カウンター前、ぎゅうぎゅう詰めの店内。
今も座席が空くのをまつ人々のの視線浴びながらの30分。
やっと訪れた香ばしいスープの香りと共にラーメンが目の前に置かれる。
待ちわびたはずのそれは、値段以上に僕を満足させるが多すぎる人の熱気ばかりが気になった。
もっと安くて好いている店に行けばよかった。
ポケットに入ったメモ帳とペンを忘れるかのようにラーメンをすする。
ふと、名前を呼ばれた気がした。
「え、公博くん?」
「……え?天草?天草なのか」
地元出人気のラーメン屋で高校生時代の知り合いと出会った。
カウンターから見えるくりくりとした目付き。
すらりとした身長の割にはやや童顔気味の顔つき。
彼女は大人になって、耳が尖っていて手からは羽が生えていわゆる「魔物娘」の姿になっていた。
でも間違いない。
彼女は同級生のクラスメートだった天草風花(あまくさふうか)だ。
「ひっさしぶりー!公博君元気にしてた元気してたー!?」
「おい天草、その格好どうした…ていうか」
「もー!昔みたいに「かざはな」ってよんでよ。かーざーはーな」
「あのな、あま……風花(かざはな)。もう少し」
狭い店内をかき分けて店員がやってきて風花に店内で声をもう少し落とすように言っていた。
あいつ声がでかかったな……僕はぼんやりとそう思い出した。
てかあいつ、鳥みたいな羽でどうやってはしもってんだ?
***
「いやー、ごめんごめん。地元で友達に会えるなんて思わなくてさ」
「地元だから一人や二人会うにきまっているだろ」
あの後料理を急いで食べて、暑さの為か夕暮れの公園で僕たちは話していた。
白くてスポーティーなパーカー、ややっぴったりとしたスパッツ。
テーブルと人ごみにわからなかったが学生時代から変わらないスパッツからはみ出したむっちりとした太
ももは同じだったが。
ニーソの下は黄色い趾(あしゆび)に代わっていた。
「お?公博君私の脚に興味ある?ある?」
「偶然目に入っただけだよ。それよりも天草は「かざはな」……かざはなはどうしてここにいるんだよ?
てかその格好は何だ?」
言いなおされて僕は照れ隠しに手を首筋にあてる。
彼女は高校一年の時に帰国子女として僕のクラスに転校してきた。
自己紹介の時にホワイトボードに書いた生をかざはなと間違って彼女を呼んだのが僕たちの出会いだった
とにかく、それを面白がった風花はそれ以来かざはなと僕に呼ばせるようになった。
……そのせいで毎回まわりに訂正されて閉口したものだが。
とにかく、彼女は明るく人見知りしない性格からかクラスの誰とでも仲良く話すことができた。
「ふっふーん。よくぞ聞いてくれましたくれました」
さっきから聞いていたのだが、彼女がべらべらと話すからさっきから聞けなかったのだ。
風がでゆれる風花の髪の毛はまるで青い色もあって小川が流れているように見えた。
「今私、ハーピーたちのヴァンダーフォーゲル活動に参加しているんだよね。で、私気が付いたらハーピ
ーになってて」
「うんちょっと端折り過ぎじゃないか。そもそもワンダーフォーゲル」
「わたしってほら?元気が良すぎてじっとしてられないじゃん?だからこの活動はぴったりでさー。ぴっ
たりぴったり」
「聞けよ」
「それにワンダーフォーゲルじゃなくてヴァンダーフォーゲルだよ?だよ?」
「知らないよ」
ようするにハーピーと言う鳥の魔物娘たちと一緒に放浪活動しているらしい。
その活動が渡り鳥みたいだからグループの名前はワンダーフォーゲルだそうだ。
そもそも彼女がハーピーたちと知り合ったのは異世界、もとい魔界を冒険しているときだったらしい。
好奇心旺盛な彼女が魔物娘に興味を持たないはずがなかった。
「仲間が結婚してね、ハネムーンにいくから活動はお休みになったんだよ。それで私も地元に顔を見せよ
うと思って
お腹空いたからお勧めのラーメン屋に入ったんだよ。そしたら!」
羽で指さすかのように僕に向ける。
「公博君にあったんだよ!じゃっじゃっーん!」
「そうなんだ……なんだか聞いたら拍子抜けしたよ」
僕はそう言いながらも変わらない風花の姿になんだか嬉しさを感じていた。
今見てもセーラー服着て「公博君!」と呼びかけてきそうだ。
「でもか風花(ざはなは)がっかりしたんじゃないか?」
「え?どうして?」
風花はきょとんとして首を傾げた後、金木犀のように鮮やかな瞳でじっと僕を見た。
「……僕は今、ブロガーやってるんだ」
「公博君国語の成績よかったもんね」
いやそれは関係ない。
国語の成績が良ければブロガーに慣れるってどんな理屈だ。
「だけどさ。僕って面白いことも言えなければ知識もないつまんない奴でさ。今日だってラーメンがブー
ムだからってあの店についてブログを書こう
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