「うぅ。お腹空いた」
そうつぶやきながら何かが高速で飛び去った。弱っているらしくフラフラしている。長い間何も食べてないんだろうか。
「おっ。何かいい匂いがするぞ」
未確認高速飛行物体はそう言って進路を変えた。こんな速さで周りがちゃんと見えてるんだろうか。もし前に何かあってもちゃんと避けられるかどうか不安だ。すると予想通り店の壁に正面衝突した。
「あべし!」
あーあ。だから言ったのに。北○の拳のやられ役っぽい声を上げていたけど大丈夫なんだろうか。
「なんか…目が…回る」
ぶつかった衝撃に空腹も重なったのかそのまま回転しながら地面に落ちた。
「ふう。今日の営業終了っと」
おれはデニス=チェリフ。ベントルージェ領の冒険者が集まるレストランのマスターだ。客からはほとんどマスターとしか呼ばれないけどな。
「とりあえずゴミ出しとくか」
おれが裏口の戸を開けると地面に女の子が倒れていた。
「おい、どうした!」
おれが呼びかけると女の子が口を開いた。
「…お、お腹空いた」
女の子は目を回しながらつぶやいた。
「わかった。何か作ってやるから待ってろ」
おれはとりあえず女の子を担ぎ上げてイスの上に寝かせた。
「それにしてもこの娘どんな魔物なんだ?見たことない種族だぞ」
女の子は露出が多い服を着ている。体はハエのようで、ドクロ模様の羽をしている。かわいい顔からは触覚が生えていて、頭に冠を乗せている。ロキなら一目見ただけで種族と特徴を語れるんだろうけど、おれはただの料理人だからそこまで魔物にくわしいわけじゃない。さすがに知り合いの種族くらいならわかるけどな。
「クンクン。なんかいい匂いがするぞ」
そう言って女の子がうっすらと目を開けた。
「おう。目が覚めたか」
おれの言葉に女の子は周りを見回した。
「あんた誰?ここは一体どこなんだ?」
「おれはデニス=チェリフ。ここはおれのレストランだ」
「へー。ここあんたがやってるんだ。あたしはベルゼブブのレイ。よろしくな」
ベルゼブブとか言われても正直ピンと来ない。一体どんな魔物なんだ?まあ別にいいか。
「おうよろしく。それより腹減ってるんだろ。食えよ」
おれはレイの前にクリームシチューを置いた。
「なんかすごい量だな」
「普段から冒険者とか魔物とかが来るからな。自然とボリュームも多くなるってわけさ」
「あーなるほど。だからあたしを見ても落ち着いてるんだな」
基本的に人間は魔物を見ると敵意を向けたり、恐れたりするものだからな。それもこれも教会が魔物は人を殺すとか言って人々をだましてるからだろう。まあ確かめもしないでうのみにする方も悪いし、教会もいろんな意味でだまされてるようなものだけどな。でも同情する気は全くない。妄信している以上自業自得だし、信仰心もないくせに魔物を殺す口実にしてるクズもいるからだ。
「まあとにかく冷めないうちに食えや」
「それもそうだな。あたし味にはうるさいから何言われても怒るなよ。それじゃいっただきまーす」
レイはスプーンに1さじすくって食べた。そして体を硬直させた。
「おい。どうした?」
味がうるさいとか言ってたけどどこか気に入らなかったのか?そんなことを思っていたらすごいスピードで食べ始めた。
「ホルスタウロスのミルクに腕のいい農家が育てた新鮮な野菜、それに健康的な環境で育てられた良質な鶏肉。なにより素材の個性を引き立てつつ調和させる技術。定番なだけに手間がかかってるのがわかるな」
なんかものすごく語りながらがっついている。
「マジで味にうるさいな。それに料理の知識ありすぎじゃないか?」
「ベルゼブブって基本食べ物を見ると食べ尽くす種族だからな。旅してるうちに味の良し悪しがわかったり、そういう知識が身についたりしてきたんだよな。多分あたしが特殊なんだろうけど」
旅をしてる間に舌が肥えてきたってわけか。ベントルージェにはつくづく変な魔物ばかり流れ着くもんだな。
「それであたしは決めたんだ。あたしが気に入った料理人がいたら旅を終えてそいつと暮らそうってな」
レイは意味ありげな視線をこっちに向けてきた。
「本当に俺でいいのか?もっと高級な料理を作るやつとかすごい技術のやつなんていくらでもいるだろ」
「確かにいたけどそういうやつらって高級食材使ってればいいって感じだし、技術を鼻にかけてるやつばかりだった。でもあんたは違う。あんたの料理からは食べてくれる人を喜ばせようという愛情を感じる。だからみんなから愛されるんだと思うぞ」
そこまでほめられると照れるな。会った料理人が悪すぎただけのような気もするけどよ。
「それに」
レイの姿が一瞬にして視界から消えた。
「こっちの方も良さそうだからな♪」
おれは気付いたら服を脱がされて全裸になっていた。レ
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