どうやらもう幻術は通用しないみたいだね。できれば攻撃が効かない相手には勝てないってことで降参させたかったんだけどな。あまり期待してなかったけどさ。
「どうだ。これでお前の勝ち目はなくなったぞ。人間が半ヴァンパイアに力と魔力で勝てるものか!」
ブラドは嘲笑を浮かべながら言った。
「だろうね。いくら半分だけとは言ってもヴァンパイアに力と魔力で勝てるとは思ってないさ」
ブラドの言葉に答えている隙にサラさんが炎を連射してきた。質より量で攻めてきたってことかな。
「でもそれがどうかしたの?」
「なっ?!」
ボクが炎弾を全てヘルに吸収させるとサラさんは驚きで目を見開いた。ボクはその隙にナイフを数本投げた。
「くっ」
サラさんは何とか避ける。ナイフは地面や岩場に突き刺さった。
「ボクは冒険者だよ?自分より力が強かったり魔力が強い相手となんていくらでも戦ったことがあるさ」
サラさんは爆裂呪文を放って来た。ボクは避けて爆風を利用してサラさんに接近した。
「それでもボクは勝ってきた。待ってくれる人の所に帰るため、守りたい人をちゃんと守るためにそんなことじゃ負けられなかったからね」
ボクはサラさんの左足を浅く切りつける。さらに手足に浅い斬撃を繰り返した。
「くうっ」
『いい味だしてるわね。まだまだ吸い足りないわ』
サラさんは後ろに跳躍した。出血、ヘルによる力の吸収、しかもボクの血をなめて発情してるから動きが鈍ってるね。
「距離をとってもムダだよ」
すかさず左手でナイフを数本放つ。また避けられて地面に突き刺さる。反射神経がかなりいいみたいだね。
「わざと外してるくせによく言いますわね」
さすがにジュリアは気付いたみたいだね。でもそれを口に出さないでもらえると助かるんだけど。
「わざと?私をなめてるんですか?」
やっぱり聞こえちゃったみたいだね。なんかものすごくにらんで来てるね。
「別になめてるわけじゃないさ。変なところに当たって間違って殺しちゃったら困るじゃん」
ボクの言葉にサラさんは目つきをもっと鋭くした。
「私なんかいつでも殺せると言いたいんですか?」
「殺さないで負けを認めさせるよりはずっと楽だよ。それより本当に降参する気ない?」
「ありません」
サラの言葉にジュリアが溜息を吐いた。
「そのへんにしておいた方がいいですわよ。どんな目にあうかわかったものじゃありませんわ」
なにげにひどいね。でもこれ以上続けるようならあまりやりたくないけど実力行使するしかなくなるんだけど。
「いくらジュリアお嬢様のお言葉でも後には引けません。はあああ!」
サラさんは声を上げて向かってきた。やっぱりかなり動きが鈍ってるみたいだね。
「はあ。あまり気が乗らないんだけど仕方ない」
ボクはサラさんの攻撃を避けたり、ヘルの平らな面で受け止めたりしてさばきながらナイフを投げた。もちろん紙一重で外れるようにだ。
「外すのならなんでわざわざ投げるんですか?」
「さあね」
サラさんが繰り出す攻撃を辺りを回りながら回避する。そして何発かかわした時サラさんの体がピタリと止まった。もがこうとしても体が動かないみたいだね。
「確か体が動かなくなったら負けでしたよね」
呆然としていたエルザさんが我に返った。
「勝者ロキ!」
はあ。何とか勝てたよ。でも喜んでばかりもいられない。まだ後始末が残っている。
「くっ。な、なんで体が動かないんですか。やっぱり傷と疲労と発情してるせいなんでしょうか」
動けなくなってるサラさんに説明しないといけないみたいだ。
「それもあるけど主な原因はこれだよ」
ボクはナイフを抜いてサラさんが見えるようにして、穴の後ろを魔法で照らしてみた。
「これは糸ですか?」
「その通り。辺りが暗い上に細いからなかなか気付かないんだよね」
ボクにだって見えてたわけじゃない。差した位置と自分の位置関係を計算してサラさんに絡まるように動いてたってわけだ。
「卑怯だぞ。そんな手が認められるか」
「何でもありっていうルールだからいいんだよ」
ブラドはまだ何か言いたそうに口を開こうとした。
「どんな手を使おうともロキ殿は半ヴァンパイアに勝ったのだ。そのことは素直に認めんか」
エルザさんの言葉にブラドは黙り込んだ。母は強しってことなのかな。
「ありがとうございます。あーそれと少し言いにくいんですけど」
「なんじゃ?」
エルザさんが不思議そうな顔をする。
「糸ほどくの手伝ってくれませんか?ボクだけじゃ大変なので」
動けないサラさん以外いっせいにずっこけた。
「なんでそんなめんどくさい罠にしたんですの?!」
「もうちょっと少なくてすむと思ってたからね。少しサラさんの力を少なく見積もってたかも」
こうなるってわかってたから早く降参して欲し
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