と言うわけで時間を三年とちょっと巻き戻して、カザミの中学生活を終える頃のお話。
多くの学生は進路と受験勉強に頭を悩ませることだろう。
しかしカザミは違っていた、なぜなら魔界に留学することになったから。
事の始まりは中学三年生の夏休み明けのころマイが魔界から人間界へと転校してきたことからだった。
「ねぇ、魔界に留学しに来ない?」
転校してきてから一週間、いきなりコレである。
確かに魔物娘にとって人間男性の確保は死活問題、中学三年生だからと言って早すぎる話ではない。
それにカザミにとっても悪い話ではなかった。
小学生の頃から今まで数々のいじめを受けていたため心は壊れかけ、高校進学も誰も知らない遠いところがいいと思っていたくらい。
「うん」
たったの二文字ではあってもカザミにとって希望に満ちた返事であった。
それもそのはずで転校してから三日目、カザミを傷つけていたいじめっ子達をマイは長い蛇体をぶん回して一掃したのである(でも生きてるから大丈夫)
それからというものマイはカザミを守りたいという母性本能に目覚めたようで何かとカザミの世話を焼くようになってしまった。
中学生にとって異性に世話を焼かれるのは嫌がるケースは多いだろう、しかしカザミにはマイのことが仏様にも女神様にも見えてしまったのだ。
こうしてカザミはマイに依存するようになったのである。
そして彼らが中学生活を終えて魔界に向かう日のこと、とある泉の辺にて。
「この泉に飛び込むって?」
まるで水底まで見えるように澄んだ泉を目にしてカザミは問いかける。
そもそも実家の近くにこんな綺麗な泉があるなんて知らなかった。
家で空いた時間はゲームばっかしてるインドア派なカザミだからというのもあるかもしれないけれど。
「大丈夫よ、水の中でも息できるように魔法をかけるから」
マイはそう言うと両手を器のように目の前へと出す。
そして手のひらに意識を集中すると無数の水泡が湧き出してきた。
「初めて水の魔力使うのだけど大丈夫大丈夫」
マイは自分を落ち着かせようと深呼吸をし、水泡をカザミに優しく吹きかける。
するとカザミの体に付着し、そのまま全身に染み込まれた。
「これが水の魔力? なんだろう体がじんわりと温かい気がする」
今までに感じたことのない感触に少し戸惑うカザミ。
でも不思議な事に恐怖や不安といった嫌な感じは一切無かった。
「それじゃ、魔界に行くよ!」
「えっ、うわわっ」
そんなカザミの表情を見てマイは彼の左手をつかみ泉へと飛び込む。
不安が無いとはいえ心の準備はまだ出来ていないカザミ。
水中をぐんぐん潜っていく中で息を止めていたが限界は必ず訪れ大量の水を吸い込んでしまいそうになる。
「あ、あれ? 苦しくない」
たとえマイの事を全面的に信頼してても水の中で息をするのは初体験、様々な感動が込み上げてくる中視界に光が飛び込んできた。
「ほらほら、もうすぐ魔界につくよ」
泉の中を経由して水中から勢いよく飛び出した二人、マイの故郷でありカザミの留学先になる魔界。
見知らぬ世界にたどり着いたカザミは周囲を見渡しボソッと呟く。
「見た感じは人間界と変わらないけど……」
そこには普通に木が生え草が生い茂る見慣れた空間が広がっている。
しかしカザミは徐々に人間界と魔界の違いに気づいていった。
「この芽、何だろう?」
淡い光を帯びた不思議な芽が地面から生えていることにカザミが気づき何となく手を伸ばしてしまった。
「カザミ君、それはダメッ!」
間一髪の所でマイはカザミの腕を掴み静止させることに成功する。
「この子はマンドラゴラ、引っこ抜いたら大変な事になるのよ」
その大変な事を回避できた安心感にマイは胸をなでおろす。
そんな様子にカザミは魔界の油断できない恐ろしさを感じてしまった。
「うう、魔界ってどこにでも魔物娘いるんだよね……」
「そうだけど、浮気しないでね?」
「しないしない」
流石は白蛇、些細な事でも嫉妬深さを発揮するがそれはいつもの事。
でもここは魔界、様々な魔物娘が暮らしている世界。
いつカザミに魔物娘がよってくるか分からない世界。
彼はそう考えて不安げな表情を浮かべてしまう。
「マイさん、魔界でも頼っていいんだよね?」
「大丈夫よ私がいる限りカザミ君に他の魔物娘からは指一本触れさせないから安心して」
弱気な発言をするカザミにマイは自信あり気な返事をする。
嫉妬深い白蛇の一面は有名ではあるが他の魔物娘からのボディガードとしては非常に頼もしい。
カザミが依存する理由がまた一つ増えた瞬間であった。
少し話が飛ぶけど魔界の学生寮にて
「この荷物はこっちでい
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