤク)」」」
「うむ、そうじゃ。それがあれば、ブレードの傷はより早い日数で完治するぞ」
レシィの発言に目を丸くする3人。教会騎士の襲撃から後日、ニールから話を聞いたレシィが彼らを呼び寄せた。そして、集まった彼らにある薬について語り始める。
「重傷を負った者のために調合した傷薬でのぉ、それを服用すれば一夜で傷が完治するほど、自身の治癒能力を高められるぞ」
「すげぇ薬だな・・・けど、それより魔法とかで、ばぁっと出来ないのか?」
ラキの質問にレシィは顔をしかめる。
「確かに治癒魔法を使うのもよいが、使用者にも負担が掛かる。それでは効率が悪いから薬で対象者を癒す方がよかろう」
「確かに・・・その方がいいみたいだね」
「流石兄上は解ってくれとるのぉ」
「なるほど・・・・・・して、その薬は何処に?」
イーグルの質問にレシィは何も言わず、ある地図を取り出す。アイビスを中心とした地図らしく、数か所に目印が入れられている。
「実はのぉ、材料が特別ゆえに、今、手元には無いんじゃよ」
「ということは・・・材料を調達して作る必要があると?」
「そう、兄上の言う通りじゃ」
「んで、材料は何処にあんの?」
ラキがそういうとレシィは地図の2か所を指差した。
「2つの材料が必要じゃ。その内の1つが厄介でマタンゴの集落に行かないと手に入らん」
「「「マタンゴ?」」」
「キノコのような植物型の魔物娘じゃ。こやつらの胞子を吸えばたちまち淫乱になってしまう」
「す、すごいバイオウェポンだね・・・」
冷や汗を掻くエスタをよそに、イーグルが彼女に尋ねる。
「その集落にある素材は一体・・・」
「ヒカリマイタケと言われる成分を増強させるキノコがその集落近辺に生えておる。そこのマタンゴたちに聞けばすぐに手に入るが・・・」
「胞子が危ないね・・・」
「ほ、ほら、エスタの得意分野だろ?」
「そんなこと言うなら、ラキ。カナリヤ役で君に行かせようか?」
「マスク無しで行けってか!?冗談じゃない!」
「全く・・・レックスで取りに行かせれば済むことだろう!」
「そうじゃな」
イーグルに怒鳴られて萎縮する2人。レシィは続けてしゃべる。
「もう1つはある山の頂上の手前に生えとる草でのぉ。『妹瓜草』(イモカソウ)という赤い野花じゃ。これは希少なうえ、魔物たちのテリトリーに生えておる」
「入手可能か?」
「この地図で示
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