いつも通り修業に行こォとしたらヒルダ母さんがオレの方に向かってきた。
「城から使いが来てるわよハインケル。あんた何かやったんじゃないでしょうね?」
ヒルダ母さんはオレを探るよォな目で見てきた。
「別に何もしてネェよ。しいて言うなら姫様と仲良くなったくれェだな」
オレの言葉にヒルダ母さんは呆れたよォな顔をして溜息を吐いた。
「まさか姫様までたぶらかすとは思ってなかったわ。あんたいい加減にしないといつか刺されるわよ」
別にたぶらかしたつもりはネェンだが。
「ハッ。そンなの返り討ちにしてやるよ」
「そう言う問題じゃないんだけど。まあいいわ。待たせると悪いから早く行きなさい」
ヒルダ母さんに促されたオレは城からの使いの所に向かうことにした。
「で、何でお前までついて来てンだよ?」
オレはなぜか付いて来たベルに聞いた。
「だって放っておいたら城から来た女の子に何するかわからないじゃない!」
ベルはそォ言ってオレをにらみつけた。
「いや、誰も女の子なンて言ってネェだろ」
「あんたを呼びに来た時点で女の子に決まってるじゃない!」
断言しやがったよこいつ。まァ否定はできネェがよ。
「オレは別に何もする気ネェよ」
「あんたの場合何もしないでもフラグ建つでしょうが!」
ベルがすごい剣幕でどなってきた。ンなこと言われてもどォしろって言うンだよ。
「つまりお前にもフラグ建ってるって思っていいのか?」
からかってみるとベルは顔を真っ赤にした。
「か、勘違いしないでよ。べ、別にあんたのことなんて好きじゃないんだからね!」
相変わらず分かりやすいツンデレだな。
「はいはい」
オレが撫でるとベルはしまりがネェ顔をした。
「むー。あんた頭撫でたらすぐ機嫌が直るとか思ってるでしょ」
いや、ンな嬉しそォな顔で言っても説得力ネェから。
「じゃあやめるか?」
オレがニヤニヤしながら言うとベルはオレを潤ンだ目で見つめてきた。
「うぅ。意地悪」
拗ねたよォに口を尖らせるベルをなだめながら、オレたちは城の使いが待っている部屋に向かった。
部屋に入ると金髪で緑色の目のメイドがいた。
「は、初めましてハインケル様。私はイザベラ姫様直属のメイドのエレンと申します」
そォ言ってエレンはぎこちなくおじぎをした。
「ええ。よろしくお願いします」
オレが微笑むとエレンは赤くなった。後ろで何かバチバチ言ってるよォな気がするが気のせいだろォ。
「それで姫様直属のメイドさんが何の用で来たんですか?」
いつまで見つめ合ってンのよとでも言いたそォにバチバチの間隔が短くなってきたから聞いてみた。このままだと暴発するかもしれネェからよ。
「あ、はい。イザベラ姫様はハインケル様だけを城にお連れするようにおっしゃっていました。なんでも2人きりで話したいことがあるとか」
こいつわざと“だけ”とか“2人きり”とか強調してネェか?ベルのバチバチ音が大きくなるからやめて欲しいンだが。
「それでは参りましょう」
エレンはオレの手をとって外に出た。
「…」
ベルは無言で雷を飛ばしながらオレたちをにらみつけていた。こりゃ後でなだめる必要があるだろォな。
オレはエレンに手を引かれながら馬車に入った。
「…いつまで手をつないでるんですか?」
オレの言葉にエレンは顔を真っ赤にして慌てて手を離した。
「す、すみません」
「いえ、ぼくもかわいいメイドさんと手をつなげてよかったですから」
オレがそォ言うとエレンは顔を更に赤くしてぽけーと口を開けた。それからしばらくして首をブンブン振った。
「はっ。危うく騙される所でした。これが『悪逆勇者』の手口なのですね」
エレンは自分に言い聞かせるよォにつぶやいた。
「へェ。直属メイドだけあって信用されてンだな」
「はい。もちろんイザベラ姫様がかわいいだけじゃないことも知ってますよ」
エレンはそォ言って胸を張った。
「それにしてもさっきまでと口調変わりすぎですね。そんな簡単に勇者モード解いていいんですか?」
勇者モードって…。やっぱりどっか変だなこのメイド。
「お前どォ考えても隠し事できそォにネェしな。それにあいつが信用してるってだけで十分だ。オレも盟友の言葉を信用しネェほど落ちぶれてネェよ」
オレがそォ言うとエレンは黙り込ンで、しばらくしてポロポロ泣き出した。
「どォした?オレ何かまずいこと言ったか?」
まさか主に盟友とか言うの慣れ慣れしいとか思われたのか?
「ち、違うんです。今までイザベラ姫様のことそんな風に言ってくれた人いなかったからうれしかったんです」
つまり感極まって泣いちまったわけか。
「私イザベラ姫様のあんなに楽しそうな顔初めて見ました。今まで退屈そうに愚痴ばかりこぼしてましたから」
そりゃあンなクズ共がいる所
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