第十一章 折れた心、折れた誇り 前編

 *諸注意*
 
 *第十一章には暴力、強姦、
  貴方様の嫁かもしれない魔物娘が酷い事になる表現が含まれております。
  御読みになる際はその事を重々承知のうえ、先の文へと御進みください  *
 

 *作者、朱色の羽からの注意事項でした。*




 「熱い・・・。ワタクシを追い詰める手段にしても酷い事を平気でしますわね。」

 紅蓮の明かりが肌を照らし、熱風を常時浴びているために汗が滝の様に流れていく。
 次々と紅く染まる木々、燃え移っていく炎から逃げるべく森林の奥へ奥へと走って行った。
 なんでワタクシがこんな目に合わなければならないの。
 ことの発端は、アグノスの大森林に薬草を採りに来たこと?
 いえ、違うわ。
 必要数見つけられずに陽が落ちる頃まで長居したこと?
 これも違う。
 大森林から出た直後に運悪く盗賊に出会ってしまったこと・・・。
 これが一番の理由になるわね。
 しかも彼等はこの辺りで名を轟かせている¨消えない炎¨と呼ばれる集団と構成や特徴が似ていた。
 ワタクシは盗賊が行動を起こす前に踵を返して今まで居た森の中へと逃げて行きましたわ。
 街で見た注意書きが確かならば彼等は全員淫魔化はした人間のはず。
 捕まれば待っているのは絶望しかない。
 足には自信がある。
 いくら淫魔化していても追いつけないだろうと思っていると、赤い塊が側を駆け抜け近くの木に当たり。
 そこから紅蓮へと枝や葉、地面の草を染めていきワタクシの逃亡も始まった。

 炎に身を焦がしたくなく盗賊達の手に落ちるわけにもいかない。
 必死になって逃げていると願っても見ない事が起こる。

 「水滴?これは雨なのかしら・・・。」

 一つもそんな素振りを見せなかった空から落ちてきた大量の水。
 それはワタクシにとって好機を作ってくれる以外の何者でもなかったから。

 「助かりましたわ。これで火は消えて、熱で火照った身体も冷めますわね。」

 さらに雨は地面を濡らし走った軌跡も消して、臭いや音による追跡も不可能としてくれる。
 視界も悪くなるので彼等も追跡を諦めてくれるだろう。
 木蔭へと入り、この雨をやり過ごした後。
 家に帰ろうとするが問題が出てきた。

 「これは・・・。まずいですわね。」

 やみくもに走った事と炎の明かりがない事、そして大量に降った雨のせいで方向感覚が狂ってしまっていたのだ。
 広大なアグノスの中で食糧もなく方角も分からないのでは帰るどころか遭難する可能性も出てくる。
 無暗に動くのは得策ではないと思い、その場にとどまり夜を明かすことにした。
 陽が昇り始めても寝ることができず、不安と濡れた身体を震わせながらその場を後にし、大森林を出るために歩きだす。
 入ってきた方角を陽を見ながら確認をして、東へと進んでいく。
 どれぐらい足を動かしただろうか。
 そんなに深くは入った訳ではないのに・・・。
 道は、方角は合っている。
 だが、大森林の外へと辿りつかない。
 日が沈み、方角を曇らせる夜がまたやってきた。
 段々と視界は霞み、頭の中はぼやけ、身体は重く力が入らなくなってくる。
 どうやら体力を消費したところに雨で身体を冷やしたため、体調を崩してしまったようだ。
 朝となり、また出口を目指して歩き始めていく。
 空腹、疲労、崩した体調、全てがのしかかりふらふらになりながらもようやく明るい開けた場所に出ると。
 そこには焼け焦げた木々と黒い大地が昨日の惨状を物語るかのように広がっていた。

 「こ、こんなにも広く焼かれていたんですの・・・。」

 自分が逃げなければ失われなかった命。
 でも、ワタクシ自身自分は可愛い・・・。
 心の中で葛藤しながらこの光景を見ているとある事に気が付く。

 「焼かれた木々を辿れば出口近くまでいけるんではないかしら?」

 見捨ててまで拾った命。
 まずは無事に帰ることを、と思い黒い道しるべに従って歩いていき出口を目指す。
 重い身体を動かし、なんとか出口付近へとたどり着いたのだが。

 「ここで焼け跡は終わり・・・、出口は・・・。ああっ・・・。」

 「ねぇちゃん探したぜぇ?」

 そこには絶望が待っていた。

 「俺達から逃げれると思っていたのかぁ?」

 勝手に追うのを諦めていたと思っていた彼等が、¨消えない炎¨の男達がそこにはいたのだ。
 再び踵を返して逃げるが力が入らず思ったように速度が出ない。
 すぐ傍にある燃えていない生木が生い茂る中へと入り視界の悪さで速度を補っていこうとしたが。

 「おっと、こっちは行き止まりだぜ?」

 「どっちへ行く?逃げないと捕まえちまうぞ?」

 行く先々に彼等は待ち伏せしており、自分の考えが甘かったと思い知る。
 そして、逃げる事の出来る範囲を少し
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