「大道、鳴海、照井…何でここに呼び出したか分かってるだろ。
禁止されているUSBメモリの無断持ち込み、これで何回目だ?」
商談室の六人掛けテーブル、眉間に皺を寄せた諌の右手には、黒、白、赤のスライド式USBメモリが握られている。
如月支社 総務部管理課 溝呂木諌主任。
澤井フーズの比較的自由な社風の中では珍しく、自由よりも秩序や規範を重んずる保守的な社員である。
『如月の狂犬』『規則の番人』と言われ、年齢、性別、役職、種族関係なく接し、例え社長相手にも躊躇なく異を唱え、入社間もない新卒にも首を垂れる。
責任感も強く、自分自身に対しても容赦はしない。
「とりあえず、重要な機密情報が入っていないか、危険なプログラムが無いかを確認をするまで没収だ。
この件は入間支社長にも報告する。
処分が決まるまで、パソコンのUSBポートにカバー付けるからな。」
感情に任せたパワハラ説教は一切やらない、代わりとして滔々と淡々と事実を述べる。
席に戻り、上に処分を諮る為の報告書を作り始めた。
――――――――――――――――――――――――――
「いやぁ…イサミンさん、めっちゃ厳しいっすね。」
諌から説教を喰らっていたひとり、イグニスの照井千草が上司である凪に苦い顔をしながら溜め息をついた。
「当たり前でしょ、前から注意してたじゃん。」
過去にUSBメモリが原因で大規模なセキュリティインシデントが発生した事のある澤井フーズ、外付けの記憶媒体を使う時は申告とチェックを経なければならない。
それを面倒がって無断でUSBメモリを持ち込んでいた、当然ながら今日まで何度も凪は口を酸っぱくして注意をしていたのだが、この体たらくである。
「この調子じゃ、家で束縛とかヤバいんじゃないですか?」
千草の懸念、大人しい引っ込み思案な凪が、諌から日常的にDVやモラハラの類を受けているのではないか…というものであった。
「全然そんな事ないよ
#12316;。
家ではずっとデレデレだし、あの人凄いMだか…」
「湊課長。」
凪が後ろを振り向くと、USBポートのカバーを手にした諌が仁王立ちしていた。
「コミュニケーションを取る事は結構ですが、プライバシーに関わるものや性的な内容は厳に慎んでください。」
諌の確固たる姿勢、それは例え愛しの恋人であっても容赦はしない。
そんな諌に凪はえへへ、と苦笑いして右手で頭を掻くしかなかった。
――――――――――――――――――――――――――
「あ」
凪のスマートフォンに来た通知に、思わず足を止めた。
少し前に抽選販売に応募して当選した新型ゲーム機、クレジットカードで支払いを済ませていた事を諌に話していなかった。
諌にどう言い訳しようか、そう考えて玄関ドアのノブに手を掛けた。
「ただい…
「すいませんでしたッ!」
ドアを開けるが早いか、凄い勢いで諌が土下座をして謝罪をしてきた。
「消費税込みで4万円近くする新作のロッドを注文した事、凪さんに申告していませんでした。」
床にめり込むのでは、と思うほど頭を床に擦り付け許しを乞う諌。
その様子にあわあわと狼狽える凪。
「実は私もゲーム機を黙って注文しちゃって…税抜きで5万円近いんです。」
玄関を支配していた静寂…それも一瞬のうちに笑いで消し飛んでしまった。
「とりあえず夕飯にしましょう、話はその後で。
今日はチーズタッカルビ、凪さんご希望の激辛バージョンです。」
やっと凪は台所から唐辛子とニンニクが主役の、いい匂いがにじり寄ってきた事に気が付いた。
――――――――――――――――――――――――――
「本当にそれで良いんですか…?」
「それがいいんです!
躊躇なく容赦なく徹底的にやって下さい、お願いします!」
深々と頭を下げる諌。
凪が自らに課した罰、それは諌の願いをどんなものであっても一つ叶えるというもの。
頼まれれば自らの命すら差し出す覚悟でいた。
それに対して諌の願いは
『黒タイツ越しにズボンの上から踏み付け、出来たら言葉責めもして徹底的にいじめて絞り尽くして欲しい。』
というものだった。
「それじゃ私が諌さんにお仕置きするみたいじゃないですか…」
「お仕置きという形のご褒美です。」
いつになくドM全開の諌から渡された黒タイツ、パッケージに表示された価格に驚愕する凪。
いつも買っているものよりも高い、ずっと高い、倍近くする。
「折角踏んで貰えるのならと思って、奮発して良いものをまとめ買いしました。」
あまりの熱の入りように少し引きながらも、諌の目の前で慣れた手つきで黒タイツを履く。
流石は価格のだけある、肌触りからしてまるっきり違う。
「では、ここに座ってください…。」
床にビーズクッションを置き、諌に座るよう指示する。
少し脚を開いて座った諌の股
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録