「ふざけないでください!」
部屋の中に怒号が響き渡る。
「ふざけてなどいない!私は本気だ!」
「何が本気ですか!どこの世界に夫となる者を見つけたから重職やめて旅に出る人がいるんです!」
「ここにいる!」
溜まっていた書類に目を通しながら接近戦統括部長のスギロスと口論を繰り広げていく。
「とにかく!僕はみとめ・・・。」
「ここ数字違うぞ。」
「あっ、また会計係の奴ミスしたな!って人の話を聞いて下さい!とにかく僕は認めませんからね!」
「お前に認められなくても書類は通るさ。それとも、意地を通すために旦那様を倒してみるか?あの人に勝てたら書類は破棄してやろう。」
「今の言葉本当ですね?」
「嘘は言わないさ。私に一度も勝ててないおまえがあの人に勝てるとは思えんがな。」
「見ていてくださいよ!勝ってみせますから!」
そういってスギロスは部屋の扉を乱暴に閉めて出ていった。
「やれやれ、子供だな奴も・・・。おっと旦那様に話しておかないと・・・。」
引き受けてくれるか分らないが話て置かないとなと思いつつ、書類の処理に戻る。
全ての仕事が終わったのは日が落ち夜になってからで重い足取りで自分の部屋へと帰っていく。
部屋に戻る途中、ふと思う。
旦那様は引き受けてくれないのではないのかと、自分を厄介払い出来て丁度良いのではないのかと、不安を抱えつつ部屋に入り待ってくれていた旦那様に事情を話す。
「ん?いいよ。スギロスって人と手合わせして勝てばいいんだろ?」
「そうなんだが・・・、いいのか?」
「なんで?スパスィはここに残りたいのか?」
「嫌だ!旦那様と旅がしたい!」
「だったらいいじゃないか。それとも見限って置いていかれると思ったかい?」
「それは・・・。」
「俺達仲間だろ?もう少し信用しろよ。」
「旦那様・・・。」
感極まり、旦那様に抱きついてキスをしようとしたが待っていたのは唇ではなく手のひらだった。
「・・・。だから大人のお楽しみ的な事は期待するなって。」
「つい・・・。」
手を除けてもらい、旦那様を休憩してもらうための部屋に案内する。
本当は一緒に居たかったが旦那様に遠慮されてしまった。
案内が終わった後、扉を背にして唇に残っている旦那様の手の感触を思い出し体が震える。
きちんと抱いてもらえるまで私は耐えれるのだろうか・・・。
旦那様とスギロスが私を賭けて決闘する。という飛躍した話が署内に拡がっていた。
手合わせする修錬場では休みの連中が観戦にきている。
「どうしてこうなった。」
「お祭り騒ぎだな・・・。」
旦那様の介添えとして隣にいて助言するのだが・・・。
「あいつ、いつの間に武器を重剣に変えたんだ?」
私が旅に出る前のスギロスはロングソード主体の手数を重視する奴だったのだが。
今は身長の2倍はある得物を易々と振り回して身体を解している。
「武器に振り回されてないね。彼、相当努力したんじゃないか?」
そうだろ、私が旅に出たのが三月前。
その三月であれだけ使えれば実戦でもある程度使えるだろう。
「両者中央へ!」
審判を務める者の号令で二人は修練場の中央へ歩み寄る。
「旦那様!」
「大丈夫、自分を負かした者を信じなさいって。」
私の頭を撫でて、旦那様は離れていく。
その後ろ姿をただ見守ることしかできなかった。
中央まで歩み、対峙する両者。
何か話しているようだ。
「お前だな!総隊長を誑かした奴は!」
「誑かすって、スパスィから手合わせを申し込んで俺が勝っただけだぞ?」
「嘘だ!手合わせを申し込まれたのはわかるが、お前のような奴が勝てるはずがない!何か卑怯な手を使ったんだろう!そうだろう!」
「おいおい、なんでそこまでしなければいけないんだよ。」
「総隊長は綺麗で強く、皆の憧れなんだ!そこまでやるだろう!それにお前さえ現れなければ僕の重剣で総隊長を・・・。」
「負かして結婚できていたのに!ってか?嫉妬かよ。おい、ガキ。男の嫉妬ってのは見苦しいぞ?」
よく聞こえないが旦那様がスギロスを怒らせたらしい。審判にたしなめられ事はおさまり手合わせへと移っていく。
「これよりエルフィール対スギロスの手合わせを行う。では、両者とも用意はいいな?」
「大丈夫だ。」
「準備いいぞ。」
「では、初め!」
合図とともにスギロスが斬り込んでいった。
「うぁー!」
刃を平行にして薙ぎ払い、範囲の広い斬撃を放つ。
「よっ。」
旦那様は剣を出す隙もなく後ろへ大きく飛び退き、斬撃をかわす。
「おおっ!!」
観戦してる
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4 5 6 7]
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録