夜分のお話。それと翌朝。

「まっっっったっく!!何やってんだか!!!」
家路の車内、後部座席で腕を組んで座る、レゼ姉が不満を爆発させていた。
「教えてやろうか?ラブホで激しく『セックス』してたんだ………私の足腰が立たなくなるまでな
#9829;」
隣の助手席には、お疲れのラリスが大きくシートを倒して横になっていた。
「っ!どうせラリスちゃんが調子に乗りすぎただけでしょ!?」
不機嫌な声を隠さずに荒げ、冷静を装って組んでいた腕を早くも解くレゼ姉。
「だと思うだろ?それがコウに獣の如く襲われてな………私も正直、驚いてる」
やれやれといった感じで、オーバーに両手を広げてみせるラリス。
「……もうその話はそれくらいに「コウ君は黙って運転!」「お前は前を向いてろ!」
(……これだよ。ちくしょう)
コウは内心で愚痴って、前を向き、黙って運転を続ける。熱くなる二人をなだめようと間に入ろうとしたが、即轟沈してしまい、己の軽率さを後悔するしかない。
 あの後、コウは目を覚ますと、自身の介抱をしながらもバチバチと火花を散らしていたレゼ姉とラリスをどうにか宥め、突如としてラブホテルに乱入してきたレゼ姉に事の経緯を聞きだした。
話を聞いたところ、どうやらラリスがラブホテルの住所をコウに教える際、間違えて家族全員にメッセージを送ったのが事の発端になったらしい。職場でそのメッセージに気づいたレゼ姉は退社後、慌ててラブホテルまでやってきたとのことだが、コウには血相を変えてヒールのままで駆け抜けるレゼ姉の姿を容易に想像できてしまった。その後、ラブホテルに到着したレゼ姉は店員を必死の形相で説得し、合鍵を貰ってまで弟妹が休憩している部屋に突入してきたらしい。なんとも恐るべき行動力だが、おかげで不審に思う店員にレゼ姉の素性を明かすため、名前はおろか、住所と連絡先まで教える羽目となり、しっかりと顔まで覚えられてしまった。当分どころか、コウは二度とあのラブホテルには行きたくない。
「……それで?さっきの話は本当なの?」
レゼ姉が席からズイッと身を乗り出し、眉をひそめてラリスに詰め寄る。
「なんの事だ?……よくわからんなぁ〜?あ〜〜ん?」
「っコウ君が!ラリスちゃんを!襲ったって話よっ!」
怒声は車外を突き抜く勢いだった。自分で言い切ったことで余計に腹が立ったようで、レゼ姉は強く拳を握り締め、尻尾でシートにムチを打ち、盛大な八つ当たりの音を車内に響かせる。
「耳元で怒鳴るな……まぁ実際に、コウに滅茶苦茶にされて、ドバドバ種付けされたのは嘘じゃないぞ?………もしかしたらデキたかも、な
#9829;
#9829;
#9829;」
そう言って愛おしそうに自身のお腹を摩りはじめるラリス。お腹に向ける視線は、完璧に我が子に対する母親のそれだった。これに黙っていられないレゼ姉が急遽怒りの矛先をコウに向け、信じられないといった様子で真偽を確かめようとする。
「ちょっと、コウ君どういうこと!?」
半分泣きの入っている声でレゼ姉が絶叫した。目尻には薄い涙が浮かんでおり、絶望の面持ちを向ける。少々いき過ぎなレゼ姉に、コウは頭を痛くさせるしかない。
「レゼ姉……ちょっと落ち着こう?ラリスもあんまり挑発しないの」
「落ち着いてるわよ!それより、なんで!?何があったの?」
「いや、何も無い……ってことはないけど、ラリスと普通に……Hしただけだって」
まさか、自販機で当たったドリンクのおかげで野獣の如くラリスを襲えたとは見栄も重なって言えるはずもなく、仮に白状したとしても、今度はドリンクの存在を知って逆上するラリスに噛み付かれるのは目に見えており、これ以上車内の混沌を加速させたくないコウはお茶を濁すしかなかった。
「嘘よぉっ!だって、いつもはラリスちゃんに搾られてるだけじゃない!?」
「……その言い方には語弊があるな。『愛し合ってる』と言うべきだ。一方的になることも多いが」
「今はどうだっていいわよ!そんなことっ!!」
もう何も信じられない、と顔を両手で覆ってレゼ姉がえ〜んえ〜んと泣きはじめる。ラリスは勝ち誇るように特大の胸を張り、しまいにはコウに生まれてくる赤ん坊の名前を尋ねだす始末だった。自身のあんまりな扱いに勘弁してくれよと思ったコウは、ただただ黙って運転するほかない。
 家に到着するまでの間、なおも姉妹のグダグダとしたやり取りが直近で行われ、途中から全てがどうでもよくなったコウは一切の思考を止めていた。姉妹のバトルは車を車庫に入れてもなおも続き、車から降りて玄関に向かう僅かな道中でも継続していた。
「ただいま〜……」
心身ともに、心底疲れたコウが玄関を開ける。
「コウ君!約束通り今夜はとことん相手してもらうからね!?」
「そんなことより、私の借りを返すのが先だろうが!!」
後方からは姉妹がギャーギャーと入り乱れて押
[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4 5 6..24]
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33