ある晴れた日の朝、この俺、偉大なる考古学者ハワード教授様は自宅のベッドの上で目を覚ました。
今日は講義も非番だし、ゴーロゴロと昼過ぎまで寝てようか…と思った所で
「こら貴様!いい若い者がこんな天気のいい日に、二度寝などとは何事だっ!」
いきなり軍隊もかくやという剣幕で怒鳴られ、タオルを剥ぎ取って叩き起こされた。
「ふあああ、勘弁してよインプゥ。今日はせっかくの休みなんだしさぁ。」
あくびをしながら見上げた先には、艶やかな黒髪に褐色の肌、そして犬の耳と尻尾の
女の子が、腰に手を当てて仁王立ちしていた。
彼女の名前はインプゥ。当然普通の娘じゃあない、元々はつい半月前に俺が調査に行った
ピラミッドで守護獣をやっていた「アヌビス」という魔物の一種だ。
で、なんでその守護獣様が俺の自宅に居るかというと、まあ、結論から言えば俺のせい、だ。
調査に来た俺は、運悪くインプゥの使役するマミー達に見つかって、トラップをかわしながら
ほうぼうの体で逃げ回ってたんだが、運よくというか悪かったというか、はずみで隠し通路を
見つけてピラミッドの最奥部に来ちまった。
で、そこになだれ込んできたマミー達の攻撃をかわし続けてるうちに変なスイッチを
押しちゃったらしくて、ピラミッドは太古の英知を道連れに大崩壊、一瞬にして
宿なしになった彼女は俺の家に転がり込んだ、と言う訳だ。
ちなみにこの時調査に来たのはもう一人いるんだが、そいつについてはまた今度、な。
「馬鹿者!休日の時こそ規則正しい生活を心がけるモノだろうが!!
……まあ良い。コーヒーを淹れてやった、それでも飲んでさっさと起きろ。」
そう言うと彼女は顔を背け、でかめの手袋みたいな手で器用にマグカップを掴むと
「ずい!」と押し付けるように差しだした
おやおや、我が家に来て以来、我が物顔で俺の生活管理を行う割に一切家事をしなかった
こいつも、ようやくに居候の分というものをわきまえ始めたという事か。実に殊勝殊勝。
そう言いながら、俺はマグカップの取っ手に指を通し、ひと嗅ぎ香りを確かめて
コーヒーに口を着けた。
「ふむふむ、香りはまだまだだな、ところで味の方はと……ブボォォォォォ!ゲホゲホ……」
「む、気管にでも入ったか?あまりがっついて飲むからだぞ。この粗忽者め。」
「……粗忽者はオ・ノ・レ・じゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
コーヒー豆そのまま入れる奴がどこにいるんだよ!」
ようやく落ち着いた苦しい息の下から、必死に抗議する俺。
よく見りゃマグカップの中には、ただの白湯がコーヒー色に見える程の大量のコーヒー豆が
ひしめき合っていた。
◇
「……なあ、まだ怒っているのか?」
申し訳なさそうに問いかけるインプゥに対し、俺は無言で背中を向けて不貞寝していた。
怒っているか否かと言えば、そりゃまあすっげ―怒ってます。
インプゥがコーヒー茶漬けにしてくれたのは、知り合いのツテを使って苦労して手に入れた
とっておきの豆だったのだ。
だが、今の俺が考えているのはもっと別の事だった。
「それはまあ、大事な豆を台無しにしてしまった事は悪いと思っているぞ?
でも、しょうが無いではないか。わたしの時代にはコーヒーなど無かったし…」
最初に叩き起こした時の高圧さが嘘のように、インプゥの声のトーンは徐々に下がっていく。
耳までつられて伏せ気味になっていく辺り、なんとも反応が判りやすい。
しばらく一緒に暮らして見て判った事なのだが、こいつはなまじまじめで責任感が強い分、
自分に非や過失があると極端に弱気になるらしい。
そんな時のこいつをいじって遊ぶのが、最近の俺の密かな楽しみになっていた。
いつもの溜飲も下がるし、それにこの時のこいつは、なんというか…妙に…
「…ちゃんと反省してるか?」
「…それは当然だ。失敗は失敗として受け止め、学習し記憶に留めるべきだからな。」
許してやりそうな素振りを少し見せると、ちょっとだけいつもの堅苦しい自信が戻ってくる。
それでもなお目を逸らす辺り、やはり叱られた悪ガキの様なバツの悪さは隠しきれなかった。
そろそろ頃合いだな、今日はこの辺で仕掛けるか。俺は内心ほくそ笑むと、
おもむろに上体を起して
「よし!それじゃあ、今日はコーヒーの淹れ方を教えてやるよ、
そうすりゃ二度と失敗もしない。完璧だろ?」
などと、心にもない事を言ってみた。
「おお!許してくれるのか?…わかった、今日は全身全霊で、貴様からコーヒーの淹れ方を
教授して貰うとしよう!」
一瞬バカみたいにぱっと明るい表情になったと思ったら、今度こそ完全に復活したようだ。
休日の使い方としても、まっこと有意義であるしな!などと張り切りまくるインプゥ。
だが俺の真意は、当然この粗忽娘にコービを挿れ…もとい、
コーヒーを淹れさ
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