「ロキさん。手紙が届いてますよ」
わたくしとロキがくつろいでおりますと宿屋の娘さんが部屋に入ってきましたわ。
「ああ、ありがとう」
「誰からですの?」
わたくしの言葉にロキは差出人を確かめましたわ。
「兄さんからだよ。何かあったのかな?」
お義兄様?確か魔物学者でしたわね。なんでもわたくしのような特殊な魔物の研究をしていらっしゃるとか。
「お兄さんがいるのってフィアボルトですよね。最近物騒なことになってるみたいですけど」
「幼女を強姦して殺害してる不貞の輩がうろついているようですわね。どうしたらそんな極悪非道なことができるのか理解に苦しみますわ」
わたくしの言葉に宿屋の娘さんがうなずきましたわ。
「本当にそうですよね。一体どこの誰がやってるんでしょう?」
「体の骨を砕いて殺してるからパワーがあることはわかるんだけどね。まあ犯人はスーザンサバトにはいないと思うけど」
わたくしも同感ですわ。え?サバトってロリコンの集まりだから一番怪しいんじゃないかって?もし本気でおっしゃってるなら救いようのないおど浅はかですわね。考えてもごらんなさいな。サバトには自分をお兄ちゃんと慕ってくれる魔女がいますのよ。そんなかわいい妹がいるのにどうしてどこの誰ともしれない小娘に性欲をぶつける必要があるんですの?
「それにスーザンはそういう指導を徹底させてるからね。今回の事件も自分のサバトへの導きが足りなかったって気に病んでるんじゃないかな」
やけにくわしいですわね。よく考えてみると普通サバトの教祖のバフォメットの名前まで知ってるはずありませんわね。
「あいかわらず顔が広いんですのね」
「知り合いが多すぎるのも困り者だけどね。犯人に狙われる心当たりが多すぎて困るよ」
むー。ロキの口から女の子のことが出てくるとやっぱりイラついてしまいますわね。ロキが優しくて周りの人のことを大切に思ってるのはわかってますけどやっぱりわたくしだけを見て―――。はっ、わ、わたくしは何を。うぅ。なんだか恥ずかしくなってきましたわ。
「と、とにかく読んでみたらいかがですの?このままじゃ話が進みませんわよ」
わたくしが焦ったように言うとロキは優しく微笑んだ。やっぱり鋭すぎますわね。
「それもそうだね」
そう言ってロキは封筒を開けましたわ。そして手紙を開いた瞬間部屋の空気が変わりましたわ。これってもしかして
「…ねえジュリア。兄さんにあいさつに行きたいと思わない?」
…やっぱりキレてますわね。もしかしてそういうことですの?
「も、もしかして誰か知り合いが殺されたとか?」
…宿屋の娘さん。そこまでストレートに言ってどうするんですの。
「…いや、運よく助かったみたいだよ。ロリペド殺人鬼のくせにちょっとした魔物の知識だけはあったみたいだね」
ロキは黒い笑みを浮かべて言いましたわ。
「その娘が助かったのと魔物の知識にどんな関係があるんですか?」
「襲われたのがアリスだからだよ。強姦されたことを忘れるんじゃないかとありもしない脳みそで考えたんじゃないの?」
いつもより毒舌が冴え渡ってますわね。相当イラついてるようですわ。
「まあ殺さなかったからって許す気は全くないけどね。手を出した時点でボクの敵だよ」
どうやら犯人は完全にロキを敵に回してしまったようですわね。ご愁傷様としか言いようがありませんわ。ロキは敵と認めた相手は容赦なく叩き潰しますもの。まあそんなことは数えるほどしかありませんわ。依頼の時は速攻で終わらますし、ダンジョンなどでも降りかかる火の粉を振り払うことしかしませんもの。ロキが激怒するのは大切な人が理不尽な理由で傷つけられた時だけですわよ。相手も大切な人を思っている時は思いを受け止めた上で強引に認めさせますわ。わたくしのためにサラと戦ったのがこの場合ですわね。仲間の冒険者が魔物の虜になった時も自分の責任だし、幸せならそれでいいって放置してますわ。むしろ夫を求める魔物の所に条件に合う冒険者を騙して送り込んでるから『ダンジョンの月下氷人』とかいう異名がついてるくらいですわ。ロキが怒るのは極めて稀ですの。
「ろ、ロキさんかなり怒ってません?」
宿屋の娘さんが声を潜めて話しかけてきましたわ。
「こんなことで驚いてたら体が持ちませんわよ。敵が目の前にいる時は殺気を向けられてないこっちにまですさまじいプレッシャーがかかりますもの」
宿屋の娘さんは信じられないという顔をしましたわ。ムリもありませんわね。わたくしも初めて見るまで信じられませんでしたもの。いつも軽くて余裕なロキがあそこまでキレるとは思いませんでしたわ。
「あはは…。でもなんだかロキさんらしい気がします」
「…そうですわね。大事にしてるからこそあそこまで怒れるんですものね」
その大切な人のほとんどが女
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