「銀髪にゴスロリ、黒い日傘。間違いなくターゲットだね」
私は依頼書に書いてある情報と照らし合わせながら目
前を歩いているターゲットを見た。
「覚悟しなよヴァンパイア。すぐにその高慢な面を快楽に歪めてあげるから」
私が決意を込めてヴァンパイアをにらみつけるとヴァンパイアがふとこっちを振り返った。
「?!」
私は慌てて物陰に身を隠した。まさか気付かれたか?
「気のせい……ですわね」
ヴァンパイアはそう言ってまた歩き出した。一瞬焦ったけど世間知らずのヴァンパイアが気配に気付くわけがないか。
「それでわたくしに何の用ですのストーカーさん?」
ヴァンパイアは裏通りで立ち止まって振り向きもしないで聞いてきた。
「これは驚いた。まさか気付かれるとは思ってなかったよ」
ヴァンパイアは私の声に振り返って軽く驚いたような顔をした。
「人間?それにしてはどこか同族のような感じがしますわね。かといって半ヴァンパイアとは違うみたいですし…」
ヴァンパイアはそう言って右手を向けてきた。
「とりあえず小手調べといきましょうか。…『オメガフレア』!」
ヴァンパイアが呪文を唱えると手から小さな火の球が放たれた。
「?!朝でもないのにこの程度の威力しか出せないなんて…。もしかしてあなたダンピールですの?」
…このヴァンパイアやけに勘がいいね。意外と実戦経験あるのかも。
「ご名答。私はシャンビルのダンピールギルド所属のダンピールさ。一応期待のルーキーとか呼ばれてるよ」
私の言葉にヴァンパイアは険しい顔をした。
「シャンビルのダンピール、しかも赤毛。もしかしてあなたあのヴァンパニーズとやらの娘ですの?」
私はあまりの衝撃に呆然とするしかなかった。このヴァンパイア一体どこまで知ってるんだ?
「ギルドができるということは姉妹にダンピールが多いようですが、他の姉妹はどうなんですの?やっぱり肌が紫だったりしますの?」
「…そんなことこっちが聞きたいよ。私たちダンピールは生まれてすぐ捨てられたから他の姉妹のことなんて知らないのさ」
私の言葉にヴァンパイアは呆れ果てた顔をした。
「ビッチの上に育児放棄までするとは見下げ果てた女ですわ。同じ種族だとは思いたくありませんわね。わたくしの精神衛生とお義兄様の研究から考えて」
…なんか今ものすごくいやなことを聞いたような気がする。まあ気のせいだろう。
「お喋りはここまでだ。せいぜい今まで種族にあぐらをかいて相手を見下してきたことを後悔するんだね」
私はそう言い放ってレイピアをつき出した。当然弱体化したヴァンパイアはなすすべもなく
「…フッ」
突き刺さりそうな所で紙一重で避けられた。
「なっ」
私の驚いた顔を見てヴァンパイアは鼻で笑った。
「どうしたんですの?後悔させるとか言っていたようですけど」
「くっ。なめるな!」
私が何度突いても全て最小限の動きでかわされた。
「な、何で避けられるんだ?!」
「そんな速いだけの単調な攻撃簡単に見切れますわ。そもそもわたくしはもっと速い攻撃を見慣れてますの」
ヴァンパイアは退屈したような顔をした。
「そ、それでも弱体化した体がついてくるわけがないだろう!」
「わたくし弱体化した状態で戦うのには慣れてますの。まあいつもは無意識で日中と夜とで切り替えてるので、夜の弱体化への対処に時間と魔力がかかってしまいましたけどね。適応している間に攻撃を受けていたらどうなっていたかわかりませんでしたわ。話に気を取られて唯一のチャンスを逃してしまいましたわね」
そう言ってヴァンパイアは不敵な笑みを浮かべた。
「弱体化したヴァンパイアにヴァンパイアの力を受け継いだ自分が負けるわけがないとでも思ってたんですの?ヴァンパイア程度ろくに鍛えてなくても力で押しきれるとでも?どうやら種族にあぐらをかいて相手を見下していたのはあなたのようですわね」
そう言ってにらみつけてくるヴァンパイアの目は語っていた。ーーーー狩られるのはお前の方だと。
「なめるんじゃありませんわよルーキー風情が。天敵?ハッ。その程度のハンデがあるだけでよくそこまで思い上がれますわね。別にわたくしが弱くなるからと言ってあなたが強くなるわけではないでしょうに。相性だけで勝てる気になっている未熟者なんかに遅れをとる気はなくてよ」
そう言ってヴァンパイアは拳をグッと握りしめた。
「さて、これ以上精神を安定させるのに魔力を無駄遣いするわけにもいかないので一撃でその高慢な鼻柱をへし折って差し上げますわ。せいぜい身の程をお知りなさい」
そう言ってヴァンパイアが消えた。次に気付いた時にはかなりの魔力が込められた拳が目の前に迫っていた。その時にはもう目の前のヴァンパイアが誰なのかはっきりとわかっていた。
「…『陽光の甘党姫』」
「
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