それは、ある日の昼下がりのことだった…
その日も変わらずに宿屋を開く準備をしていると、いつもはこの時間に会うことは少ない……あの子が俺の宿屋にやってきたんだ
デ「あれ……?セムちゃん?…今日はどうしたんです?」
目の前にいる、ジト目で俺を無言で見つめるマンティスの少女…セムちゃん
彼女は、ここフェルス興国の中でも、貴族…と呼んでもいいほどの名家のお嬢様だ。
家族構成は、エキドナの母親を筆頭に、長女エキドナ、次女ドラゴン、三女ミューカストード、四女ソルジャービートル、末っ子セムちゃんという構成になっていて、何故だか知らないけれど、俺は彼女になつかれているんだ
しかし……相手はいい家のいわばお嬢様だ…機嫌を損ねないようにしながら、会話をするというのは、なかなかに心が疲れるんだよな
セ「…………デメさん……聞きたいことがあるんです……」
デ「えっと……僕に応えられることだったら、いいけれど……」
セ「………デメさん……最近……他の魔物娘に……言い寄られてますよね…?」
えっ?……えぇ?
いや……そんな気配もフラグも、立ってないんだが……?
セムちゃんはいったい、何を勘違いしているんだ…?
デ「えっ……?そんなこと、無いと思うんだけど……」
セ「…………それ……嘘ですよね……私、知っているんです……聞いているんです……屋敷にいると……常に言い寄られているんじゃないかって心配なんです…………」
セムちゃんはそう言うと、ゆったりと俺の方に歩いてきたんだよ
そして、俺の首に腕を回すと………耳元でこう囁いてきたんだ
セ「デメさんはぁ………もう、私の……旦那様に……なるべき……なんです…でも、デメさんは…鈍いから……私の気持ちに気がついてくれない……でも、もう……もう耐えられないんです……抑えられないんです……」
デ「えっ………それってどういう……」
セ「んっ
#9829;」
デ「っ!?」
なんだ……!?セムちゃんがいきなり口づけをしてきたかと思うと、口の中になにか錠剤を含まされたぞ……!?
俺は慌てて、その錠剤を口から出そうと舌を動かし、抵抗したんだが……
セムちゃんの舌が俺の舌に触れるたびにゾクっとした感覚が体を走り、そして、口の中で錠剤が軽く溶けたとき、俺の喉奥にその謎の錠剤は転がり落ちて行ったんだよ!!
なんだっ…!?いったい…なんの…薬……
あれ…っ!?地震かっ!?けっこう大きい……!?
頭が……揺さぶられる……!?眠い…?
あ…………あ……れ……?
俺の意識は、一気に闇の中に引きずり落とされたのだった……
デ「うっ……あれ…?体が…思うように動かせない……」
俺の意識がはっきりしてきたのは、それからいったいどれほどの時間がたった後なのか……
俺は、自分の手足を襲っている謎の違和感で目を覚ましたんだ
目を開けると、そこは一面純白な部屋だった
まるで、その部屋自体が汚してはいけないような……そんな雰囲気を醸し出していたんだよ!!
宿屋店主の観察眼から判断するに……この部屋にはスイートルーム並みの価値があると見た!!
でだ………
どうして俺の両手足に、この部屋に不釣り合いな黒い枷がついているんだ?
そう……俺の体は、両手両足を鎖と枷で縛られ、大の字にされてベッドの上にいたんだよ!!
この部屋がどんな部屋なのかとか、誰の部屋なのかもわからない状況で、こんな展開……俺的にも、かなり怖い状況だと思うね!!
セ「……あっ……デメさん………起きたんですか…?おはようです……」
デ「えっ……せ、セム…ちゃん?どうしたんだい?その格好は……」
セ「これは、私のパジャマ……のようなものですが……?」
デ「そ、そんなハレンチなっ!?だ、ダメだよ?そんな格好で人前に出たら…」
セ「………デメさんにしか……見せませんから……それに、デメさんだって…今は薄いシルクのシャツ一枚だけしか着てない……デメさんも…ハレンチ…だよ?でも……私は…そんなデメさん……好き…だから…」
おいおいおいおい……こ、これは…いったいどういう状況だ…!?
俺自身、けっこう厄介事には巻き込まれていると思うけれども……
こ、ここまで切羽詰まったのは久しぶりな気がする……
デ「じ、冗談は……」
セ「………デメさん、お腹すいてますよね……私…このときのために最高級の干し肉をお持ちしたんです……」
デ「えっ!?そ、それは非常に気になる……でも、そんなものどこに……」
セ「…………んっ…
#9829;ここで……さらに深い味になるように……漬け込んで置いたんです……ほらぁ…もうすっかり味が染み込んでいると思いますよ…?」
なっ!?せ、セムさんっ!?ほ、干し
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