部屋の鍵も開け放たれ、安全が保障された部屋の中、俺はベッドの上に乗ったまま尋ねる。
「二人は、元々俺みたいな呑気な奴を襲うために、あんな事してたの?」
一番聞きたかった事がこれだ。部屋に入る前は、どうにも脳裏をラミア姉さんに浸食されていたが、ハーピーの娘さんに聞いた言葉が、どうしても気になっていた。その上で起きたこの出来事である。普通であれば、俺をゴブリンの娘が押し倒して精気を搾取するのに、間違いはないはずだった。
「…うん、そうだよ。だって私たち魔物娘だもん。 男の人見て押し倒したいって普通は思うよ」
妹ゴブリンが俯き加減でそう言った。やっぱり、普通はそれが魔物娘たちの信条であり、心情だろう。此処でラミア姉さんの夫の朗らかで人が良さすぎな笑顔が目の裏に出てきた。…何で出てきたんですか貴方。
「そうだよ、そうだよおねーちゃん。どうしてえっちさせてくれなかったの!?」
「………妹は、どう思う?」
突然妙な事を言われてしまったのか、妹ゴブリンは姉の言葉を聞いて驚き、黙りこくってしまった。そう、そこも気になる所だった。 何故同じ魔物娘であるゴブリンの、自分の妹が襲うのを姉は“良し”としなかったか。彼女もホブゴブリンの娘、つまりは魔物娘なのだ。自分だって本当は―――。
「…私は。……私も、この人とえっち、したい…」
本当の気持ちを、素直にお姉さんは述べた。だけど、この娘の反応は妹と比べると何処か何かが違っていて、
「…だけど、ひとを騙してまでするのは…私は、やだ」
「お、おねーちゃん……」
「…妹も、ほんとうはそう思ってるはず…」
「っわ、私は!私はそんな事ないもん!!!」
二人の論争は子供の喧嘩のようでいて、大人の論争だった。この二人は、本来どんな方法を以ってしても男を襲って精液を摂取したいと思っているだろう。だけど、この二人には悪戯をするのと同時に『良識』を持ち合わせている。本当の自分に嘘までついて、ギリギリの境界線を歩いている。…この二人は、本当に優しいんだ。
「や、妹ちゃんは優しいと思うよ」「ふぇ!?」
「ほら。何だかんだで頼んだモノはちゃんと買ってきてくれたんだしさ」
悪戯でこんなにしっかりと買い物をしてくれるとは思ってなかった。本来なら騙しているんだから、ご丁寧に買い物をしてこようだなんて普通は考えない。…と思う、多分だけど。 と同時にお姉ちゃんの方が俺の方をじっと見つめてくる。―――あれを良しとするかは…そっとしておこう。
「助かったのは本当の事だよ。ありがとう」
「…………////」
素直に感謝の言葉を述べると、それを濁そうと口をモゴモゴ動かして、何も言えない事に気付き俯いてしまった。とがった耳まで真っ赤になって、可愛いと言えば可愛い。あー…だから、嫌いになれないんだろうな、きっと。お姉さんの方がも何やら言葉を求めているようで、いい加減無視することも出来なくなってきたので…、
「お姉さんの方も、ありがと。どうするべきかはちょっと迷うけど…」
「……♪」
屈託ない笑顔で返してくれた。子供っぽいかもしれないけど、その顔つきは何処となく女性らしさも醸し出している。あんまりじっと見つめていると、こっちまで恥ずかしくなりそうで、何時の間にか顔を逸らしていた。
「でもこれで良かったのかな。本当なら―――」
「……その続きは、だめ」
口から発しかけた言葉を、近寄ってきたお姉さんに遮られた。
「………あんまり言うと、私…おにいさんの事………っ////」
「お、おにーさん////」
何時の間にか妹の方も顔の目の前までやってきて、熱の籠った視線を二人から降り注がされる。ほんのり上気した頬はとても可愛らしく、物欲しそうな視線に、俺はどうしていいか迷っていた。このまま致してしまう事、もしくは有耶無耶にして何事も無く生活する事。どっちにしたって……。
「………二人とも、俺、俺は…」
答えを簡単に求める事が出来ない。自分の欲望に忠実になるべきなのか、それとも理性を保ちお姉さんの気持ちを尊重するべきか。俺の本心はどちらにあって、彼女たちの願いはどちらにゆだねられているのか―――。それを考える前に…俺は、やっぱり臆病だった。
「……ごめん。二人の事、嫌いっていうわけじゃないんだけど…」
「………それで、いいと思う」
思わず暗い顔で返してしまう所を、またしてもお姉さんの牽制が入る。俺よりもずっと小さいはずの娘に宥められてしなうなんて、俺も男として出来てない。チクリと胸が痛んだけど、
「まーまー! とりあえずこの問題は解決!って事でいいじゃない?」
妹さんの気遣いなのか、それとも元気な所が好きなのか、とにかく大きな声でこの問題を解決の方向へ持っていこうとしている。お姉さんの顔
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