「やっと着いた」
新幹線で2時間、電車に乗り換えて1時間そしてバスでの移動で約30分。
長い移動を終えてようやく叔父と叔母が経営する牧場の近くにたどり着いた、央戸 威織(おうと いおり)。
叔父と叔母の手伝いを始めたきっかけはただの手伝いという名の"アルバイト"。
しかしその"アルバイト"もいつの間にか楽しみとなり今、大学生になっても手伝いをしている。
「ここから牧場まで歩くのか」
溜息を吐きながら移動する。
何故ならバス停から牧場まで30分ほど掛かる、なので移動時間を総合すると4時間という計算になる。
「暑いなぁ・・・まぁ夏だし、しかたが・・・」
道路を歩いていると帽子をかぶり日傘を持った女性が歩いていく。
そしてその女性はゆっくりと威織に近づいてくる。
「あ、あの・・・失礼ですが、央戸、威緒さんですよね?」
深々と帽子をかぶった女性が、いきなり自分の名前が出て少し戸惑う。
少し焦りながら何とか声を出そうとする。
「あ、ああ・・・確かに俺が威緒だけど・・・」
深々と被った帽子をゆっくりと上げていく女性。
「よ・・・よかった無事に会えました、あ、私、風間リエっていいます」
「風間・・・え叔父さんの・・・」
「は、はい・・・娘です、お、お迎えに来ました央戸さん」
*
叔父と叔母が経営する牧場までの道のりでリエと会話をする。
その話題は自分のの大学生活や大学のことを聞かれて、普段は1人だけの移動が2人だと楽しくも思ってしまう。
しかし何か引っかかることが威織は感じていた。
それは話題が"自分の事"ばかりだからだ。
「では、央戸さんは大学の卒業後は?」
「う〜ん・・・まだ、何とも言えないなぁやりたいことってまだはっきりしてないから」
あははっと笑いながら移動しているとようやく叔父が経営している牧場にたどり着く。
「お、やっと来たね威織君」
牧場に入ってすぐに叔母がいた。
ゆっくりと叔母に近づく威織。
「叔母さんご無沙汰してます」
「威織君よく来てくれたね、長旅で疲れただろう?今日はゆっくり休んで明日からバリバリ働いてもらうよ♪」
「はい、あ、これは母からいつものです」
威織は手に持っている手提げ袋を叔母に渡す。
「いつもありがとうね、これでご飯が楽しみになるわぁ」
「お、お母さん・・・それは?」
首をかしげて袋を見るリエ。
「ん?これかい、これはね」
袋から中身を出す。
中に入っていたのは漬物のと書いてある。
「威織君実家はね、お漬物屋さんでね・・・このお漬物がまたおいしいのよ」
「お漬物・・・」
漬物の包んである袋を見つめるリエ。
その見つめる姿が威織には"違和感"を感じた。
「?央戸さん、私の顔に何か付いてますか」
「え、あ・・・いや、ごめん」
変に見つめていたことに気づかれて不意に言い訳する。
「お、威織君よく来たね」
そんな事をしていると叔父がやってくる。
「叔父さんご無沙汰してます」
ぺこりとやってきた叔父に頭を下げる威織。
「ははは、長い時間の移動お疲れ様、あはは・・・」
不意に耳元まで叔父が近づく。
そして威織の耳元で叔父が囁く。
『あとで、ちょっと話があるから』
「!?」
威織にしか聞こえない程度の声量で威織に言う。
まるで"秘密"を教えてやると言うような・・・。
言わんばかりに。
*
威織は与えられた部屋で荷物を置き疲れを取る。
「話がある・・・か」
少し天井を見つめて、叔父を待つ威織。
すると扉からノック音が聞こえる。
「どうぞ、開いてます」
がっちゃりと、扉を開けて入ってきたのは先ほど話があると言った叔父が入ってくる。
なお手にはお盆を持っており、そのお盆にはお茶とお茶菓子を持っていた。
「さっきは、悪かったね威織君、ささお茶を飲んで」
小さなテーブルに、お盆を置きお茶菓子を振舞う。
「叔父さん・・・お茶よりも言いたいことがあって来たんですよね?」
「・・・ああ、まぁ大体察しは付いてると思うが・・・」
2つ置いたお茶の1つを持ってずずずっと飲み始める叔父。
「・・・リエ・・・風間リエ・・・あの娘(こ)は一体何者なんですか?」
「それは」
「それは・・・」
緊張する威織。
彼女が一体誰で
何者なのか。
今明かされる"風間リエ"の正体。
「・・・内緒♪」
ずこっとすべる威織。
そしてがははっと笑う叔父。
「ちょ!?そこは普通教えてくれるところでしょう!?」
「ははは、まぁそのなんだ俺や妻からはリエの正体は教えることはできない」
「・・・?どう言う意味ですか」
叔父のよくわからない言葉に理解できないでいる威織。
何故自分から言わ
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