ルビアに散々殴られた上、帰りに大量の買い物をしてその荷物持ち。尊敬しろと言うつもりは毛頭ないが世帯主であるのだから、少しは労わって欲しいと思う今日この頃である。小一時間程度の外出であったが、疲労感としては数日分だ。ルビアには睨まれたが早く我が家に帰りたい。
流石に俺の両手が塞がっているので、ルビアに開けてくれるように頼む。最近分かった事がいくつかある。一つはルビアの要求水準は高いが、決して不可能な水準では無い事。全力を尽くせばなんとか実現可能なレベルだ。もう一つは正当な理由さえあれば、手を貸すこと自体には労を惜しまないという点だ。今だって、両手が塞がっていたので頼んだのだが舌打ちこそされたが別に文句は言われなかった。
「・・・」
「やめて、そこは弱いのぉ!!! そんな、胸とか触んないで! っはぁ、感じちゃうからぁ! 変なのに目覚めちゃうからぁ!!! んくぅ・・・ やだぁ! 助けて圭太ぁ!!!」
「うふふ、良い声で鳴くのね・・・ トトちゃん可愛いわよ。 でも、安心して。 優しく内側から溶かすように食べてあげるから、ね?」
「やだぁ! 糸に縛られて・・・ こんな、お股に擦れて・・・」
「え、こうかしら?」
「ひゃぁぁぁああああ!!!! ダメェ!!!!! イク、イッちゃうからぁ!!!」
開きかけた扉を叩きつけるように閉めた。元から歪んでいた扉が更に変形した気がする。あまりに勢いが良かったので扉の枠と扉が圧着されたのではないかと思うほどだ。しかし、ルビアの行動を責める気にはなれなかった。扉を乱暴に閉めるのは褒められたことではないが、今回だけはグッジョブと褒め称えよう。
「い、いまのは?」
「知らん」
っていうかトト襲われていなかったか?
「記憶にございません」
「・・・おい、見捨てる気かよ・・・」
「正義というのには古来より様々な視点があってだな、その中でも比較的最近提唱された概念として“功利主義”という考え方がある。この功利主義という考え方というのは至ってシンプルでね、苦痛に対する快楽の割合が最大になる手段こそ正義だという事だ。さて、現実問題に目を向けてみよう。オレ達は今部屋の外にいて中にはトトと発情蜘蛛がいる。オレ達が部屋に侵入した場合、被害者は3人に増える可能性がある。被害の度合いは分からないが、分かりやすくするために、とりあえず一人頭の受ける被害を−1、利益を+1と考えよう。そうすると三人が被害を受けるから−3だな。中の蜘蛛女は快楽を得るだろうから+1だ。合計で効用は-2だ。それに対して、オレたちが入らずにトトだけに被害が及んだ場合には、被害者はトトだけだから−1、利益を受けるのは蜘蛛女だけだから+1となる。合計で効用はプラスマイナス0になる。さて、最後にトトの救出に成功した場合の効用を考えよう。オレたちは被害を受けなかったので効用は0、トトは救出されたために受ける利益は+1。あの淫乱蜘蛛は獲物を奪われて−1だ。効用は同じく0。しかし、最初の救出に失敗した時のリスクを加味すれば、功利主義の観点から突入か待機かのどちらが正しい選択かは比べるべくもないだろう」
「うるせぇ、落ち着け!!!」
思わずルビアの頭を引っ叩いた。
自称悪魔が正義についての講釈を垂れたり、元女神がパニック状態になったり、ルビアを引っ叩いたのに珍しく反撃が無かったりと突っ込みたい所は数多あったが、いちいち突っ込んでいる余裕はなかった。それよりも芦高がトトと俺の部屋でギシアン状態になっている意味が分からない。トトはデビルバグ状態に戻っているし、芦高の下半身は蜘蛛のようになっていたのも意味不明だ。
「分かっている、オレだって。功利主義では道徳や信頼などの関係が一切排除されるため、人情に欠ける判断をする場合もあるということぐらいな。一昔前の具体的な例を挙げるとすれば、大衆の娯楽のためにキリスト信者をトラの前に放ったのが良い例だ。確かに当時としては興奮する、すなわち大衆にとっては益になる娯楽ではあっただろうが、人間の命という代償を払っている以上は道徳的に許される行為ではないと考えるのは、現代における大多数の人間がもつ感情だろう、そのためにカントの正義という概念には道徳的観念というものが・・・痛いなぁ!!! てめぇ、何様のつもりだ!? お前は人の頭をぼこぼこ殴ってんじゃねぇぞ、コラ!」
「そういう事じゃねぇ! 俺が訊きたいのは、なんで隣に越してきた人間が下半身が人じゃない姿で、俺の部屋とトトとギシアン状態になってるかって事だ!」
「うっせぇ、カス! オレが知ると思っているのか、ボケなすび! ちったぁ、ねぇ頭を使って考えてみろってんだ! いちいち教えて教えて言って甘えてんじゃねぇぞ、このゆとりの糞餓鬼ぃ!!!」
「はぁ!? なに八つ当たりしてん
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