「ハラの元へ向かえるのはエルフィールだけだからな。」
朝食をとっている時に昨日の騒動で言い忘れていた事を皆に伝える。
納得した顔の三人と別の事を考えている一人がこちらを見てうなずく。
「守り樹だから誰これ構わず連れていける訳じゃないんだな。」
「なら私達はここで待ってればいいのか。」
「そういうことになる。」
「それならミラとエルがまた二人っきりなのね。羨ましいわ。」
「アルヒミア、別に遊びに行くわけじゃないんだよ?」
「そうだぞ。まったくドワーフはこれだから・・・。」
「ふぉふぉふぉ、若いのう御主らは。」
こんなに騒がしい朝食は始めてだ。
エルフとしてこれはあまり喜ばしくない状態なのだが、私はこの騒がしさを楽しいと感じ始めていた。
そして誰も咎めることなく朝食の時間は過ぎていく。
「この集落に男性エルフが多いのはハラの加護があるからじゃな。」
「加護?」
「そうじゃ、卵の殻の様な加護じゃが。それが女性化を防いでおるんじゃ。」
「なるほど、それで男性が多かったのか。」
「納得いったわ。」
食事も終わり、私とエルフィールが出かける準備をしていると長老とアルヒミア達がお茶を飲みながら話をしている。
「いいんですかお爺様。簡単に守り樹の事を話したりして。」
「大したことじゃないだろう。構わんよ。」
「ミラ、準備ができたぞ。」
長老がいとも簡単に守り樹のことを話しているので懸念を訴えていると、彼の支度が整ったようだ。
「お爺様がそう判断するのでしたらいいですが・・・。」
構わないというのならいいのだが、長老といえどエルフの秘密を口軽く話して欲しくないのだがな。
「わかったエルフィール。では、お爺様行ってまいります。」
「気を付けての。」
「いってらっしゃい。旦那様。」
「気を付けてね。エルさん。」
「いいわねぇ。やっぱり羨ましいわ。」
「まだ言ってる。」
アルヒミアの言葉を無視して、私は彼を連れてハラへと向かうため集落を後にした。
出発して北西へと進んでいき、森の中を歩いていく。
その中でリガスとアルヒミアの言葉を思い出し、エルフィールを変に意識してしまう。
エルフが人間に惹かれるなんて、あってはならないことなんだと自分に言い聞かせるがどうしても頭から離れない。
否定と理想が入り乱れボーッと考えながら歩いていると、私の肩に彼の手が乗り軽く叩かれた。
「ミラ。ミラ!」
「ひゃい!?ど、ど、ど、どうしたんだ!?エルフィール!」
「ボーッとして歩いているが方角は合っているのか?」
「ほ、方角は大丈夫だ!大丈夫だ!」
急に触れられ、心拍数が上がり顔も紅くなる。
どうしてしまったんだ私は・・・。
こんな恥ずかしい状態であることを気付かれたくない一心で歩測も速くなっていき。
いつのまにか結構な速度でハラへと向かっていっていた。
日が真上に昇るころ、ようやくハラのいる所へ辿り着き私は辺りを見渡す。
広場になっているわけでもなく生い茂る樹が多く、周りを取り囲むわけでもない。
他の樹よりも太い幹を持つ樹、それを見つけて目の前に立つ。
「それがハラ・・・。」
「ああ、祀られてるわけでもなく特別な状態にもなっておらず。だがこの樹がアグノスの大森林の中核であることは間違いない。では、ハラを呼び覚ますぞ?」
「頼む。」
一呼吸をして心を落ち着かせて、幹に触れてハラに語りかける。
「−・・・ ・・・ −− −−・−・・・ −・・−− ・−・−・ −−−・− ・− ・−・ −・・ −・・ −・−−− ・・−・− −− −・・・− −・−・−・・ −・・・− −・ −・・− −・−−−。『はらよ じゆんすいな ほほえみよ めざたまえ。』」
すると巨木が淡く光り輝き脈を打つ音が木魂し鳴り響く。
「さあ、後はエルフィール次第だ。」
「ありがとう、ミラ。」
辺りに響いた脈打つ音が消えると木々の枝が揺れるようにその音が声となって聞こえてきた。
「久しき目覚め、起こしたのはそなたか?」
「はい、私が目覚めさせました。」
緊張が走る、一言一言を選びハラと話す。
「ふむ、エルフの子よ。何用ぞ?」
「私ではなく、用があるのはこの男です。」
「・・・エルフが人間を連れてきたか。珍しいこともあるものだ。して、御主・・・。何用ぞ?」
「貴殿の一枝をいただきたい。」
「一枝をか・・・。久方の目覚めで欲されたのが一枝とは、拍子抜けだの。」
「それをいただくのが目的なので。」
「よかろう。昨晩の礼もあるからのう。持っていくがよい。」
何かが断たれるような音が
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