ある朝、マイは暖かな感触を蛇体に感じつつも困っていた。
カザミがマイの蛇体を枕にし幸せそうな寝顔で眠っているからだ。
ずっとこのまま寝顔を見ていたい、そんな感情に駆られるマイ。
しかし今日は始業式、そうでなくとも遅刻する訳にはいかない。
「起きて、カザミ君」
マイはペチペチとカザミのほっぺを叩く、すると彼はそのまま蛇体に顔を擦り付けゆっくりと目を開く。
「ん、マイさんおはよう……」
寝ぼけ眼のカザミ、そんな彼の二度寝を防ぐためマイはカザミの頬っぺたを掴み口づけを交わした。
少々強引かもしれない熱烈なキスでカザミは一瞬で覚醒する。
「おはようカザミ君、もしかして今のでスイッチ入っちゃった?」
一瞬何を言ってるのか理解できなかったカザミ、しかし自分の股間部にテントを張っている事に気づき事情をマイに説明する。
「これは朝勃ちだよ、男はそうなるんだ ……あれ?」
「……しよ?」
「待って待ってこの状態で弄ると、わーっ」
しかし無情にも苦悶に似た嬌声が朝から響き渡った。
「もー、トイレ我慢しながらエッチするの本当辛いんだからさ」
「ごめんね、次からは一緒にトイレ行こ?」
そういう問題なのかは一旦置いといて。
結局朝の支度という名目でドロドロになることには変わりないのだった。
所変わって今日から通うこととなった高校のグラウンド。
日が長くなりつつあるポカポカ陽気の始業式。
周囲の先生や生徒達の大半は魔物娘である。
今演説している校長先生もまた龍と呼ばれる魔物娘だ。
魔界の学校だからといえば当然ではあるけれどもカザミにとっては女子校に混ざってしまった様な感覚も隠し切れない。
「……」
カザミは唯一彼の事を知っている存在であろうマイに目をやるといつもの明るさを隠し真剣な表情で校長先生の話を聞く姿があった。
「……?」
そんな様子に不思議そうになるが始業式の真っ最中であることを思い出し校長の方へと慌てて顔を向ける。
「……なので皆高校生活を頑張って楽しんでくださいね」
長い校長の話が終わるとそのままひゅるりら〜と言わんばかりに校舎へと飛んで行った。
その瞬間『やっと終わった〜』『校長の話長すぎ〜』と多数いる魔物娘の生徒達から安堵の言葉が飛び交う。
「はー疲れた、カザミ君もお疲れー」
当然マイにとっても長話を聞くのは苦行、疲れがどっと出たことを表すため息を盛大に吐き出す。
「お疲れ、でも何で真顔で聞いてたの?」
「だってシズク校長怒らせると怖いから」
「えっ、あんなに明るく優しそうなのに??」
「そ、そのうち分かるよ、多分きっと恐らく……」
何だかマイとシズク校長の間に何か過去があるのだろうか、カザミには分からないことが多すぎて首をかしげる事しかできない状況のまま二人は教室へと向かった。
「ねーねー、あなたはどんな男の子が好みなの?」「私は明るくて優しい人がいいなー」「やっぱ『固い、強い、おそい!』でしょ?」
「「「ねー!」」」
早速始まる女子会、男女共学とはいえこのクラスに在籍している男子は見た感じカザミだけ。
どうしても慣れない男女比の中、威厳のある一人のドラゴンが閻魔帳を持って教室に入ってきた
「そろそろ落ち着けお前たち、私はこのクラスの担任を受け持つサクラだ、よろしく頼む」
魔物娘図鑑では藍色の髪でロングヘアーなドラゴンであるけどサクラ先生は朱色のショートカットをしている。
図鑑でしかドラゴンを見たことのないカザミにとっては印象に残る違いだ。
「どうしたカザミ、ドラゴンが珍しいか?」
まじまじとサクラ先生を見つめていたカザミは自分の名を呼ばれたことでハッと我に返る。
そして先生とは言え相手は初対面、なぜカザミの顔と名が一致しているのか疑問も浮かぶ。
なんだか入学早々不思議なことが多く流れに追いつけない彼だが今できることはキョトンとした顔を浮かべる事だった。
「何やら状況が整理できてないようだな、カザミとマイは後で職員室に来い」
いきなり職員室への呼び出しにカザミだけでなくマイを含めたクラスメート全員が騒めく。
その様子にサクラ先生は左手を額に当ててため息をつき先ほどの言葉に付け加えた。
「いや悪い意味じゃないんだ、お前には大事な話があるからな」
大事な話? まったく状況がつかめないカザミだったが先生に呼ばれた以上拒むわけにはいかない。
そして先生が必要なことを一通り話し終わると二人を職員室に案内した。
サクラ先生が職員室にある自分の机から既に開けられた一通の封筒を取り出す。
「カザミ、今までの辛い記憶と決別したいか?」
その言葉にカザミの心はドキンと跳ねた。
彼にとって触れられたくない過
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