−第7話 渚の魚少女−
アペルスピィアとの戦いの中、傷ついた心と身体を癒す為。
紅玉 潮音(こうぎょく しおね)と紅玉 汐稟(せきりん)の姉妹は南の島にバカンスに来ていた。
「最近、アペルスピィアが活発に動いてるわね。」
「そうですねお姉さま。でもアペルスピィア、七傑衆の一人。岩土のテールを倒したのですからしばらくは大人しくしてるはずですわ。」
ビーチチェアに寝転がり、日陰の中から吹き込んでくる潮風を浴び。
海を眺めてバカンス気分を味わっていると。
「お嬢様。ブラッディーリリスをお持ちしました。」
執事の恰好をした男が二人に飲み物を運んできた。
「ありがとう清助。」
「清助さん。貴方も水着に着替えてもいいですよ?」
「いえ、お仕えしている身でそのような格好にはなれません。お傍にいますので御用があればなんなりとお申し付けください。」
「固いわねぇ。」
「そこがいいのではないですかお姉さま。」
一礼して彼女達の後ろへ下がる清助。彼は紅玉姉妹に仕えている執事。
二人にもっとも信頼されている男だ。
「それにしても気持ちいいわね。」
「ですわねぇ。これで日の下に出て海で泳げたらもっと気持ちいいんでしょうね。」
視線の先にいる海水浴を楽しんでいる者や日を浴びて身を焼いている者。
それを羨む目で汐稟は見ていた。
彼女達はヴァンパイアと呼ばれる種族で日の光を浴びると力が普通の少女並に落ち。
水に触れると発情してしまう特徴がある。
「この種族に生まれてしまった宿命ね。潮風に当たれるだけマシと考えましょ。」
「そうですわね。」
冷たいブラッディリリスを手に取り口に付けながら自分達なりのバカンスを楽しんでいく二人。
流れる潮の音と優しい風が彼女達を包み。
戦いでの疲れがたまっていたのか気がつくと眠っていたようで沈みゆく西日の光が潮音を深い闇から目覚めさせる。
「んぅ・・・。眠っていた様ね。これはタオルケット・・・、清助がかけてくれたのかしら?」
「すぅ・・・。すぅ・・・。」
「あら?汐稟はまだ寝ているのね。軽くかけてあるとはいえ、そろそろ西日でも浴び続けるのはまずいわ。ほら、汐稟。起きなさい。」
「駄目ですよ清助さん。そんな所触ったら・・・ムニュムニュ。」
どの様な夢を見ているのか、ヴァンパイアとは思えない顔で寝言を漏らして口から涎を垂らしている。
「夢の中とはいえ清助を一人占めするなんて・・・。汐稟!起きなさい!」
肩を掴み激しく揺らすと同時に海の方で爆発音が鳴り響き。
そちらの方から悲鳴が耳に届く。
「なに!?」
「きゃっ!?」
浜辺の方から逃げてくる人々と魔物娘達。
何事かと思って潮音が見ていると。
「た、大変です。アペルスピィアが海に現れたようです!」
テラスへと清助が緊急事態を知らせるように飛び込んできた。
「何ですって!?」
「えっ、えっ、えっ!?どうしたのですか!?」
事態が呑み込めている潮音と寝起きで何が起きているかわからない汐稟。
そして服をはだけうなじを出す清助。
「変身するわよ!」
「なんだかわかりませんが、わかりました!」
彼の元に近づくと左右からうなじへと噛みつく美女二人。
血を啜られ、苦悶の声を一つ漏らすと清助の身体から真っ赤な血の様な色をした布と漆黒を写し取った様な色をした布が潮音と汐稟を包み込む。
纏った布はマントとなり、そこから手足に紅黒い光が差し込むと。
手にはドレスミトン、足にはロングブーツが装着され。
更にマントの止め具から潮音には紅、汐稟には黒の布が放出されて身体を覆うとタキシードとスパッツが形成されて全ての衣裳が身を包み終わる頃、腰回りからフリル付きのショートスカートが現れて変身が完了する。
「心に刻む 血の躍動・・・!キュラルージュ!」
「心に刻む 深淵の闇・・・!キュラノワール!」
『ブラッド プリキュラ!』
「行ってくるわ清助!」
「あっ、待ってお姉さま!」
テラスから勢いよく飛びあがり、マントを翼のように使い爆音があった場所を探す。
すると、海の方から高速で接近してくるものが目に付き。
間一髪のところでそれを避けると、後方の森林で爆音が響いた。
「な、なんなのよ。あれは・・・。」
「まだきますわ!」
時間を置かずに放たれてくるもの。
それは人一人収まるぐらい大きな水球で、着弾したところで激しく弾けるので爆発したような音が鳴ったのだろう。
「み、水ぅ!?」
「当たるとワタクシ達はまずいですわ。」
「そうね。なら一気に相手のところまでいきましょ!」
「ええ!
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