気がつくと私の体は地面に向かって落ちていた。私いつも通り体勢を立て直して地面に柔らかく着地した。墜落して乗り手にケガをさせるわけにはいかない。それが体が小さくて力も弱い私の矜持だ。
「相変わらず見事な着地」
同期で親友のワイバーンのメリッサが駆け寄って来た。
「…ありがとう。負けなければ着地する必要はないんだけどね」
メリッサはイヤミじゃなくて本気で誉めてくるから対応に困る。こんなキラキラした目で見られると正直複雑な気分だ。
「誰にでも得手不得手がある。私は空中格闘では強いけどユンほどうまくは飛べない」
「そうかもしれないけど軍としてはあまり使えないんじゃない?少なくとも戦闘部隊に回されることはなさそうよ」
訓練に空中格闘なんてものがあるのは飛ぶのがうまいだけじゃ戦闘部隊はつとまらないからだと思う。教団は人間しかいないから当然陸上で戦うことが多くなる。だから竜騎士だけじゃなくてワイバーンも攻撃できる方がいいんだろう。
「それにうちのヘルマの腕は同期の中じゃ平均か少し下レベルだわ。他の同期を差し置いて戦闘部隊に回す理由がない」
私の竜騎士のヘルマ=フィッケルは騎士としてはかなり平凡だ。ダーツや投げナイフはかなりすごいし、乗り手としても申し分ない。だけど肝心の武器の腕は残念ながら微妙としか言い様がない。
「…あまり気にやまないで。軍は戦闘部隊だけで成り立っているわけではないから」
メリッサは少し言いにくそうに言った。
「…そうね。偵察部隊とかからお呼びがかかるのを祈ってるわ」
この時の私はまさかあんな部隊から誘いが来るなんて夢にも思っていなかった。
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今日はいよいよ配属される部隊が決まる日だ。
「なあユン。おれたちを取ってくれる部隊ってあるのかな?」
私の相棒の竜騎士のヘルマが聞いてきた。
「大丈夫よ。あなたはともかく私はいい成績を納めてきたから」
私の言葉にヘルマは顔をしかめた。
「へえへえ。そりゃ悪うござんしたね」
ヘルマはいかにも拗ねてる感じで言った。少しは緊張がほぐれたみたい。
しばらく待ってると私たちの配属先が言い渡される時が近づいてきた。ちなみにメリッサはエース部隊への配属が決まっている。
「ユン及びヘルマ=フィッケル。貴官らを……」
読み上げる採用担当の士官の声がいったん止まった。何かあるのかしら?
「魔王軍特殊部隊第2空分隊に配属する」
読み上げられた部隊の名前に私の頭は真っ白になった。
「「は、慎んでお受けします」」
私はなんとか返事をして辞令を受け取った。そして茫然としながら席に戻った。
「…ユン」
席に戻ったヘルマが私に話かけてきた。
「特殊部隊第2空分隊って『黒烏』のことか?」
…ヘルマの言葉に思わずずっこけそうになった。
「『黒烏』は第1。第2は『爆竜』よ」
私の言葉にヘルマは真っ青になった。
「ば、『爆竜』?!なんでそんなやばい部隊に行くことになったんだよ?」
「…心当たりはなくもないわ。いつ見てたのかは知らないけど」
私の言葉にヘルマは驚いたような顔をした。
「な、何だよその理由って?」
「多分落ち方がうまかったからよ」
ヘルマはわけがわからないと言う顔をする。
「『爆竜』隊の作戦は主に急降下爆撃。落とされても冷静に対応できる私なら今更急降下しても問題ないと思ったんでしょう」
「なるほど…ってちょっと待て!」
ヘルマがすごい剣幕で詰め寄ってきた。
「何?」
「何じゃねえよ!お前はよくてもおれはよく全くよくねえんだけど」
ヘルマは半ばキレながら言ってきた。
「何?もしかして怖いの?」
「こ、怖くなんかない!」
ヘルマはムキになって顔を赤くした。なんかかわいいと思う。
「ま、あんたが怖がってても遠慮なく突っ込むから。せいぜい振り落とされないように必死でしがみつくことね」
「…けっ。言ってろ!」
ヘルマは強がりながらそう返した。これなら大丈夫そうね。
「…ユン。『爆竜』配属おめでとう」
しばらくヘルマをからかって遊んでいるとメリッサが寄ってきた。
「メリッサもエース部隊配属おめでとう。親友として鼻が高いわ」
私の言葉にメリッサは複雑そうな顔をした。
「うれしいけどユンと離れるのはさびしい。配属されるのが『黒烏』なら最高だったのに」
「…『黒烏』って隠密部隊じゃない。メリッサじゃ無理だと思うけど」
というかワイバーンっていう時点でほぼ無理のような気がする。気付かれずに空を飛べるワイバーンなんて普通いないもの。
「…いじわる」
メリッサは頬をふくらませてにらみつけてきた。
「そんなにすねないでよ
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