わたくしたちはサバトに行った後、知り合いの方々にあいさつにいきましたわ。ロキに武術の手ほどきを受けている皆様は連れて行くようにせがみましたが、移動手段の都合上全員連れて行くことはできないと言われると渋々あきらめることにしたようですわ。これでわたくしの天下ですわ!
「のうお兄ちゃん。フィアボルトにはどうやって行くつもりなのじゃ?」
…この忌々しいバフォメットのコゼットがいなかったらの話ですけどね。全く。ロキもロキですわ。どんな女性にも優しくするからみんな甘えてしまうんですのよ。
「ん?飛んでいくつもりだけど」
…飛んでいく?てっきりケンタウロスの類だと思ってましたわ。でも3人も乗せて飛べる魔物なんていらっしゃったかしら?
「それじゃ呼ぶよ」
ロキはそう言って懐から白い笛のような物を取り出しましたわ。そしてそれを大空に向けて思い切り吹き鳴らしましたわ。
「…今ので本当に来るんですの?」
「心配しなくても大丈夫だよ。少し時間はかかるけどね」
わたくしは半信半疑でしたけど待ってみることにしましたわ。
それからしばらくして遠くから何かの咆哮が聞こえてきましたわ。
「…来たみたいだね」
そう言ったロキの視線の先を見ると空に白い光が見えましたわ。その光はものすごい速度でこっちに向かってきましたわ。
「…さすがロキですわね」
近づいてくる魔物の正体に気がついたわたくしは驚きを通り越して呆れてしまいましたわ。どんな魔物が出てきてもおかしくないとは思ってましたが、まさかこれほどとは思いませんでしたわ。
「当然じゃ。儂のお兄ちゃんじゃからの」
そう言えばバフォメットはこう見えても最上級の魔物でしたわね。そう考えてみるとバフォメットの“お兄ちゃん”になれるほどの実力があればたいていの魔物には認められるということになりますわね。そう考えているうちに白い影がわたくしたちの前に降り立ちましたわ。
「ただいま参りました主殿。なんなりとご命令を」
そう言ってロキの下にひざまずいたのはとても美しい女性ですわ。翼、角、爪、尻尾、鱗、髪に至るまで白く光輝いていて、青い瞳はとても澄んでますの。ロキに頭を下げる姿にも気高さ、威圧感、何よりすさまじいまでの力を感じますわ。ここまで言えば何の魔物かわかりますわよね?もちろん―――ドラゴンですわ。
「よく来てくれたねキサラ」
ロキがそう言ってキサラと呼ばれたドラゴンの頭を撫でましたわ。
「当然です。主殿のためならどれほど離れていようと駆けつけますとも」
キサラは目を気持ち良さそうに細めましたわ。なんてうらやま―――子供っぽいんでしょう。それにしてもキサラって名前どこかで聞いたような気がするんですけど気のせいでしょうか?
「むう。ドラゴンだと言うことはわかっておったがまさか『青眼の白龍姫』だとは思いもしなんだぞ」
…思い出しましたわ。ベントルージェのはるか西にドラッケン山脈というドラゴンが多く生息する山脈があって、キサラというドラゴンが治めているようですわ。その澄んだ青い瞳と、光輝くような白さから『青眼の白龍姫』として魔界にも名が轟いているドラゴンの中でもトップクラスの実力者ですわ。
「あなたのようなバフォメットにまで名が知られているとは光栄ですね。まあ主殿を譲る気はみじんもございませんけど」
コゼットはキサラをにらみつけた。
「フン。お主になど譲ってもらうまでもないわ」
まさに一触即発ですわね。わたくしも、ロキは血を吸ってマーキングをした上でインキュバスにしたわたくしのものだとでも言って争いに加わりたいところですが、それだと事態がややこしくなるだけですわね。
「はいはい。ケンカはそこまでにしようね2人とも」
―――その瞬間2人の動きが完全に止まりましたわ。2人ともロキの言葉から抑え切れない怒りや苛立ちを感じ取ったんでしょう。
「むう。お兄ちゃんがそう言うなら仕方ない」
事情を知ってるコゼットはロキの気持ちを感じたのか引き下がりましたわ。
「…主殿の頼みなら聞くしかないですね」
キサラも何かを察したのか争いをやめましたわ。
「うん。いい子だ」
ロキが頭を撫でると2人ともとろけそうな顔をしましたわ。2人ともずる―――最上級の魔物とは思えませんわね。
「…そろそろ何で呼んだか話したらいかがですの?」
わたくしがそう言うとロキは苦笑しましたわ。
「そうだね。ありがとうジュリア」
そう言ってロキはわたくしの頭を撫でてくれましたわ。べ、別に気持ちいいだとか至福の瞬間だとか少しも思ってませんわよ。
「それじゃ事情を説明するよ」
ロキはそう言ってわたくしの頭から手を離してキサラに事情を説明しだしましたわ。わ、わたくしは全然残念なんて思ってませんわよ。
「…つまり主殿とこの者たちを乗せてフィ
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