ドル・ドンガ洞窟。
昔は採掘場であり、そこで取れる鉱石は高価なものだ。
しかしそれは30年以上昔の話であり、今では"魔物"の巣窟と化していた。
今ではもうここで鉱石の発掘をしようとする者は誰もいない。
「ここがドル・ドンガ洞窟・・・」
「っへ、へい・・・そうです旦那」
旦那と呼ばれた男、"ケーニッヒ・ウィルゼン"
とある理由で旅をしており、各地を転々と歩く旅人。
「すまないなこんな危険な場所まで案内して」
「い、いえこれも仕事です・・・そ、それで代金の方は・・・」
小柄で少し背の低い男はチラチラっとケーニッヒを見る。
まるで早く、この場から立ち去りたいのと金が目当てというのが明白だ。
「ああ、そうだったな」
ケーニッヒは、懐から路銀を出す。
銀貨2枚と銅貨3枚だ。
すると男は驚いた。
「こ、こんなに・・・こんなにも、もらっていいんですかい!?だ、旦那」
「ああ、もちろん正当報酬だこれでうまい酒でも飲むといい」
気前がいいのか、それとも何か企んでいるのか道案内をした男には理解できなかった。
たかが洞窟の入り口までの道案内をしただけなのにと思いながら。
「・・・あ、ありがとうな、旦那・・・旅の無事を祈ってるぜ」
男は精一杯のお辞儀をして自分にできる感謝を表す。
「こちらこそ、ありがとう、そちらも無事に街に戻れることを祈る」
荷物を持ち直して洞窟へ入るケーニッヒ。
そしてそれを見送る男。
ケーニッヒの姿が見えなくなるその時まで。
*
洞窟の中は薄明るく最初は慣れるのに10分ほど掛かったが慣れれば平気な足取りで進む。
辺りを見渡しながら洞窟の奥の奥へと進む。
「このまま、出口にたどり着けられればいいのだが・・・」
独り言を呟く。
まだ魔物娘が姿1つない洞窟で。
「誰だ!」
しかしそれも束の間だった。
ケーニッヒは後ろを振り向くが誰もいない。
辺りを見るが感じるのは"見られている"という事だけ。
何かが・・・いるという気配だけ。
「・・・誰かいるのか?俺はただこの洞窟を抜けた先にある港町に行きたいだけだ」
周囲を警戒する。
ただの"気配"だけであれば逃げればいいだけで事は済む。
しかしケーニッヒは感じていた。
明らかに"敵意"に満ちた視線を。
「キヒヒ・・・そんな嘘が通じるかよ・・・」
洞窟に響く"女の子"の声。
ただし洞窟の中なので声が響きどこから発声しているかはわからない。
「キヒヒ、まぁそこまで言うなら・・・そうだな、まずは"裸"になれ」
「・・・裸になれば、信じるのか?」
どこで見ているのかわからないが相手の指示に耳を傾ける。
その反応を見て"脱がない"と思い込んでしまう。
「キヒヒ、それはわから・・・」
「わかった」
"わからない"と言うより先に、ケーニッヒは服を脱ぎ始める。
その行動に流石に戸惑いと驚き。
そして焦り始める。
「ちょ!?お、おま・・・お前何脱いでんだよ!?」
「?何を驚いている?脱げと言われたから脱いだだけだが?」
「ふつうは抵抗するだろ、いやだとか言うだろう!!お前馬鹿か!?」
「脱げと言ったのそっちだろう?それに今は、お前と自分だけだ恥ずかしいものか」
"素直"な事を正直に言うケーニッヒ。
だが女の子の方はあきれてケーニッヒを"馬鹿"認定する
「も、もういい、もういいから服を着ろこの最低野郎!!」
「脱げと言ったり着ろと言ったりどっちなんだ?」
「うっさい、馬鹿!」
服を着直していくとケーニッヒ。
するとさっきまで感じていた"敵意"が無くなっていた。
よくわからないが場が和んだと思い、声の主にコンタクトを取ることにする。
「なぁ、どこで喋っているかはわからんが出てきたらどうだ?」
「はぁ?いやよ馬鹿人間」
「そうか、じゃあ自分はそろそろ行くが…いいな」
あっさりと出てくる気がないと判断して歩み始めるケーニッヒ。
しかし女の子の方は納得できなかった。
「ちょっと、誰が通行していいって・・・って!人の話聞けこの馬鹿人間!!」
馬鹿人間〜
にんげん〜
げん〜
どこまでもどこまでも響き渡る声は空しく終わり1人取り残される。
なんてあっさりしているんだ!と思いながらふつふつと怒りがこみ上げ始める。
「くぅ〜・・・アタシを馬鹿にしてぇ・・・許さない!」
女の子はこっそりと、ケーニッヒの後を付いていく。
何故なら久々の"人間"なのだから。
*
「困った・・・すっかり迷ってしまったな」
洞窟内を歩いて数時間が経過するが、道をどこで間違えたか完全に迷子状態になる。
だがその数時間で気づいたことがあるそれは"魔物"の姿が1つもないという事。
「
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