おことわり
文中のギャグ展開において、魔物から人間に対する暴力描写があります。
ご一読前に予めご了承下さい。
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週の真ん中、水曜日。
各地の卸売市場が休みとなることの多いこの日、食品業界は比較的仕事が落ち着いている。
即ち、有休消化にはうってつけの日である。
「…え!?」
遅めの朝食を済ませた凪は、メッセージアプリの新着通知を見て固まった。
相手はゲイザーの神代陽子、凪の大学時代の友人だが、社会人になって以降は年賀状のやり取りぐらいしかしていなかった。
何年かぶりに届いたメッセージは
『湊 助けて
警察は呼ばないで来て』
であった。
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「直前まで安全装置を解除しないでください。」
諌はシートベルトを外して、専用ホルスターに入った催涙スプレーを凪に渡した。
渓流や山の中で熊などの野生動物に襲われた時用のもの、トウガラシ成分の威力は凄まじいものである。
最初は陽子の家に向かうことに反対して警察へ通報するよう凪に提案していたものの、凪の頼みに押され凪を護るため自分も同行する事を条件に凪の願いを飲むことにした。
諌は小型の護身用デバイスを腰のホルスターに収めた。
ボタンを押すとカプセルがガスの圧力で放たれ、中に込められた麻痺剤と媚薬が炸裂、対象を凄まじい快楽で以て無力化させるもの――エアガンやペイントボール競技に使われる銃の応用である。
コインパーキングに停めた青いコンパクトセダンから降りた2人は、斜向かいにある三階建ての洒落た外観の賃貸マンションに入っていった。
2階の203号室の前に到着し、チャイムを鳴らした。
「ヨーコちゃん、湊だよ…大丈夫??」
「鍵開いてるから入って…」
ドアを開けて中に入るとふっと鼻の奥に燻るスパイスの匂い、恐らく朝はカレーでも食べたのだろう。
「男の人も入るからね」
「ありがとう…その方が助かるよ…。」
弱々しく震える陽子の声、泣いているのだろう。
『止まれ』
陽子がいるであろう部屋の前で諌がハンドサインを出す。
諌が蝶番側、凪がドアノブ側にしゃがみ込んで背中を壁に預ける。
まさかこんなところでサバイバルゲームの知識が生かされるとは…と内心ため息の諌、まるでFPSの突入シーンのようで心臓が早鐘のようになる凪。
『3カウントの後突入する』
『了解、カバーする』
言葉を交わすことなく、ハンドサインとアイコンタクトで準備を整える。
3…
2…
1…
諌が思い切りドアノブを回して引き、催涙スプレーを構えた凪が突入。
間髪入れずに諌も突入、カッティングパイのスタイルで部屋のクリアリングに掛かる。
シックで落ち着いたウッド調の家具と落ち着いたオレンジ色の壁紙、むっと鼻を突く栗の花と鮮度の落ちた生のケンサキイカを足したような匂い。
「湊ぉ…助けてぇ……」
部屋の真ん中に陣取り、凪とはまた違う色味のひとつの紅い瞳から大粒の涙を流し、必死に助けを求める陽子と…
「おほおおおぉぉぉぉほおおおぉぉぉぉ
#9825;」
恍惚とした幸せそうな顔で彼女からアルゼンチンバックブリーカーを受ける男。
歳は諌より数年ほど若く見える。
「え…どういう状況…?」
あまりにも、呆気に取られその場に立ち尽くすふたり。
「お願い、早く助け
「ああぁああああ気持ちいいぃいいい……イぐっ
#9825;」
みしり、と関節から嫌な音を立てながら男が絶頂した。
思っていた以上に差し迫った状況。
凪と諌は同時にスマートフォンを取り出し119番と110番、暫くしてサイレンの音が少しずつ近付いてきた。
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「我々もプレイの内容にそこまで踏み込む事はしません。
ただ…まぁ…なんだ…その…過度に熱中せずほどほどになさって下さいね…」
気まずそうな顔をしたヘルハウンドの警官が会釈をしながら踵を返し、パトカーに戻っていった。
陽子にアルゼンチンバックブリーカーを受けて気持ち良くなっていたのは夏河賢人、陽子の恋人である。
彼が整体師として働く中、陽子が持つ暗示能力を擬似的に応用することで、薬に頼らず施術中の痛みを抑えられないかと考え実践。
失敗した挙句暗示が暴走、痛みを依存的な快楽に変えてしまった…というのが顛末であった。
彼氏に危害を加えているから現行犯逮捕されるのでは…と危惧した陽子は警察を呼ばないよう言っていた。
結局は『プレイ中の人為的ミスによる事故』として処理され、警官からの軽いお小言を頂戴するだけで落着した。
救急搬送された賢人はそのまま入院、幸い骨や関節、靭帯にダメージは見られなかった。
入院して痛み止めの点滴を打ち、翌朝退院という流れになっ
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