明「あいさつが終わったら、早めに帰ってくださいね?」
見切「はい、わかっています…けど…本当にいいんですか?」
……そ、それはいったい、どういう意味なんだ?
なんだろうか?ものすごく意味ありげな一言に、俺は疑問を抱かずにはいられなかった
本当にいいのか?そんなの、普通は聞かない…よなぁ?
明「そ、それはどういう…」
見切「……明さん、今日仕事をなくして、困っているでしょう?なので、ちょっと慰めてあげようと思って…ふふっ」
明「ちょっ!?じ、冗談はやめてくださいよ!!」
本当に、変な冗談だ…
今の見切さんの服装を見て、いきなりそんなこと言われて…
本気にしてしまうじゃないか!!危ない危ない…
これ以上、俺は自分の身に危険を呼ぶような…そんな馬鹿な真似は絶対にしたくないからな
それにしても…今日の見切さん、なんか変だよな…
いつもは俺のことなんか、興味もなさそうなのに…なんか、今日は積極的だというか…なんというか…
よ、酔っているんだろうか?
明「み、見切さん…酔っているんですか?」
見切「………やだな、酔ってなんかいませんよ…そうだ、明さん…私の話だけでも、聞いて行ってくれませんか?少しですから…」
明「わ、わかったよ…少しだけなら…」
俺は、見切さんの話を少しだけ聞いてあげることにしたんだ
話を聞くだけなら…別にいいかって思ったからね
見切「たとえ話をしますね?あるところに、貧しい家庭に育った少女と、裕福な家庭で育った少年がいました。その少女は、ある日…その裕福な青年とふとしたきっかけで出会います…」
明「きっかけ?きっかけって…」
見切「きっかけは些細なことでもいいんですよ?町ですれ違って一目ぼれでも…ね?そうだ、甘いものでもいかがです?」
見切さんはそういうと、ポケットの中から飴を一つ取り出したんだ
うーん…飴かぁ…そういえば、疲れているときには甘いものがいいとかどうとか、聞いたことがあるなぁ…
あれ…心の疲れでも効果あるんだろうか?
取り合えず、一つもらおうかな…
俺は見切さんから飴を受け取ると、早速口の中に放り込んだんだ
こ、これは…甘くてクリーミーなキャンディーだな…
なかなか、高いんじゃないか?
っと、そんなことより、話を聞かないとな…
見切「さて…少女は、それから彼のことを遠くで見守るようになりました、彼女の家と彼の家は天と地ほどの差があり、恋愛など出来るはずもありませんでした。ですが、彼女は片思いでも…ひたすらに彼を想い続けておりました」
明「へぇ……一途なんだな…そのたとえ話の少女は…でも、どうして見切さん…俺なんかにそんな話をするんですか?」
見切「黙って、最後まで聞いてくださいよ」
あっ…こ、これも俺の悪い癖なんだよ…
他人の話を聞いている途中に別の話を挟む癖…
出来る限り…直したいんだけどねぇ…
見切「しかし…ある日その少女に悲劇が訪れます。片思いしていた相手に、結婚を前提として付き合っている彼女がいたと知ってしまい、あろうことか、彼とその子が愛の営みをしているところを目撃してしまったのです。その時…彼女の心の中で何かが壊れました…そして…」
な、なんだ…?いきなり、話が重くなったんだが…!?
本当に、見切さんは俺にこんなたとえ話をして…何が言いたいんだ?
俺が、内心そう思い始めた時だった…
見切さんが俺に急接近してくると、耳元でさっきの話の続きを話し始めたんだ
見切「彼女は、彼に一服盛ったのです…自分と彼を結びつけるための愛の薬を…そう今の私のように…ふふふっ…」
明「えっ…!?ちょっ…息が耳にあたってぞくっとするんだけど!?そ、そんなことより…その言葉にはちょっと問題が…」
……あ…れ?意識ははっきりとしているのに、体がものすごく硬くなってきただって…!?なんで!?
なんだろうか?この…自分の体じゃなくなったような感じ…
ま、まさか…そ、そんなまさか…?
見切「あら…?どうしたんですか?」
明「体が…し、痺れ…どうしてこんな…?」
見切「まだ…わかりませんか?ふぅ…仕方がないですね…」
見切さんはそういうと、俺を背中に背負って部屋を出たんだよ!!
ちょ、ちょっと待て…冗談じゃないぞ!?
だが…いくら暴れようとしても体は思うように動いてくれないんだ
どうして…どうしてこうなったんだ!?
少なくともわかるのは…今日の見切さんは異常だってことだけ…
そして俺は、見切さんに運ばれていったのだった
俺が運ばれたのは、このアパートの最上階ルームだった
俺の部屋の上の部屋…家賃は俺の部屋の四倍らしいが…
今は確か、見切さんの部屋なんだっけ?それだけお金があるってことか…
俺なんて…俺なんて…いや、思い出すな俺!!悲しくなるから
見切「ふふっ…ようこそ、私たちの部屋へ…
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