彼は出会う、一途な彼女に

「あはは、ぶははひー、腹痛い、笑いすぎて腹、超痛い」

「・・・」

とある会社の食堂で2人の男が話をする。
1人は、げらげらと馬鹿笑いしているが。
もう1人はずーんという音が聞こえるくらい落ち込んでいる。
そして同僚をジト目で見て。

「そんなに笑わなくてもいいじゃないか・・・」

大川天羅(おおかわ、そら)は溜息を吐く。
その目はまるで "死んだ魚のような眼" をしているという言葉が1番しっくり来る。

「悪い、悪い・・・けど数年間付き合ってそれで金をいっぱい貢いであげく童貞のまま、付き合っていた彼女から送られたDVDで別れ話をされるなんて」

「・・・」

「なんのエロゲーだよ」

「殴るぞ?」

げらげら笑うが、天羅に睨まれ笑うのをやめ天羅に謝る。
するとジト目になりながら溜息を吐きながら机に顔を突っ伏す。

「もういいよ俺・・・このまま仕事一筋で生きることにするよ」

少し顔を机に突っ伏すのをやめ。缶コーヒー開けて飲んでいく。
そして一気に缶コーヒーを飲みほし、溜息を吐く。

「おいおい、たかがふられた程度でそこまでへこまなくてもいいじゃねぇか」

ばしばしと天羅の肩を叩いて励ます。
だが、それでも天羅は溜息を吐く。

「・・・5回」

「・・・5回?なんの数字だよ?」

「大学生で、1回、就職、転職を繰り返して4回・・・ふられた」

「・・・」

さすがの同僚も言葉を失い少し黙る。
そして空気がまた重くなって。

「・・・ま、まぁいいことあるって」

椅子に座りなおし、う〜んと考える。
すると同僚がいいことを思いつく。

「なぁ、お前魔物娘とかはいける口か?」

「唐突だな・・・まぁ、魔物娘との結婚は今じゃ珍しくないけど・・・それがどうかしたか?」

「なに、単純な話だお前に女性運がないなら相手を魔物娘にすれば、ふられることはないってことだ」

「な・・・なるほど」

同僚の言葉に納得してしまう。
だがそれも束の間だった。

「お、俺には無理だ・・・だって、魔物娘の知り合いなんていないし・・・」

声かけるのも怖い・・・とうつむく天羅。
しかしそんな天羅に、同僚はニヤリと笑う。

「そんなお前に、いいものがあるぜ♪」

同僚が自分のスマフォを見せつける。
その画面をいぶかし目に見て。

「・・・カップリング・モンスター?」



カップリング・モンスター。
それは女性との出会いに無縁の男性、恋愛がしたことのない男性等に "平等の恋愛" をテーマに作られたアプリ。
このアプリで、紹介されるのは主に魔物娘と元々人間で魔物娘になった女性ばかり。
もちろんアプリは一部有料コンテンツもあるが、有料コンテンツを除けば無料で魔物娘と出会えるようになっている。
ただし、魔物娘が男性を気に入らない場合、その男性をブロックをされる場合もあり。
最悪、ブラックリストに登録された場合強制的にアプリが起動できなくなる場合もある。

「・・・」

そんなアプリを登録した天羅は、アプリ内で話しかけてきた魔物娘と会話をして。
互いの休日を合わせ今日アプリで知り合った魔物娘とデートをすることになった。
だが、しかし・・・その彼女がまだ一向に現れず。
ついつい時計を見ながらアプリのチャット会話を確認したりする。

「・・・あと、30分・・・いや、1時間だけ」

待っても来ないんじゃ?という不安がよぎって。
アプリのチャットに、用事ができたと書こうと思いアプリ内チャットに書こうとする。

「すーみーまーせーーーん!!」

声と同時に不意に何かが飛び出してきた。
その何かに驚き、思わず尻餅をついてしまう。
急ブレーキを掛けた相手が自分の前に現れ心臓も飛び跳ね心音が激しくなる。

「え・・・あ、何?」

動揺しながら必死に落ち着こうとする。
そして、飛び出して来た何かを見る。
何かは四足の足に真っ白な獣人型の魔物娘。
一言でそれは "穢れを知らない純白" という言葉が1番似合う。

「申し訳ありません!支度に手間を取り、またナンパをされて連絡しようにもできずに遅れてしまいました!」

両足を曲げ下げて頭を下げる。
その姿は奇妙だが、相手からすれば土下座をしているつもりでいる。

「え・・・あ、いや・・・別にと、とりあえずあ、頭あ、あげてください」

必死に頭を上げさせ、よくその獣人を見る。
その獣人の顔立ちは美女や美少女と言っても差し支えない。

「許してもらえるんですか?こんな私を?」

ゆっくりと足を上げて立ち上がる。
すると人1人その背に乗れる大きさで天羅は内心、「おお・・・」っと声に出そうなる。

「えっと・・・ユニ子さん・・・で、いいでしょうか?」

「はい、ユニ子、ことユニコーンのシラユキと申します・・・どうか、シラユキとお呼びください・・・
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