01 宿屋店主は眠れない

ここは、フェルス興国に一つだけ存在する宿屋、ハイネの宿のカウンター

そこで、俺ことデメトリオ=スタンダートは今日も宿屋の業務に勤しんでいた
勤しんでいるといっても、今は昼間…昨晩のお客さんは全員チェックアウトして、俺は一人で帳面を見ながら売上の計算をしているところだ


デ「今月はまあまあ入ってるな……はぁ…まだ、アレが残ってるんだよなぁ…なんとなくだけど、嫌だなぁ…アレするの」


そう、俺は売上の計算をわざとのんびりとして、このあと待っているとある業務から目をそらしていた。
だが、あまりのんびりともしていられないのも事実……

仕方がない……やるか…っ!!



デ「さぁてと、昨晩止まったお客様のベッドのシーツ交換の時間ですよぉっと……」


そう言いながら、一人目のお客さんの部屋をあける……


デ「この部屋は、サキュバスとの夫婦だったな……あっ…布団が軽くカピカピしてやがる……また、昨晩もお楽しみだったのか……でも、軽く拭き取ってるというか、吸い取ってるというか……あまり汚れてないな。これなら、簡単に洗えそうだ」



そうっ!!俺の宿屋は決してラブホテルではないっ!!のに……
最近、魔物娘とのカップルや夫婦が宿泊するたびに、ラブホテルとして利用されているかのように、部屋が……


それに、これは俺がリフォーム費用をケチったから起こったことなのだが……
なんと…行為に及んでいると、ほんのりと声が漏れ聞こえて来るんだよ

普通のお客さんが泊まったら、俺の宿屋の評判が悪くなるかもしれないじゃないか?
まぁ……基本、普通の旅人なんて泊まりに来ないんだけどな……


今度は、しっかりとリフォーム代はケチらないって決めたね、俺は


さってと……ほとんどのお部屋はサキュバスさん御夫婦と同じような状況…
次の部屋で、今日のシーツ交換は終わり……えっと、最後の夫婦は……

バブルスライムのカップルか……
そういえば、バブルスライムがうちに泊まりに来てくれたのは始めてだったな…あの時、旦那さんが分けてくれたスライムゼリー……貴重な貿易資材になるから、本当に助かったよ


デ「さぁって、最後もぱぱっとおわらせ……っ!?」


部屋を開けると、あまりの光景に、俺は思わず言葉を失う…
そこは、布団いっぱいに大量の緑の液体と白い液体が…
しかも、緑の液体はところどころ、完全な固体とかしており、鈍い色を放っている……


こ、こいつは……掃除が大変だぞ…マジで……


俺は、恐る恐るその緑の何かがベッタリとついた布団を持ち上げ……


デ「う……っ!?ぐぐぅっ、お、重い………とにかく、家の裏の井戸まで持っていかねぇと……」


それから10分ぐらいがたったか……
2階から1階の裏口にある井戸に謎の緑の液体が付着した布団を担いで移動
正直、疲れたね……



デ「これ、水で流れるんだろうな…?流れなかったら、新しい布団を買わなきゃいけなくなってしまう……余計な出費は抑えたいんだが……」


そう言いながら、井戸から水を汲み上げて、布団を洗ってみる……


ゴシッ…ゴシッ……



布団を洗っても、依然として緑色の固形物は布団から外れる気配を見せず…


んっ!?なんか、緑色のぬるりとした液体が染み出てきた……?


こ、これは危険な香りがするな…

俺はそう思うと、そっとその液体を井戸に投げ込んだ
俺の感が正しければ、この緑色の液体?は、それを追いかけて井戸に行くはずだ……


そう思い、様子を伺う俺………
様子を伺っていると、俺の予想通り緑の液体は井戸に向かって移動を始めた
……布団も一緒にな


俺がそのことに気がついたときには、もう布団は井戸のそこに落ちるところだった
自慢じゃないが、水を含んだ布団を井戸のそこから持って上がる力なんて俺にはない!!
俺はそっと井戸の蓋を閉め、蓋に鍵をかけた



デ「さて……布団でも買いに行くか…」






それからぐーたら過ごして1時間、俺は重い腰を上げながら、布団を買いに行くことにしたんだ
もうそろそろ、お客だってくる時間だし………


そう思っていると、いきなり宿の扉がノックされたんだ
店を開ける時間にはまだ早いんだけど……お客さんか?


デ「いらっしゃいませっ…お客様、まだ開店前の準備中でして………」

??「邪魔するで?」

デ「邪魔するなら、帰って……」

??「あいよ〜…………ってアホかぁっ!!」

デ「あいたぁっ!!」


ぐぅっ………容赦ない平手うち……なんてやつだ…

このいきなり現れた謎の人物……形部狸のソメさん……
あいにくと、俺が望んでいるお客さん…というよりは、宿側…つまり、売る側の人間だ
最近、目をつけられたのか、やたらと書類にサインを書かされそうになる


店主たるも
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