俺が教会で厄介になって数日が経過したある日、子供達に美味い物を振舞おうと狩りに出ていた。
なぜか子供達も数人ついてきている。
まあ、これ位なら何に襲われても守れる訳なんだが・・・。
「エル兄ちゃん、これ重たいよー。」
数羽に鳥の入った籠を背中に背負った男の子が弱音を吐く。
「ミュール、もうちょっとだから頑張れ。」
ミュールはここ数日で俺にべったり懐いてきた子だ。
どこへ行くにも後ろをついてきて可愛いのだが・・・。
「こら、ミュール!エル兄ちゃんを困らせたらダメでしょ!」
他の子からも慕われているので俺にミュールがくっつきすぎるとあまり面白くないらしい。
「喧嘩するなよー。御飯が食べられなくなるぞー。」
「だってぇー。」
子供達に注意をし、帰り道を歩いていると森の出口に教団の印をつけた複数の騎士が立っている。
それを目にすると隠れるように子供達は俺の後ろへと回った。
近づいているのに気づいたのか、一人の騎士がこちらへとやってくる。
「ミュール、悪い。これ持ってちょっと離れてな。」
「うん。」
背負っていた籠をミュールに預けて近づいてきた騎士と対峙すると空気が変わっていく。
「貴様なぜ魔物と共にいる?どれだけ危険なことか分かっているのか!」
「危険?少なくともお前らといるよりは安全だろ?」
俺の言葉にムッときたのか、後ろで待機していた仲間を呼び後ろ盾を作って口撃してきた。
こいつら群れないと何もできないのか?
「こいつ、我々より魔物と一緒の方が安全だと言ったぞ!」
「なんと無礼な!人々の平和を守る我々より不浄な魔物と一緒の方が安全だと?貴様・・・、魔物の手先だな!」
「貴様の邪悪に染まったその心!神の名において浄化してやろう!」
「嫌だねぇ。誰これ見境なしで襲いかかってくる奴は。人として無礼だね。」
「何を!!」
頭に血が昇った一人が斬りかかってくる。
だが、奴が振り上げた剣は俺に落ちてこない。
ズシャッと土に何かが減り込む音だけが鳴った。
それは地面に膝をつけた音、斬りかかってきた騎士が倒れ込んだ音。
「き、貴様!何をやった!」
状況が把握できないのか、俺に何が起こったかを聞いてくる。
普通、敵に何が起こったかなんて聞いてくるか?
「さあね?知りたければかかってこいよ。」
答えてやる義理もないので、そのままそれを挑発へと利用して相手の怒りと闘争心を煽っていく。
「ふ、複数だ!複数でかかるぞ!陣形を組め!」
「まあ、戦術としたら間違いじゃないが・・・。」
腰を低くして俺は陣形を組んでいる真っ只中へ突っ込んでいき、途中伸びている奴の手から剣を拝借して更に速度を上げる。
遠心力と筋力を最大限にまで活用して、剣の側面で一人の頭を兜ごと思いっきり引っ叩き、ついでに回し蹴りでもう一人の腹部を鎧ごと蹴り上げた。
「ごふっ・・・。」
「がはぁ・・・。」
「使いどころを間違っている・・・。」
「き、貴様!」
陣形の先頭と右翼の騎士が崩れ落ち、憤りと混乱で冷静さを無くした二人が体勢の悪い状態、片足で立ち両手、片足を伸ばしきった俺に斬りかかってくる。
「おっと、これはまずいか?」
と、対して焦るわけでもなく体勢を戻していく。
「もらった!」
振り上げ、降ろすまでの数秒。
腕を収縮させ、伸ばしきるまでの数秒。
二人の剣が加速に乗ろうとした時、突風が彼らの兜の中へ侵入し見開ききった目玉に吹きかかった。
「ぐはぁ!なんだ!?目が!」
「まあ、いくら鍛えた者でも目に異物が入れば一瞬でも怯むだろ?風だけにしといてやったんだから感謝しろよ。」
「なに!?」
体勢を戻し終え、まだ兜の眼部を手で押さえている二人の鳩尾を蹴りあげて気絶させ戦闘を終わらせる。
「さて、こんなもんか。久しぶりの実戦だしこれだけできれば上出来か。」
軽く動いただけだが勘が戻っていくのが実感できた。
「エル兄ちゃーん!」
「おう、無事だったか?」
「うん!エル兄ちゃん凄いね!」
「まだまだ、世の中上には上がいるもんさ。ところで、誰が縄持ってたっけ?」
「私だよ!でも、どうするの?」
「こうするのさ。」
気絶させた騎士達五人の身ぐるみを剥がし肌着と下着だけにして手と足を縄で縛りあげていく。
「この人達って教団の人だよね?大丈夫なの?」
「おいおい、俺達は命狙われたんだぞ?これ位しても罰は当たらないさ。それに・・・。」
親指を立てて茂みの方を指す。
そこには角やら触角やらがちらほら見えていた。
「あーぁ。」
子供達全員が何か
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