ブレードの徘徊

<戦艦クリプト 訓練室 試合場>

 午前6時。訓練場にて一人の男性が腕立てをしていた。

「・・・87、88、89」

 ブレードは毎朝、トレーニングを欠かさず、自身を鍛えることに集中していた。
 来るべき戦闘に備えて。

「・・・97、98、99、100」

 腕立てを終え、肩をほぐしているとエスタから通信が入る。

『朝のラジオ体操でもしてる?ブレード』
「・・・ただのストレッチ。何の用だ?」
『さっき、隊長からの指示で今日は自由に行動していいって』
「・・・ふん、なら好きにさせて貰う」
『ちなみに出来る限り情報収集して来い、とも言ってたからサボらないでね』
「・・・・・・・・・了解」

 通信を切り、不機嫌になるブレード。

(・・・変な命令だ・・・休憩しながら仕事しろと言っているようなもの・・・)

 無言である武器を手に取る。

『RAY.STUN.ROD』

 通称『RAY.S.R』 本来は暴徒鎮圧用に開発された物で生命体に対し、強力な麻痺性の電撃を帯びた実体光学刃を照射。斬撃性能は全く無いが、模擬戦や対人戦などで使用されることが多い。見た目や稼働時間は『RAY.EDGE』と変わっていないが、光学刃は黄色。各隊員に最低1本を所持することが義務付けられている。

 右手に『RAY.S.R』を持ち、剣舞のような動きで素振りするブレード。途中で、指の間に3本挟んだ片手で3刀斬りを繰り出すなど技の鍛錬も行う。

 ブレードが好んで使用する技の一つでこの3刀斬りは攻撃力が高いが、消費エネルギーも多い。そのため、一瞬で展開する技術が必要とされる。

 続けて左右に一本ずつ『RAY.S.R』持っての二刀流や連携技の中に『L.B.H』の抜刀斬りも入れて自己鍛錬を行った。

 しばらく経って、ある程度の訓練を終えた彼は自身の個室に戻り、シャワーを浴びる。

「・・・」

 熱湯の飛沫を浴びながら自分の身体を見る。身体のあちこちに古い切り傷があった。汗を流し落とした後、身体を拭いて再び服を着る。

(・・・不本意だが・・・行くしかあるまい)

 エスタから告げられた情報収集しながらの自由行動。不満になりながらも彼は戦艦から降りて街へ向かった。街に入る途中で、上空に2台のスカイチェイサーが飛んで行くのを目撃する。

(・・・双子も動いたか)


<都市アイビス 北エリア>

 都市の北に位置する場所。此処は市場が賑わっていて、朝早くも住民たちが行き交っていた。ブレードは人や魔物とすれ違いながら歩き回る。

(・・・面倒な場所だ)

 早くも断念し、中央広場に向かう。すると、彼の前に緑の鱗を持つ女性が立ちはだかった。手足は鱗に覆われ、腰の後ろには緑色の尻尾が付いている。

「・・・ん?」
「貴様、戦士だな?」
「・・・何?」
「見た目より目で解る。私と勝負しろ!」
「・・・は?」

 突然、彼女はブレードを戦士と決めつけて腰からショートソードを抜き、彼に突き付ける。

「・・・意味が分からん。遊びなら他とやれ」
「遊びではない!これは真剣勝負だ!覚悟!」

 そう宣言した彼女は言い終わると同時にブレードに斬り掛かる。だが、彼は難なく右に避け、右手だけで彼女の背中を軽く押した。

「え!?きゃん!!」

 彼女はバランスを崩し、顔面から地面に激突する。そのまま気絶して起き上がらなくなった。周りにいた人達は一部始終を見て拍手する。

「・・・ふぅ、何だこいつは?」
「お前なかなかやるな!今度はアタイだ!」
「・・・またか」

 次に話し掛けてきたのは褐色の肌と紫色の長髪の女性だ。背中には背丈と同じくらいの両刃剣を背負っている。

「アタイは誇り高きアマゾネズの戦士ケイ!お前の番となりし者!異論があるなら己の武器で挑んで来い!」
「・・・結構だ」
「なら、大人しくアタイの夫になれ!」

 彼女は巨大な剣を両手で持ち、彼に向かって振り下ろす。今度は左に避けるも彼女が横薙ぎで襲い掛かり、彼はしゃがみ避けた後、バク転で距離を置いた。

「やるじゃないか」
「・・・本当に訳が解らん」

 無視して後ろを向いて立ち去ろうとするブレード。そんな彼に彼女はお構いなしで襲い掛かる。

「後ろ見せるとは・・・」
「・・・愚かではない」

 ブレードはすでに彼女の行動を読み、そのままの体勢で逆手に持った右手の『RAY.S.R』で彼女の剣を止めた。

「なっ!?」
「・・・ふっ!」

 彼女の腹目掛けて強烈な右後ろ蹴りを繰り出す。まともに受けた彼女は吹き飛ばされ、地面に転がり倒れた。歓声が上がり、周りは慌ただしくなる。

 邪魔者が居なくなったことを確認すると彼はその場から立ち去ろうとした。2、3歩歩くと彼の目の前に先程気絶した鱗の女性が現れる。

「私の目に狂い
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