1人の男がとある家の前に立っていた。
男は少し息を吸って落ち着いこうとしていた。
「すぅぅ・・・はぁぁ・・・よし」
落ち着きゆっくりと腕を伸ばしてインターホンを押す。
ピンポーンと音が鳴る。
そして家の中の方から誰かが玄関に近づき玄関が開く。
「はーい・・・あ、先生・・・」
男は港澤 高彦(みなとざわ たかひこ)。
立派な教師で今日も不登校の生徒、光葉 霧弥(みつば きりや)の自宅に訪れていた。
何故不登校になっているのか、それはイジメが原因だ。
霧弥の見た目は女の子のような顔立ちの"男の娘"。
その見た目のせいか、色々な男子生徒から変な事をされたり、変な告白をされたりと苦痛な日常を送っていた。
だが霧弥がイジメを受けている現場を偶然にも高彦が目撃しその場でイジメから守り、後にイジメをしていた生徒達を退学にした。
しかし本人の傷は予想よりも深く、イジメが無くなっても人が苦手になり引き篭ってしまった。
「最近霧君が私達とも距離を置いているんです私達じゃどうにも・・・」
「そうですか・・・わかりました、ちょっと話してみますね」
霧弥の部屋の前に立つ二人そしてゆっくりとノックする母親。
「霧君、港澤先生がおいでなさったから少し顔を出しなさい」
「ちょっとお茶を淹れてきますね」といって霧弥の母はその場を離れる。
ぺこりとお辞儀し部屋の扉を眺め「さてどうするか」と考える。
「光葉、学校に来い・・・っとまでは言わないが、せめて親に顔くらい見せたらどうだ?」
答えがない。
ひょっとして中で死んでいるんじゃないか?と思い始める高彦。
だがもそもそ、もそもそと何かが動くような音が扉の内側からして少し安堵する高彦。
「・・・先生」
弱弱しい声がした。
しかしちゃんと聞き取れる声量なのでそのまま耳を傾ける高彦。
「どうした、光葉悩み事か?俺でよければ相談に乗るから少しは顔を・・・」
「先生は・・・もしも"悪魔"みたいな姿になったら僕を拒絶しますか?」
顔を見せろと言う前に、突然理解できない事を言い出した。
見た目が悪魔?その言葉の意味を考えて少し黙ってしまう高彦。
「う、う〜ん・・・その"悪魔"というのはどんなものかはわからないが・・・光葉は、光葉だろ?」
「・・・」
言葉を間違えた!?と思い慌てて補足しようとする高彦。
しかし補足をする前に霧弥の母親が慌ててこちらに来る。
「先生ごめんなさい、ちょっとパートが急に入ってしまって・・・」
「ああ、そうですか・・・悪い光葉、今日は帰るが家族に顔くらい見せろよ」
申し訳ない気持ちでいっぱいの霧弥の母。
しかし「いえいえ」と言ってなだめ今日は自分の家(アパート)に帰るのであった。
*
時刻は夜の21時。
少しお酒を飲んで霧弥の言葉を考える高彦。
「悪魔・・・悪魔かぁ」
霧弥に何かあったのはほぼ確実だと思うが。
"何が起きた"そこまでは解らずに悩む高彦。
「参ったなぁ・・・こりゃ」
ごくごくとお酒を飲んでいく。
まずは部屋から出るようにどう説得をするべきか。
次に学校に通わせるにはどうすればいいか。
・・・
・・・
・・・
しかしいい案が思い浮かばない。
いや違う。
最後に残した言葉 "悪魔" という言葉が頭から離れないのだ。
「くそ・・・港澤高彦お前は1教師だろ・・・」
ぐしゃりっとアルミホイルの空き缶となった缶を握りつぶしたその時だ。
コンコン コンコンと窓の方から音がする。
最初は空耳だと思ったが、何度も叩く音に "誰かがノックしている" と確信する。
しかしここは2階のアパート、空でも飛ばないかぎりノックなどできない。
「だ、誰だ?一体誰がノックしてるんだ」
恐る恐るノックしている窓辺に近づく。
そしてゆっくりと窓に付いているカーテンを掴み。
一気にカーテンを開ける。
「ああぁ・・・先生ぃ・・・やっと気づいてくれたんですね♪」
口が開いて硬直してしまう。
何故なら今自分の目の前に。
空を飛び。
悪魔のような翼と禍々しい角と尻尾が生えた。
光葉霧弥がいるのだから。
*
「えっとつまり・・・」
霧弥の話を聞いた高彦は混乱していた。
@なぜ自分がこんな姿になったのか。
A元に戻れるか戻れないかわからない事。
それらを含めて直接高彦に相談しに飛行して来たという。
「まぁよかった・・・別に親を嫌いになった訳じゃないんだな」
「はい・・・まぁこの姿になったのが原因ですから」
「・・・ところで光葉」
「なんですか先生」
「・・・少し密着しすぎじゃないか?」
寄り添うように、密着する霧弥。
しかも男なのか女なのかよくわからないがとてもいい香
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