好物に誘われし者達

 砂漠の空に黒い影が二つ。その形は異様であった。翼の生えた人影が足でもう一つの人影を掴んでいるような姿。

「ひぃぃぃやっほおぉぉぉぉぉ!!自分自身で空飛んでるみたいだぜ!」
「・・・相変わらずやかましい奴め」

 掴まれている人物はドラグーン隊の対照コンビ、ラキとブレードだ。彼らを掴んで飛行しているのは、ニールの部下であるブラックハーピーのローラと同じくモコンの二人である。

「あの〜あまり激しく動くと落ちますよ」
「・・・構わん。落としたら放っておけ」

 ラキを掴んでいるモコンに向かって、ブレードは非情な指示をする。それを聞いたラキは彼に対して怒った。

「ブレード、俺を見捨てる気か!?」
「あなた酷い事言うのねぇ」
「・・・・・・見えてきたぞ」

 ブレードの言葉に反応して前方に目をやると、遠くではあるが街が見えてきた。

「あれが今回の目的地だな」
「ええ、商業都市クロツラよ。貿易都市だけど、治安はよくないわ」
「ならず者や反魔物思想の方も居ますのでご注意を」
「・・・この辺でいい。下ろしてくれ」
「ちょ、ブレード!」

 ブレードの発言に驚く3人。彼を掴んでいるローラが尋ねた。

「まだ、限界点まで行ってないが?」
「ここでいいんですか?」
「・・・構わん。後は歩く」

 ブレードの指示で急降下して地上に降り立つ4人。調査後の集合に関して話し合う。

「君らは何処で休むの?」
「この近くに普通の人では発見できない隠れオアシスがある。そこからでも街は見えるから問題ない」
「・・・なら帰りは、この辺りまで戻って来て照明弾を撃って合図をする」
「ショウメイダン?そ、それって何ですか?」

 聞きなれない単語にモコンが質問した。ラキは彼女たちにも解るように説明する。

「ん〜簡単に言えば上空に光る球体を撃ち上げるから、それを見たら来てくれ」
「・・・念のため、二発撃つからそれを目印にしてくれ」
「分かったわ」
「それじゃあ、ご武運を」

 彼女らは話を終えると上空へと飛び去って行った。見送ると同時に二人も街に向かって歩き出す。

「商業都市ってことは、あの市場より賑やかなのかな?」
「・・・下らん輩も居るらしいな・・・絡まれるなよ」
「こっちのセリフでもあるぞ」


<3時間前 戦艦クリプト 司令室>

「・・・ドクター、その商業都市で昨日と同じことをするのか?」
「そう思ってレシィと相談したのだけど・・・」
「安心せい。そこには隠しギルドがあってのぉ。そこから情報を得たほうが効率よいじゃろ」
「か、隠しギルド?」

 その言葉に反応したのはラキだけではなかった。

「・・・隠す必要があるほど、何か危険性があるのか?」
「左様、この街は反魔物領ではないが、魔物でも歩きにくい場所でもある。じゃが、ここでしか輸入されない品物や情報があるので、その収集として諜報的なギルドを潜伏させとる」
「・・・敵対勢力の情報も入るという訳か」
「鋭いのぉ。お主の言う通りじゃ。街の中の探索もよいが、ぬしらは異世界人。それだけでも目立つのは目に見えておる。向こうとはすでに連絡済みじゃ。そこで情報を得るがよかろう」
「それで、そのギルドは何処に行けばあるんだ?」

 ラキがレシィに尋ねると、彼女は腰のポーチから鉄製の手の平サイズの棒を取り出し、二人に渡した。布で継ぎ目が包まれて、さらに細い糸でぐるぐる巻きにされている。

「・・・?」
「何これ?」
「それがあれば、向こうから迎えに来てくれるぞ。お主らの特徴は予め伝えておるから、必ずそれを持っておけ」
「・・・目印か」
「なんか入ってるの?」
「ぬふふふふ、聞きたいか?」
「し、知らぬが仏にしておきます」
「つまらんのぉ・・・あ、別に見えない所に入れても大丈夫じゃ。ただし、絶対に割らんようにな」
(やっぱ気になる・・・)

 二人は不振になりながらも鉄の棒をジャケットの内ポケットにしまい、朝飯の卵焼きを食べ始める。

「兄上、この卵焼きは?」
「レックスが用意してくれた朝飯だけど?」
「「美味しいぞ〜」」
「頂きなのじゃ!むう!美味!」

 匂いに我慢できず、レシィはエスタの皿に半分残っていた卵焼きを素早く頬張った。

「あ、レシィ!僕の食べかけを・・・そう言えばレックス。これ、やけに新鮮だけど、まさか貰って来たの?」
「先日、コカトリスという種族の女性から、産みたての卵を譲り受けました。その人自身が産んだ卵らしいです」
「「「「「「え゛!?」」」」」」
「コ、コカトリスの卵じゃと!?」

 その場に居た6人とレシィが驚愕する。

「・・・魔物種族が産んだ卵」
「彼女曰く、無精卵らしいので滅菌加工をして調理致しました」
「お、お主、どうやって、そやつから入手したのじゃ?ハーピー種の卵なぞ、普通手に入
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