ジュリアが修業を始めて1週間がたった。ジュリアはかなり飲み込みが早く、修業仲間の娘たちとも打ち解けてきたみたい。まだまだ色々と未熟だけど太陽が出てても駆け出しの冒険者程度くらいの力は発揮できるようになってきた。そろそろ軽いクエストを受けてみてもいいかもね。
「明日は冒険者ギルドに行くよ。そろそろクエスト受けないと体がなまるからね」
ボクの言葉にジュリアは目を輝かせた。
「いよいよですのね。やっと鍛えた力を実戦で試せますわ」
ジュリアはかなり張り切ってる。少し熱くなりすぎじゃない?緊張してたり、怯えたりしてるよりはマシかもしれないけどさ。
「とりあえず今日は睡眠をよく取った方がいいよ。わくわくして眠れなくなる気持ちはわからなくもないけどさ」
「な、何を言ってますの?!わたくしは別に遠足の前日に目が冴えて眠れないとか、かなり早い時間に目が覚めてしまうなんてことはありませんわよ!」
ジュリアは真っ赤になって否定してきた。ボク何も言ってないんだけど。
「はいはい。とにかく準備だけはちゃんとしといてね」
「わかりましたわ。明日はがんばりますわよ!」
すさまじい情熱だね。とりあえずバトルがありそうなクエストをとってあげるか。
「ここが冒険者ギルドですのね。思ってたより大きいですわね」
ジュリアはギルドの建物を見て感動の声をあげた。
「ベントルージェ領は冒険者の町って言われてるからね。冒険者が集まるからギルドも自然と大きくなるってわけさ」
まあそのせいで変なのが入ってきたりしてるんだけどね。組んだりすることがない限りどうでもいいけどさ。
「そんなことより早く行きますわよ」
ジュリアはそう言って中に入ってしまった。
「いくらなんでも慌てすぎだろ」
ボクは溜息を吐きながらジュリアの後を追った。
「こんな所に何しにきたんだいお嬢さん。ここは君のような人が来るような所じゃない。まあどうしても冒険したいって言うんならおれがあんなことやこんなことを教えてあげてもいいけど」
かなりなれなれしいナルシストがジュリアに話しかけている。実力もたいしたことなさそうだし、多分女の子にモテたいって理由でなったって所だろう。
「お断りですわ。もう組む相手は決まってますの」
「どうせお嬢様の道楽に付き合おうっていう素人だろ。そんなやつよりおれの方がいいって」
そりゃ黒地に赤のレースがついたゴスロリなんて着てたらお嬢様の遊びにしか見えないだろうね。コティが戦闘用にあつらえたんだけど正直趣味が入りすぎだと思う。まあかわいいからいいけど。
「言いたいことはそれだけですか?」
ジュリアはノクターンパラソルを構えた。さすがにここらへんで止めといたほうがいいかな。
「ボクの大事な連れにちょっかい出さないでくれる?」
ボクはジュリアの手を握りながら割り込んだ。ジュリアは手の力を抜いた。
「なんだお前。おれを誰だと思ってるんだ?」
「誰でもいいよ。どうせここに来たばかりだろうしあまり名も知れてないだろうからね」
ボクがスルーすると相手の男は怒り出した。
「そう言うお前は誰なんだ?!」
「ロキ=ヴェーデルシュルグ」
ボクが答えると相手の男は目を見開いた。
「ロキ?!『魔物の調教師』、『魔物キラー』、『コゼットサバト幻のナンバー0』の異名で知られてて、この町に住んでる全ての魔物にフラグを立ててるってウワサのあの?!」
男はショックを受けたようだった。なんでそんな話ばかり知ってるんだろう。かなり不純な動機で冒険者になったってことが見え見えだよ。
「…どうでもいいから早くクエストを見ますわよ」
ジュリアは不機嫌そうに言った。ボクだって好きでそんな変な異名つけられたわけじゃないんだけど。
「了解。…これがいいんじゃないかな?」
ボクが選んだのは10人組の窃盗団の確保だった。どうやら貧しい者ばかり狙っているらしい。どうせなら金持ちを狙えばいいと思う。いくら警備が厳しくて侵入しにくいからって貧しい人の物に手を出すなんて最低すぎる。
「いい選択ですわね。そういう弱者をいたぶる人たちは早く捕らえてしまったらいいですもの」
どうやらジュリアのお母さんは社会的に弱い人にも優しい人みたいだね。貧乏人をバカにするような鼻持ちならないタイプの貴族じゃなくてよかったよ。
「領主様もそういう考えだから報酬もいいんだよね。それじゃ報告書くれる?」
「はい。情報はこちらです」
ボクたちはギルドを出てから情報を確認した。どうやら予想通り小物しかいないみたいだ。ジュリアの力試しにはちょうどいい相手だね。
「さすがにアジトはわかってないようですわね。どうやって調べるんですの?」
最もな疑問だね。そりゃ1人で調べるのは難しいだろう。
「大丈夫。ボクの情報網はすごいからね」
ボク
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