「くっ。こんなことをしてただではすみませんよ!」
ベントルージェ北の森に女の人の声が響いた。強気なのはいいけどもっと状況を考えた方がいいよ。
「ただですまなかったらどうなるの?顔に潮でもふきかけるかい?」
ボクの前にいるお姉さんは全裸で、エロい姿勢で拘束されている。念のため力を封印する魔術具もつけてある。そんな状態で何をできるのか教えてもらいたいね。
「しっ?!は、破廉恥なことを言わないで下さい!」
ずいぶんウブだね。ま、教団の騎士だから仕方ないかもね。
とりあえず今の状況を説明するよ。今全裸で縛り上げられてる女の人はリリー=ブリンクス。前来たナルシストと同じ教会の四天王の第3位で、四天王の紅一点なんだってさ。今回は1人だけなのは誰がついていくのかかなりもめたかららしいよ。女性騎士たちからお姉様として慕われてるって記録にはあったよ。え?なんでナルシストはボコボコにしたのにこの人は全裸にして縛り上げたのかって?女の人にそんなひどいことできるわけないじゃん。ねえ?
「こんなひどいことしておいてよくそんなことが言えますね!」
だよねー。ま、どうでもいいけどさ。
「こんな所で音を上げてもらっちゃ困るよ。まだまだ本番はこれからなんだからさ」
ボクの言葉を聞いたリリーはビクッと体を震わせた。
「ま、まさか私のことを犯すつもりなのですか?」
そんな真っ赤な顔でにらまれても全く怖くないんだけど。
「かなり魅力的な提案だけどボクってインキュバスなんだよねー。勝手に眷属増やしたらジュリアに怒られちゃうんだよ」
インキュバスが人間の女性と交わると、その女性はインキュバスに変えた魔物に変わっちゃうらしい。さすがにそんな簡単にヴァンパイアを増やしちゃまずいよね。
「だからちゃんと代わりを呼んできたよ」
ボクがそう言うと空から黒い翼の少女が降りてきた。
「ダークエンジェルのフリグエルです。あなたを堕落神の使徒にして差し上げます」
フリグエルの言葉にリリーは激しく首を振った。
「い、いやです。私は主神に忠誠を誓ったんです。汚らわしい堕落神の教えなど広めたくありません」
予想通りの反応だね。今まで何度もこんなやりとりをしてるからよくわかるよ。
「まあ主神の教え自体はそこまで間違ってないとは思うよ。魔物を殺せっていう主張とその理由以外はね」
「魔物を殺す理由のどこがおかしいと言うんですか?!」
リリーは声を荒げた。どうせならあえぎ声にしてもらいたいよ。
「だって快楽に溺れるのがいけないって言うんなら、裁かれるべきなのは誘惑を与える方じゃなくて誘惑に溺れる方じゃないの?その理論でいくと甘い物の誘惑に負けるからってケーキ屋に放火するのを認めることになるよ。それに教団は魔物がいる場所にいる人はみんな殺してるじゃん。ケーキ屋があるからってその辺りを全て破壊するってどう考えてもおかしいよ」
ボクの言葉にリリーは固まった。
「で、では魔物からは魔物しか生まれないからこのままでは人間の数が減るというのはどうなのです?!」
必死だね。よっぽど自分が主神に疑いを持ってることを認めたくないんだね。
「よく考えてみなよ。魔物には女性しかいないんだよ。自分たちも人間がいないと繁殖できないのに人間を滅ぼそうとすると思う?魔王もそこらへんはちゃんと考えてるよ。それに魔物しか生まれないのがいけないっていうんなら人間も生まれるようにすればいいだけじゃん。それとも全知全能の主神にその程度のことができないとでも言うの?」
「…つまりそうしないのには何か理由があると?」
リリーは真剣な顔でそう聞いてきた。それが気になる時点で主神を疑ってることに気付いてるのかなー。
「それは口で説明するより見た方が早いよ」
ボクが懐から筒状の物を取り出すとリリーは不思議そうな顔をした。
「何ですかそれ?」
「人の記憶を映像化する神具だよ。何個でも複製できるっていう優れ物なんだよね」
「誰の記憶なんですか?」
リリーが目を輝かせながら聞いてきた。
「…ゾフュエルの記憶だよ」
ボクの言葉にリリーは目を見開いてきた。
「ゾフュエルって『始まりの堕天使』のゾフュエルですか?!魔物の世代交代が起こってすぐに主神に危害を加えて追放されたあの?」
少し驚きすぎじゃない?ま、気持ちはわかるけどね。
「ここはゾフュエルが降り立った地なんだよ。その時にこの記録が広まったらしいよ。その記録のせいでこの辺りの教団信者は全員信仰を捨てちゃったんだってさ」
リリーはそれを聞くと愕然としたような顔をした。
「全員が主神の信仰を捨てた?一体どんな記録なのです?」
「それはこれからのお楽しみだよ。大丈夫。終わったころには主神の教えなんか捨てたくなるからね」
リリーが睨むのを横目で見ながらボクは記録を起
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