生存者

「隊長!たたた大変です!」
 書類に目を通していると部下の衛兵が慌てて部屋に入ってきた。全力で走ってきたのか息が上がっている。
「落ち着け。何があった?」
 おれの言葉に部下は深呼吸をしておれを見た。
「ヤツが出ました」
 その言葉を聞いた瞬間おれは書類を速攻で処理して立ち上がった。
「…案内しろ」
「は、はい」
 おれは出て行った部下の後を追って現場へと向かった。

 現場には野次馬が大勢集まっていた。
「あ、隊長」
 副長のチャーリーがおれに気付いて話しかけてきた。
「状況はどうなってる?」
「今から調べる所なのでなんとも言えないです。今度こそ手がかり見つかればいいんですけどね」
 チャーリーは諦めたように言った。ムリもないかもしれない。これまでの5件の事件で犯人を特定できるような証拠は出てこなかったからな。そういう所この犯人は徹底している。
「今まで何もわからなかったからといって今回もそうとは限らない。気を抜かないでしっかり調べろ」
「「「はい!」」」
 チャーリーたち隊員がいい返事を返してきた。待っていろ犯人。なんでもいいから証拠を見つけ出してお前を牢に叩きこんでやる。

 おれはまず被害者を見てみた。被害者はいつも通り幼女だった。幼女連続強姦殺人事件なんだから当然か。
「本当に許せないですよね。ロリは傷つけるものじゃなくて愛でるものなのにこんなことをするなんて」
 …そういえばチャーリーはサバトの信者だった。まあ何を信じていようと人の勝手だからとやかく言う気はない。
「その発想はどうかと思わないこともないが、許せないというのは同感だ。こんな幼い少女の純潔を力づくで奪い、命まで奪うなんてあまりにも外道すぎるだろう」
 おれの言葉にチャーリーはうなずいた。
「ええ。スーザンサバトの名にかけて絶対に犯人を捕まえます!」
 …できれば衛兵隊の名をかけて欲しいんだが。熱意があるのはいいとは思うがな。

「それにしてもまるで眠っているみたいだな」
 おれは被害者の少女をよく見た。ストレートの金髪にかわいい顔で、フリフリの赤と黒のワンピースを着ている。体に生えた角と羽としっぽが彼女が魔物だということを示している。
「どうしたんですか隊長…!もしかしてついにロリコンに目覚めてくれたんですか?!」
 興奮したようなチャーリーの言葉に我にかえった。
「いや、そういうわけじゃないんだが…」
 気がついたら見とれてしまっていた。なぜか引き込まれるような気がしたのはなぜなんだ?気を取り直して少女をよく調べてみた。服は破られていて精液まみれで、あそこからは血と精液が出ているけど目だった外傷はない―――
「…外傷がないだと?」
 おかしい。これまでの被害者は全員鈍器で頭や体とかを殴られていた。おれは少女の手首をつかんでみた。  
「っ!誰かこの子を医者に運べ!」
 おれが叫ぶと部下たちは固まった。
「ま、まさかこの子生きてるんですか?」
「ああ。確かに脈がある。そんなことより早くしろ!」
「「は、はい!」」
 部下たちは念のため持ってきていた担架を取りに行った。
「それにしても何で犯人はあの子を殺さなかったんでしょう?」
 チャーリーはわけがわからないという顔をする。
「…今まで被害者を殺してきたのは多分口封じのためだろう。どんなに証拠を消しても被害者の口からバレたら本末転倒だからな」
「つまり犯人はこの子を殺さなくても大丈夫だって判断したってことですか?一体なんでそう判断したんでしょうか?」
 おれもそれは気になる。どんな根拠があって口封じが必要ないなんて考えたんだ?誰か知ってるやつでもいれば話が楽なんだが…。

「「ロゼ姉?!」」
 少女を担架に載せて運んでいる途中で野次馬の中から2つの小さな影が飛び出してきた。
「ロゼ姉大丈夫なの?!」
「ちゃんと生きてるよね?!」
 出てきた2人の少女はほとんど瓜二つだった。闇のような黒髪に金と銀のオッドアイ。見分けるポイントは目だけだ。右側の少女は右目が金で左目が銀、左側の少女は右目が銀で左目が金だ。下半身がヘビってことはラミアの一種なんだろう。
「あ、えーとその」
 部下はあまりの剣幕に何も言えないでいる。こいつもこの子たちから放たれる異様な力を感じてるのか?

「心配しなくても大丈夫だぞソル、ルナ。ロゼは気絶してるだけだ」
 そんなことを考えていると男が2人の少女の頭に手を乗せた。そこにいたのは黒い髪に鋭い銀色の目で整った顔をした男だった。左手の薬指には赤い目をしたヘビが象られた指輪をしている。
「「それってホントなのパパ?」」
 どうやら男はこの子たちの父親のようだ。言われてみるとどことなく感じが似ているような気がする。
「ああ間違いない。ちゃんと正常に魔力が漏れ出してるからな」
 それは正常って
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