「薔薇の首輪重ねて♪銀の鎖くわえて♪」
仕事が終わったあたしは夜道を歩いていた。
「触れあうことの…あら?」
道ばたで何かが落ちてるのを見つけた。見てみると黒いドレスを着た銀髪の人形だった。
「誰かに捨てられたのかしら?こんな所に放置するとかずいぶん非常識ね」
その人形を見てるとなぜだかその人形が大事に思えてきた。
「か、勘違いしないでよね。持ち主に捨てられるなんて哀れだと思っただけなんだから。あんたなんか別に欲しくないんだから」
あたしは誰にともなく言い訳して家に人形を持ち帰った。
「うーん。持って帰ったはいいけどどうしようかしら?」
いくら人形遊びはしないといってもこのまましまっておくだけっていうのもなんかかわいそうだしね。
「とりあえず一枚描いてみようかしら」
あたしは画板を取り出してデッサンを始めた。
「まだ言わなーいで呪文めいたその言葉♪愛ーなんて羽のように軽い♪」
歌いながら筆を走らせる。完全記憶能力があるから見ないでも描けるけどなぜか目が離せなかった。
「よし、できた!」
あたしは描きあげた絵を人形に見せた。
「フフン、どう?かわいく描けてるでしょ?あたしの手にかかればざっとこんなものよ」
あたしが見せると人形は心なしか喜んでるように見えた。
「ふわあ。今日はもう遅いから色塗るのは明日にしましょうか。今度新しい服でも買ってあげるわね。べ、別にあんたのためじゃないわよ。あたしが描きたいだけなんだから」
そこまで言うとふと眠気が襲ってきた。
「人形にそんなこと言ってもしかたないわね。じゃ、お休みなさい」
あたしは人形をベッドの上に置いてから眠りについた。
―――
「…何なのこのアリス」
ロゼが寝静まっているのを確認して呟いた。
「何でこんなに魔力の浸透が遅いのよ。このロゼって娘本当にアリス?全然無垢でも無邪気でもないじゃない」
「フン。どうせアリスらしくないですよ―だ」
突然ベッドの中から声が聞こえてきた。ま、まさか起きて?!
「ムニャムニャ」
何だ寝言か。びっくりしちゃったじゃない。
「町で見たときには普通のアリスだと思ってたのに…。まさか猫被ってたなんて思わなかったわよ」
実は私がロゼに拾われたのは偶然じゃない。絵を売ってるのを偶然見て目をつけていたの。私の力は持ち主が無垢で無邪気で少女らしい少女なほど効果が高くなる。だからアリスはまさにうってつけだと思ったから拾ってもらえるようにあんな所に転がってたというわけだ。
「はー。ほんと貧乏くじを引いちゃったわ。何でこんな外れアリスに目をつけちゃったんだか」
私はそう呟いて描いてもらった絵を見た。
「ま、もう少しだけ人形のフリをしてあげるわよおバカさぁん」
私は眠ってるロゼの頭をそっと撫でた。
おわり
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